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「リュウ先生、お疲れさまでした。教会というと、聖女様になにかあったのですか?」
「そうみたいだな。間もなく到着するって言ってたから、今頃は教会にいるかも。」
― ということは、以前ケヴィン様が仰っていた、ドラマチックな演出が行われていた最中だったのかしら。
その間も怖い目にあってるでしょうに・・・さっさと連れてくればいいものを・・・。
と思ったが、どんなドラマチックな展開になったのかも気になる。
「それで指導を再開されたんですね。」
「それもあるけど、こっちにも先約があるからね。ジジィ神官が動いているし、命を落とすような危険がないなら、特別扱いするわけにはいかないだろ?」
「あっ、そうですよね。どちらも三室のお客様ですもんね。」
リュウ先生の言葉に、ほっとした私である。
オリビアさんの時は・・・って、いつまで引っ張んてんだよ、私ったら!!
いくら知的な雰囲気が似ているからって、エメラルドの聖女様はオリビアさんみたいな女性じゃないんだから!
「そういうこと。ただ、呼ばれたからには行くしかないな。」
「そうですね。あの・・・私も一緒に行っていいんでしょうか?」
「は?ミサの担当だろう?担当が行かなくてどうするんだよ。」
「今後はリュウ先生が担当になるのかなって思ってたから。薬の指導もあるし。」
「俺は薬を作る指導だけ。それ以外はミサが担当なんだから。ほら、行くぞ。」
― そっか・・・担当はまだ私なんだ。
薬の指導を受けているうちに、担当が変わることになりそうな予感もするけど・・・。
そして、私たちは教会へ向かった。
少し緊張しながら、教会の扉を開ける。
すると、三室に報告に来た天界の人が中にいらっしゃった。
― この方・・・聖女様の身辺警護をしていた方だ。
「お邪魔します。聖女様は到着されていますか?」
リュウ先生が、その天界の方に問うた。
「はい、先ほど。今はお眠りいただいております。ケヴィン様が付き添っておられます。」
「そうですか、何があったのかお聞きしても?」
天界の方は首を縦に振ると、今回のいきさつを話し始めた。
「今回の地方の巡礼は、比較的近いところで、例の公爵令嬢もご一緒でした。そこで事件が起こりまして、危険と判断し、私がここに連れてまいりました。」
― ん?地方の慰問に、他の令嬢様も一緒だったの?なんで?
「公爵令嬢というと、第一王子様の元婚約者で、癒しの力の強い方ですか?」
「ええ、その通りでございます。」
「なるほど・・・。公爵令嬢とやらの力を見せつけ、聖女様を無能、いえ、偽物扱いし、求心力を低下させることが目的ですか。」
「リュウ先生のおっしゃる通りです。帰り際、民衆の一人が聖女様に石を投げつけまして。それが呼び水となった、とでも言いましょうか。」
― はぁ?なにそれ!
力の差を見せつけることによって、民衆から断罪の声を上げさせようとしたの?
自分たちの手は汚さずに・・・貴族のオエライさんって、そんな姑息な手を使うの!?
はっ・・・まさか、最初に石を投げたヤツって、サクラだったんじゃ・・・。
「それは、聖女様もさぞかし憔悴されていることでしょうね。」
「ええ。残念ながら、ケヴィン様の考えていらっしゃった舞台とはなりませんでした。」
― 女神様に顕現していただくって、アレか。
「しかし、今頃大変なことが起こっているでしょうね。詳しくはケヴィン様からお聞きください。ただいま呼んでまいります。」
そう言うと、天界の方は礼拝堂から出ていかれた。
「・・・あのジジィ神官、なにしやがった。」
「リュウ先生、言い方。・・・でも、あの天界の方の話しぶりからして、相当・・・。」
― ご自分の脚本を台無しにされたケヴィン様、天災レベルのザマァしちゃったんじゃ・・・。




