歩み寄りと戸惑いの理由
遅くなりました。
よろしくお願いいたします!
朝日を眩しそうに眺めていた黒髪の少女は嬉々として階下への階段を下り始める。
翼があるのだから飛んで行けばいいのだろうが″人は″そんな事はしない。
「おう、里長。」
ホールの吹き抜け部分にその巨大な螺旋階段が差し掛かり『里長』と呼ばれた黒髪の少女の姿を見つけた赤茶の髪をした男が声を掛けた。
ずんぐりとした男はドワーフ族で職人のハシュドと言う。
今回この島国『城壁都市国家、スキエンティア』の初めての民になった一行のまとめ役的な人物である。
そして『里長』と呼ばれたのはこの島の女神で別名『竜の女神』の名を冠するシオンである。
人として振る舞うからと普段は神族の姿と力を封じて生活するにあたり国主になったのだが、あまり仰々しいのは嫌だからと『里長』と呼ばれる事で落ち着いたのだった。
この事はかなりもめた。
昨日は夜遅くまで「神様をそんな風には扱えない」と言う声が上がった為、なだめるのが大変だった。
最後はシオンの様子に苦笑い気味のハシュドのお陰で収まったが。
神族とはいっても十七年しか生きていないシオンだ。
百年以上生きているハシュドは心強い限りだ。
まあ、力を封じても巫女の時くらい余裕な身体能力であるしあまり変わらない気もしているが。
良い民が来てくれたと思い口元が緩む。
選ばれる民が、皆がこうはいかないだろうと思いながらも彼等を見ていたのであった。
まあ、そんなこんなで一夜明けた。
復興した居住区域は数部屋だが大部屋である事から男女で分けた。
当分はこのままだが、居住区域の復興にも早急に着手しなければと考えて周りを見るシオン。
既に先日使用した調理場では朝食の支度が始まっているのか、何かを炒める様な音が響いている。
そう言えば、誰か朝食は自分が用意すると言っていたな?
誰だっただろうかと調理場の方へ歩いて行く。
「わあ、お肉がある。果物も!」
「ああ、お肉なんていつぶりかな?」
調理場に近付くにつれて弾むような声が聞こえてきた。
私と同世代だろうか?
ああ、確かリズとレシーアという名前で・・・。
明るい茶髪の、まだ少女と呼べる年頃の女性がいたがこの声はおそらくあの二人だと思いながら中を覗き込む。
すると予想通りの後ろ姿がピョコピョコ動いているのが見えた。
無邪気さと歓喜?そんな感情がない交ぜになった様な顔が調理台の上に並ぶホーンラビットの肉の塊や採取してきた果物、自生していたので嬉々として取ってきた山菜にも見える野菜類を前に浮かべてはしゃいでいる二人。
戦争をしているのだ。
日々得られる食糧は種類も量も潤沢さからは程遠かったのだろう。
二人は目をキラキラさせて包丁を握る手を、その他の調理を進める手を動かしている。
さて、どうするか?
正直この二人の会話に入るのは気後れしてしまう。
おそらく同郷であろう事は会話から想像するに難しくない。
共通の会話となりそうな話題は持っていないし、話す相手が神族なのだから話すどころではないかもしれない。
ただ、だからと言って「人間として」ここで暮らす以上、会話が無いのは些か問題の様に思える。
人間で神族で里長でと立場が違うからと遠巻きにしていては何にもならない。
なら、最初の抵抗がある空気は先にどうにかしてしまった方がいい、と声を掛けながら調理場に足を踏み入れる。
「おはよう。朝食の準備、ありがとう。食材は足りているか?」
神族なのだが女神らしい口調など柄ではないから、男性的とも女性的ともつかないものにした。
仰々しいのはやはり面倒だと言うのが一番の理由ではあるが。
そんなシオンの登場に一瞬固まり膝を折ろうとする二人。
その様子を見たシオンは慌てて止めさせて口を開く。
「そういうのは無しだと言った筈だ。私は、人として振る舞うからと伝えたな?いきなりは無理でも、少しずつ馴れてくれ。」
「でも、やっぱり・・・。」
「女神様は・・・。」
口々に迷いのこもった言葉を発してオロオロする二人。
仕方の無い事ではあるが、と少し明るい、しかし困った様な調子でシオンは再び口を開く。
「私は確かに神族だ。しかし、神族になってからまだ日は浅い。年も君達とあまり変わらない筈だ。私としては神族になってしまったがまだ″年相応に同世代″と触れ合いたいと思っているのだが?」
「?」
「私達と・・・?」
二人はまるで珍獣でも前にした様な顔で呆けてしまった。
だが、シオンは尚二人に話し掛けた。
「ああ、大して変わらない。いきなり選ばれて連れてこられたのだからな?あ、いきなり選ばれては君達と似ているかもしれないな?」
何となくあの無茶振り女神様と愉快な仲間(その他神様)たちを思い出してしまう。
思い出して目尻を下げているシオンを二人はポカンとしばらくみつめて、お互い視線を合わせ再びシオンを見る。
「下拵え、手伝ってもらえませんか?」
年上の方ーーーリズがおずおずとした様子で話し掛けた。
どうなったのだろうとも思ったが淀み無い返事をする。
「ああ、いいとも。私もよろしく頼む。」
にっこり笑って二人の横へ移動するシオン。
突然のリズの行動に少し年下の少女ーーレシーアも慌てて続く。
「里長様?神様の国の料理、教えて下さいね?」
包丁を握ったシオンは「はて?」となりながら返事をする。
そんなものあったっけ?
だが、リズが昨日のカツサンドの話しを始めたので「あれは、別にそんな大層な物じゃない」と答えると驚かれた。
まあ、この世界にはない類いの味や調味料だし。
ただ、こうして話しをしている間も何故彼女は自分を受入れる形をとったのかと考えた。
そして、調理も終わりに近付きポロッとその事を口にする。
するとリズは最初、何でもない様子で口を開く。
「今のご時世″違う人″や″訳あり″なんて珍しくないですから。里長は・・・まあ、かなり″違う″気はしますが、私達にしたら今さらですし。何より今までのそういう人は騙したりとかしてきましたけど、里長は今私達と一緒に食事の準備をしてくれました。さっきの話なら、いきなり選ばれては私達と同じなら、えーと・・・。」
「リズ、何言ってるか分からないよ?」
途中から声が小さくなっていくリズにレシーアの突っこみ。
言いたい事は昨日シオンが「共に歩こう」を一緒に料理をした中だし見たいな内容か?と、伝えたい事をうまく伝えられないらしい。
そしてリズは突っこみを入れたレシーアを退かしながらシオンを見てしっかり答えを口にした。
「″同じ″だから、仲良くしましょう・・・‼」
そこに食い付いたのかとシオンは苦笑いを噛み殺し「そうだな。」と返事をしてまだ混乱のある民達との朝食へ臨むのだった。
***
朝食の支度をしていたら女神様が現れた。
私とレシーアを手伝ってくれると言うのだ。
神様にそんな、と思った。
あの絶望から救いだしてくれたお方だ。
しかし女神様は気さくに話し掛けて下さって私達と″同じだ″と笑った。
今まで誰もそんな事は言ってくれなかった。
″同じじゃない″から配給も後回し。
″同じじゃない″から野晒しの生活。
流れの民の多くは戦渦に焼き出され、故郷を失った人達ばかりで何処に行っても″違う″と罵られた。
だから、こんな事を言ってもらうのは初めてで戸惑った。
でも、女神様と話しをしていると″これが普通″で悪い事じゃないんだと不思議な程素直に感じられた。
多分私は目茶苦茶な事を喋ったと思う。
いつかはちゃんと伝えられるようになりたい。
ここに選ばれて来たのだから。
でも、女神様は私達と同世代なんだ。
少し近寄りやすくなった気がした。
ブックマーク、ありがとうございます!
リズの言動がテンパってます。
神様に″同世代″とか言われたら、まあ。
ただ、今までは″違う″と言う事でひどい扱いを受けたので戸惑いが・・・。
皆こんな調子でしたと言うお話です。
分かりにくくてすみません。
つき、都市計画(?)です。
よろしくお願いいたします!




