林中捜索3
楽しい食事会の翌日に予期せぬ邂逅を果たした舞奈。
だが、その後は普段通りに学校へ到着した。
いくら舞奈だからといって、何の変哲もない平日の朝から二度も三度もトラブルに巻きこまれてはたまらない。なので――
「――ちーっす」
「舞奈様おはようさんっす。昨日はお楽しみだったようで!」
「いや昨日は何の悶着も起こしてないぞ……って皆で飯食った話か」
校門前で面白黒人のベティに挨拶がてら軽口を交わし、
「今回の件が終わったら、また皆で打ち上げでもしようぜ」
「それは楽しみですね」
「おっ。クレアさんもおはようっす。今日も頼むぜ」
「かしこまりました。こちらへ」
金髪のクレアに愛銃を預ける。
そして何事もなく初等部の校舎へ。
上履きに履き替え、廊下を歩き、教室のドアをガラリと開けると――
「――マイちゃん、おはよう」
「マイおはよー」
「おっ園香にチャビーも、ちーっす」
教室の隅で話していた園香とチャビーが出迎える。
「あ、舞奈。おはよう」
「おっテックも昨日はお疲れさん」
テックも一緒に歓談していたらしい。
ホームルーム前の教室は今日も平和だ。
「昨日のご飯、凄く美味しかった。誘ってくれてありがとう」
「まーお金払ってくれたのレナちゃんだけどな」
「ふふっ」
園香の笑顔を皮切りに、先日の食事の味を反芻する。
表情からすると一緒に帰ったレナも同じ様子だったらしい。
楽しんでくれたようで何より。
まあ舞奈が食べたのは普段と同じ担々麺と餃子に、ちょっと奮発して大根餅を頼んだくらいだ。
それでも友人と馬鹿な話をしながら食べる飯の味は格別だ。
それは園香たちも同じだったのだろう。
なので朝から食事会が楽しかった話で盛り上がる。
いわば先日の楽しいパーティーの反芻だ。
なお教室の隅では――
「――ニャー!」
「ギャー!」
さっきからみゃー子が男子とエアチャンバラをしていた。
相変わらず何が楽しいんだろうかと舞奈は思う。
「――下々の皆様! 御機嫌うるわしゅう! 今日も西園寺麗華がやってまいり」
「ニャニャニャニャニャニャニャ!」
「ギャー!」
「あっみゃー子さん、おはようございます」
「麗華様、悲鳴が下品なンすよ」
勢い余って登校してきた麗華様に斬りかかって例によって大騒ぎになった。
取り巻きのデニスとジャネットも普段と同じように苦笑している。
だが今日の舞奈は楽しい歓談に夢中だったので、特に気にもせず――
「――あら皆、おはよう」
「あっ! 安倍さんおはよー」
「おはよう」
「おはよう明日香ちゃん」
「ちーっす。そういやあ昨日の飲み会でさ――」
「ちょっと飲み会って何よ。お酒を飲んでた人に影響されてない?」
麗華様たちと一緒に登校してきた明日香を加えて馬鹿話に花を咲かせた。
……という訳で、その後も何事もなく一日が過ぎ、放課後。
木々がまばらに立ち並ぶ林の一角を……
「……辛いんだナ。足が痛いんだナ。足元が悪い山道を歩き通しなんだナ」
「ちょっと、しっかりしなさいよ。この前だって来たでしょう?」
「ハハッその通りだ。シュッとしたハンサムには一朝一夕じゃーなれないぜ」
いつもの面子がぞろぞろと歩く。
思いがけぬ休業日の翌日。
須黒と他支部とスカイフォールの合同部隊はパトロール兼調査を再開していた。
舞奈たちのチームの今日の持ち場は例の街外れの林だ。
先週の日曜日に、林の奥の洞窟の中でプリドゥエンの箱舟をひとつ発見した。
その際に箱舟を利用して転移元に殴りこみ、もうひとつの箱舟も確保した。
なので他にも何かないか再確認する算段だ。
だが舞奈には別の理由がある。
舞奈たちが東南アジアに殴りこんでいた間に、林に不審者があらわれた。
今回で二度目だ。
そいつらは警備員と協力者チームで対処した。
だが、その一部を屠ったらしい警備員とは別の何者かがいたらしい。
脂虫を両断し、貫いた……おそらく手練れ。
舞奈はそいつらの正体を知りたかった。
「ふふっ。十分な足腰と機動力を確保できれば、太っていても構いませんよ。その方が似合うお召し物もたくさんありますし」
「いやあ照れるでゴザルよマーサ殿」
「……」
「それ、痩せないと制服の腹に王女の顔がプリントされるって事か?」
「許さないわよ、そんな事!」
太っちょイワンと上半身マッチョのジェイクを先頭に、こちらも肥えたドルチェと出っ歯のやんす、舞奈にレナにゴードン、マーサ。
ドルチェのシャツの腹では例によってアニメキャラの女の子が笑っている。
前回の探索から面子が一部変わったものの、相変わらずの大所帯だ。
「スカイフォールの対外政策はその方向でやんすか。裏サイトもあるでやんすし」
「そのサイトは! 消えたわよ!!!!!!」
やんすがうっかり口を滑らせる。
挙句にレナにガチ睨みされて「ひゃー」と怯えてみせる。
その様に馬鹿話をしつつ、まばらな木々の間を皆でぞろぞろ歩く中……
「……奴ら、こんな方にまで来たのか」
舞奈は周囲を見回しながら口をへの字に曲げる。
木々の幹、あるいは根元や地面に遺された戦闘の跡。
何カ所か焦げた場所や、弾痕まである。
数が多い以上に気に入らないのは戦場の幅が広範囲にわたっている事だ。
同行している太っちょイワンが軽く音をあげるくらい歩き通した範囲のほぼ全域に、敵は布陣していたようだ。
聞いていた話も総合すると3~4ダースが林の各所に展開していた計算になる。
まるで軍事作戦だ。
あるいは人海戦術で探し物でもしていたか?
だとすれば、プリドゥエンの箱舟以外の何かが本当にこの近辺にあるのか?
「撃った弾とか、回収してくれたんだよな?」
「警備会社の清掃班に引き継いだので、それは大丈夫だと思うでゴザルよ」
苦笑する舞奈にドルチェが答える。
明日香の実家が後始末をしているなら安心だ。
同じ林中に6年生の秘密基地もあるし、妙な物を残しておかれたくない。
だが、それ以上に舞奈が口元を歪ませた理由は、焦げた糞尿のようなヤニの悪臭が微かに鼻についたからだ。
流石に喫煙者が数時間たむろした程度なら今頃は臭いも霧散しているはずだ。
ヤニ臭い飛沫が派手に飛び散って何処かにこびりついているのだろう。
問題の何者かとは別に、娑やモールも張り切ったらしい。
手足とかもちゃんと回収してくれたのなら良いのだが。
対して血の臭いはない。
脂虫の不審者が大勢いた半面、人間側は少数だが手練れだったからだ。
鋭敏な感覚を持つ舞奈になら、その程度は余裕でわかる。
それでも騒動から数日が経った今では痕跡も薄れている。
流石の舞奈にも脂虫と人間の大規模な揉め事があったという以外は判別不能。
敵の能力も、もちろん人相や技量も謎のままだ。
それでも何らかの痕跡を見つけられない事には話は始まらない。
なので何かないものかと周囲の枝葉や木の根の陰を見やっていると……
「……よっ! つばめちゃんの友達か?」
「ニャッ……!?」
見覚えのある野猫がいた。
茂みの中に隠れていたらしい。
だが周囲の空気の流れから肉体の動きを察する舞奈に対して隠蔽の効果はない。
葉っぱの合間から目が合った猫は目を真ん丸にして驚いている。
そんな猫に舞奈が笑いかけた途端、
(あ、あの、ごめんなさい。お仕事を手伝ってもらってるから、怯えさせないでくれると……)
(スマンスマン。脅かすつもりはなかったんだ)
脳内に少女の声。
ビンゴだ。
椰子実つばめによるケルト魔術【精神結合】【思考精査】を用いた通信だ。
軽微なノイズからすると一行の全員が繋がっているようだ。
魔術と呪術を極めた大魔道士の実力は伊達じゃない。
「何度体験しても凄いわね。うちの宮廷魔術師より技量は高いんじゃないかしら」
「実力の差を思い知らされますね……」
「ひゃー。ビックリするような精神介入の技量でやんす」
レナとマーサは改めて感銘を受け、やんすはビックリしている。
(その、やん……ハカセさんやマーサさんも、表層思考と深層思考の境目がはっきりしていて話しやすいですよ……)
「どういう意味だ?」
「建前と本音の区別がつきやすくて地雷を踏みにくいという意味でゴザルな」
「お、おう……」
褒めてるのか? それは。
思わず首をかしげたところに返ってきた答えに苦笑しつつも、
(まあいいや。猫とリンクして見張ってくれてるのかい? お疲れさん)
(あっいえ、それほどでも……)
まずはつばめを労ってみせる。
つばめのしている事も、要は舞奈たちと同じだ。
以前にプリドゥエンの箱舟が見つかり、近い時分に不審者の群が出没した林に他にも何か異常はないか捜索しているのだ。
それを林中に生息している猫を使ってやってのけるあたりが流石は大魔道士。
林には野猫が沢山いて、しかも普段から住んでいる。
何かあっても見逃さないだろう。
それなら舞奈たちの調査は無駄だと考える事もできる。
だが一見すると効率の良い調査をすり抜けた重要な事柄を地道な調査で見つけた経験が過去に何度かある。
両者が協力すれば、その効果は倍増される……のが理想だ。
(そういや不審者がいた範囲が広いんだが、分布から何かわからないか?)
(それなら戦闘があった位置の情報を提供したでやんすよ!)
(そ、そっちはニュットがやってたから、そのうち結果が出ると思います……)
(……だと良いがな)
続く会話に、表層思考の中だけで器用に肩をすくめてみせる。
やんすはビックリしていた割に慣れた調子で脳内会話に参加してるし。
ニュットはニュットでまた適当な三角形を描いて遊んでいなければいいのだが。
だがまあ、ここでつばめと接触できたのは好都合だ。
(スマンがあんたに頼みがあるんだ。つばめちゃんにしかできない事だ)
(えっ? な、何ですか?)
脳内で尋ねた途端に露骨に動揺する気配。
舞奈と同じ最強Sランクなのに……。
というか舞奈はつばめに無茶を言ったりセクハラした事なんかないのに。
まったく。妙な与太話を吹聴する糸目が悪い。
と、そんな愚痴を一瞬だけ考えてから、
(そんなに怯えなくても変な事はさせないよ。ここらの猫たちに、日曜日に不審な奴を見かけてないか聞いてほしいんだ)
頼み事。
例の不審者キラーの詳細を、猫が見ていなかったか聞く算段である。
何故なら林には野猫が沢山いて、しかも普段から住んでいる。
何かあったら見逃さない。
だが……
(不審者はたくさんいたと思うけど……)
(そいつらを狩ってた奴らの中で、警備員と協力者チームの面子以外の――)
(ご、ごめんなさい。き、聞く相手が猫とかタヌキとかだから、複雑な質問をしても意味を理解できないと思います……)
(それもそうか……)
つばめの説明に納得する。
これは予期せぬ盲点だった。
林は野猫の庭ではあるが、林で起きた事件は他人事だ。
タヌキとも会話できるのは朗報だが、こっちも別に変わらないだろう。
何かあっても関心がないか、そもそも気づいていない公算が高い……。
奴らも人間と人型怪異の違いくらいは匂いでわかるだろうが、それぞれの個体差や人相を判別できるかは疑問だ。
(あ、あの、探している人の特徴はわかりますか?)
(いや特定の誰かって訳じゃないんだが……)
困っている思考をダダ漏らす舞奈がいたたまれなくなったか珍しく積極的に尋ねてくるつばめに答えつつ、舞奈の脳裏に2人の容姿がよぎる。
野性味あふれる顔立ちをした、彫りの濃いスポーツマンな顔立ち。
中年というほど老けてはいないが、決して未熟ではない微妙な年格好。
手にしているのは大太刀。
あるいは相方を超える長身と薄い前髪と長髪、羽織ったマント。
神経質そうな、聞くものを苛立たせる声色。
不愉快な男が手持ち無沙汰に弄んでいる鋭いレイピア。
剣鬼とコルテロだ。
(その人たち……ですか?)
(まあ可能性が高いってだけだが)
言い置いてから、2人の……特に剣鬼の仕草を思い浮かべる。
喫煙者に特有な糞尿の腐ったような悪臭は当然として、その中に微かに混ざる鍛錬の汗の臭い、鉄の臭い、おそらく太刀にこびりついた古い血の臭い。
直情的で傍迷惑で、それ故に剣の道に対してだけは真剣な態度。
自負に相応しい圧倒的な剣技、身のこなし。
師弟のような関係だったのであろう年若い仲間に向けていた感情。
脂虫の彼が見せた、唯一の人間らしい弱さを利用する形で舞奈たちが奴らを討った事実をできるだけ考えないようにして――
(――このくらい鮮明なイメージがあれば大丈夫だと思います。聞く相手が多いから少し時間がかかるけど……)
(そいつは構わん。頼りにしてるぜ)
(それじゃあ一旦、切ります)
つばめの頼もしい言葉と共に脳内の通信は途切れた。
舞奈は一安心して小さく笑う。
おどおどした言動とは裏腹に、椰子実つばめの大魔道士としての実力は本物だ。
誰かさんとは違って口にした約束はちゃんと守ろうとする生真面目さも。
彼女に用件を伝えられたのなら結果は期待できる。
だがまあ、こちらでも調査はするべきだ。
そうじゃなきゃ何のために来たのだかわからない。
「そういやあ、例の戦闘で敵が術を使ってきた形跡はあったのか?」
「その時に少し調べたでやんすが、微弱な異能力の反応くらいしかなかったでやんす。何処もあっしたちが叩きのめしたのと同じでやんすよ」
「異能力者ばっかりだったのか」
「大半は異能力すら持ってない脂虫だったでやんすよ」
「そうか……」
舞奈の問いにやんすが答え、
「先程の、敵組織の騎士とやらの事かね?」
「ああ。まあ無関係な可能性は否定できんが」
「なら魔力の反応は普通の脂虫と変わらんだろう」
ゴードンが答える。
まあ、もっともな意見だとは思う。
仮に何らかの手段で剣鬼やコルテロが生きていたとしても、それを魔力の反応から特定する手段はない。
複数の異能力を操る騎士とはいえ、魔力は他の異能力者や人型怪異と同じだ。
故に遭遇したり見かけたりした者が顔を見ているかどうかくらいでしか、舞奈の危惧の是非を確かめる事はできない。
そもそも生きていたなら仲間のはずの不審者を屠る理由がない。
奴らには一連の事件の黒幕とは別の思惑があるのか?
それとも本当に人違いで別の勢力ないし個人がしゃしゃり出てきたのか?
「そうね。それらしい反応はないわね」
「やんすさんのおっしゃる通りみたいですね」
レナとマーサも答える。
当時も今も、魔力感知に反応は無いという事らしい。
まあ敵の程度がそのくらいなら魔法戦闘なんかなかっただろうし。
「……それもそうか」
舞奈はやれやれと苦笑する。
まあ、そんなものが簡単に見つかれば苦労はない。
仕方がないので皆で闇雲に戦闘があった範囲を練り歩いてみる。
だがイワン氏がダイエットできた以外に特に収穫はなかった。
「そういやあ、その大量の不審者ってのは何者だったんだ? 前の時は高校野球のユニフォームを着た球児だったんだが」
「ちょっと。そういう事は最初に聞きなさいよ」
「おまえだって聞いてなかっただろう」
「その面白そうな話を詳しく聞かせていただいても?」
尋ねた途端に文句を言ってきたレナを睨んでみせる。
興味本位なマーサは礼儀正しく無視。
そんなほのぼのとしたやりとりには構わず、
「某たちが相手したのはソマリア人の集団でゴザった」
「……? また不法移民か」
「東アフリカの端にある小国でゴザル。治安が悪くて海賊行為が有名でゴザルな」
「ロクなもんじゃねぇな」
ドルチェが答える。
「目的は誘拐……でしょうか?」
「可能性は高いでゴザルな」
「おおい……」
当然みたいな顔で言ったマーサに思わず口をへの字に曲げる。
海賊どころか誘拐犯として国際的に有名なのだろうか?
まったく不法移民の脂虫にはロクな奴がいない。
「……む。いい時間でゴザルな。そろそろ帰投するでゴザルよ」
「そうだな。じゃあついでに……」
帰り際に6年生の秘密基地に寄って行こうと提案した。
皆も了承してくれた。
どうせ帰り道だし。
ロクでもない話を聞いて気分が悪いからという理由も少しある。
それに、まあ事の発端は彼らが秘密基地で遊ぶ最中に不審者を見つけた事だ。
なので今回も何か見つけてくれていたら良いなあと希望を抱き……いや、何もなければその方が良いのだがと内心で苦笑しながら皆で歩く。
そして林の木々が途切れた空間に差し掛かり……
「……あいつら何やってるんだ?」
見やった舞奈が訝しむ。
小屋を乗せた巨樹の麓で、6年生たちが鈴なりになって何かしていた。
見やってみると、全員で何かを観察しているようだ。
「タヌキがいるでやんす」
気づいたやんすが指さす。
なるほど木陰に1匹のタヌキがいた。
タヌキは虚空を見やってうなずいたり首を横に振ったりしている。
つばめが早速、聞きこみをしてくれているようだ。
まあ、そいつに手出しせずに見守るあたりも気のいい6年生らしい。
弁当の代わりに捕って食おうとか言い出す誰かさんとは大違いだ。
「――あっ! やんすの叔母さんだ!」
「こんにちはー!」
「やんすの叔母さんこんにちはー!」
「叔母さん、みなさんもこんにちはでやんす」
6年生たちがこちらに気づき、タヌキは放っておいて挨拶してくる。
以前に警備員と一緒に駆けつけて不審者を捕まえて以来、やんす(叔母)は小学生の皆の人気者になっているらしい。
それにしても6年(姪)やんすと叔母やんす。
並べて見やると本当にそっくりだ。
サイズが違う大小の出っ歯の眼鏡がなんとも笑える。
ひょっとしてリスペクトしているのだろうか?
っていうか……
(……おまえらいつもいるな)
「おまえらいつもいるな」
舞奈とほぼ同じタイミングで、リーダー氏が小生意気にも苦笑してきた。
いつ来ても出くわすんだがと思った途端にこれである。
「また不審者が湧いて出てこないかどうか、見回ってやってるんだよ」
口をへの字に曲げる舞奈に、
「大丈夫だぜ! この前の奴らだって警備員さんがやっつけてくれたしな!」
「そういう油断が命取りだぞ」
「何だよ良い事言いやがって、志門舞奈のクセに」
「クセにって何だよ……」
リーダー氏は軽口を返す。
まあ、こちらはこちらで以前に彼の犬を取り戻してから彼の舞奈に対する態度も多少は軟化している。単に馴れ馴れしくなったとも言うが。
「今日は学校の帰りだからお弁当はないけど、非常食のビスケットがあるよー」
「ちょっと待て。おまえたち弁当の事を知ってるのか?」
6年の女子の台詞に、上半身マッチョのジェイクが慌てて、
「あっしが姪に話したでやんす」
「叔母さんから聞いた話を皆に話したでやんす」
2人のやんすが同じ表情で、悪びれもせずに同時に答える。
まったく。
舞奈はやれやれと苦笑した。




