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覚悟の形

少し、シリアスです。

城壁都市国家『スキエンティア』。

かの言葉で『知識』ですか?

知識を与え人々を育てると宣言した貴女の国の名としては似合いなのではないですか?

まあ、国というには民はまだまだですが。

「お話はまとまりましたか?シオン。」

「まとめる様な話はしてませんが?」

あら?そうでしたっけ?

まあ、何にせよ。

「この先は貴女が″先を見て立つ″女神です。」

後はよろしくお願いしますね?

最後まで言うとお互い崩れそうなので、そろそろおいとましましょう。


だから、シオン。

最後まで睨まないで下さいよ。


***


目の前でスーッと消える『金色の女神』を見送る『スキエンティア』の女神と住民達。

「・・・。」

しばらく『金色の女神』の消えた場所を見つめていたが、フッと視線を感じて振り向くシオン。


ああ、そうだった。


ここからは私が女神だった、と向き直り軽く腕を開く。

すると瞬く間に光の粒子が舞い、それが止むと現れたのは黒髪の少女であった。

同然″住民達″は驚きに目を見開く。

だが、そんな事はお構いなしと口を開くシオン。

「私は″普段は人として側で寄り添う″から、その様に扱ってくれ。まあ、ここは国のつもりだが町か何か・・・ああ、村長とでも呼んでくれて構わない。ちなみに私の名はシオンだ。」

いきなり人として振る舞うからよろしく、と告げて歩き出すシオンに同然の事ながら困惑の色の濃い住民達。

だが、そんなシオンの後にハシュドがついて歩き出す。

それを見た他の者もまだ体には怠さがあるものの歩き出す。


シオンの『具現術式』は傷付き衰弱した者達を回復させられる。


ここでその現実を認識した彼らはお構いに見合わせて後を追いドームに続くはしを渡るのだった。




「え、・・・うわぁ、大きい・・・‼」

ドームに入るなりまずくすんだ金髪の少年が声を上げる。

遅れて次々と上がる驚きの声。

シオンにも覚えのある感覚だったので思わず頬を緩める。

その間もドームの脇にある家屋の調理場で用意しておいた食材を料理していく。

もともとホールのこの家屋は軽食店か何かだった様な造りだった為、島の探索の際も上の住居まで戻らずここで済ませられるだろうと手を加えていたのだ。

食材はそのついでで、思い出した様に昨晩備え付けの保存庫型『アーティファクト』に放り込んでおいたのだ。



「よし、皆。まず食事だ。」

ドームに見入っていた住民達は声に反応して一斉に振り向く。

「食べながらでいいから聞いてくれ。」

彼らの意見を聞いていないが、現実から見てシオンが養い続ける事はやって出来ない事はないがいざという事もあるので少し強引だが話しを進める。

考えながら調理場のある場所付近に置いておいたテーブルに料理を置いていると、料理の匂いに釣られたのか住民達が近付いて来たので作業を止める事なく続ける。

「今後君達を育てるにあたって色々あるが、見ての通り私はこの任についたが、ここはそれまで放置されていた。かなり荒れている。ここは神々の領域だから滅多に人が来る事もないが、神々の加護を受ける君達は人だ。だからそんな君達の属する″国″を創ろうと思っている。」

「ワシらの″国″じゃと?」

この声はハシュドだな?と手を止めて顔を上げる。

眉を少し上げて首を軽くかしげながら目を合わせる。

「ああ。まあ、生まれ育った国を思う気持ちはあるだろう。だからこの″国″は第二の故郷とでも思ってくれる程度で構わない。それが″世界を救う″のだから。」

それによって世界のリソース不足は補える。

別に住民の何かを吸い取る訳ではない。

住まう住民の″幸せの感情″がリソースになるのだ。

納得はいかないかも知れないが・・・。

静かになったホールの空気にシオンも気落ちしてくるが視線がテーブルの上の料理に向くが、目の前の肉をはさんだサンドイッチがひとつ動いた。

いや、痩せてしまってはいるが本来の逞しさがある腕がつかんだのだ。

視線をつかんだ動きにあわせて動かす。

逞しい腕は最初にシオンと顔を合わせたハシュドであり、彼は豪快にサンドイッチにかじりついていた。

かじっては咀嚼そしゃく

繰り返し、繰り返し。

そんな様を見守るシオン。

表情は変わらず凛とした無表情に切り替えて見つめる。

しばらく彼の食事の音が静かに響く。

だが不意にその音と口の動きが止まる。

同時にシオンに視線を向ける。

「ワシらは″あの国に殺されかけた″。たとえ将来、あの国がいい方向に進んだとしてもあの地を踏むにはあまりにも、悪い思い出しかない。若い世代は特に生まれた時から酷い扱いしかされた事がないだろう。」

唐突に始まるハシュドの話だか、シオンも他の者も静かに聞いている。

「ワシもドワーフにしては若い世代じゃがそれでも長い事生きてきたが、この三十年ほどは本当に酷い。」

空気の動く気配がして視線だけを巡らせると何人もが頷いて苦々しい顔をしている。

「女神様。ワシはあの船で絶望しかなかったがアンタを見た時″救われた″と思ったんじゃ。アンタがワシに″故郷″をくれるなら、ワシは″この国で生きていこう″。」

他の者はどうだ?と視線を向けるハシュド。

シオンも視線を巡らせるとひとり。

また、ひとりとサンドイッチに手を伸ばしかじりついていく。

そして、いくつかの皿が空になり始めた頃金髪の女性が疲労感等から来るものではないかすれた声で下を向いたままではあったが話し始めた。

「・・・いいんじゃない?食べ物も美味しいし。神様の国で傭兵稼業なんて中々出来ないわ。」

「そうですね・・・。」

今度はハシュドのすぐ横でフードを深く被った、おそらく女性であろう人物と寄り添う様に立つ黒髪の青年がおずおずとした様子で顔を上げると話しを続ける。

「この地には見たところ珍しい薬草もありそうですし。医者としては興味があります。」

何と医者がいたのか?戦争をしていたのなら厚待遇を受けられそうなものだかとシオンは思ったが話は後にしようと更に視線を巡らせていくと次々にこの地に根を下ろす事を口にする人々。

だがシオンはここで確認の意味も含めて口を開く。

「退路はなく・・・、この状況に乗じて話した訳だがいいんだな?この国に住めば、幾つかの使命を負うことになる。寿命も通常の人々より遥かに長くなる。生まれ育った地には帰れなくなる。」

聖霊主神の女神はこの島や近海領域が神域だと言った。

そこは″導きの光″に引き寄せられた者以外だと過ぎた力に耐えられないが適性のある民なら逆に身体能力等を通常の生き物以上にして作り替えてしまうという。

正に″神の国の民″にしてしまうのだ。

「構わんさ。」

ハシュドの声だ。

その声に次々と連なる声。

見回せば不安も感じられるが穏やかな顔が並んでいた。


ああ、いいのか?


彼等は覚悟はしているのか。

覚悟が足りないのは私だ。



「ありがとう、共に歩こう。ここが″君達の故郷″だ。」


彼等を導こう。

もう、″絶望させない″様に。


***


女神はワシら人と歩こうと言ってくれた。

ここがワシらの″故郷だ″と。

ワシらは戦渦に焼かれ各地を転々としているうちに出来た集団だ。

あの国はこの三十年、何処もこんな調子じゃ。

中にはひとつの土地に留まる事の出来る村や町もあるが、小麦の産地だとか何かしら理由かないならまず無理だろう。

そもそも、一度国王に目をつけられれば・・・。



ワシらに″故郷″はなかった。

じゃが、この時からこの『スキエンティア』がワシらの″故郷″になった。


後にこの国は世界中から『神とその民の住まう』奇跡の国とされ、大陸本土には『竜の女神』を奉る教会が建ち並ぶ事となる。

そろは随分後のよの話じゃ。


この日がワシらの建国の瞬間となった。

皆さま、読んで下さりありがとうございます!


ブックマークやポイントを入れて下さってありがとうございます!


これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします!


こんな話しかできませんが、本当にありがとうございます!

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