050+:最初で最後
最終回の行間を埋める話です。
書きたいものは他にもいろいろありますが、
ひとまずはこれを物語の締めくくりとします。
「村人が言ってたぞ…貴様の遺体は酷い状態だが顔は笑っていたとな…」
真夜中のトバ村…オオムガの墓前でココは独白…
「いまも私の心は貴様ばかりだ…この手で殺せなかった心残りか?いや………」
ココは墓標に手を置き、そこに刻まれた銘を指先で読みながら呟いた。
「まったく厄介な呪いを残してくれたな…父を殺した男に片想いとは…」
その瞬間、夜風が冷やかすようにココの髪をふわりと吹き乱した。
ほんの刹那、月明かりに照らされたその顔はかすかに赤らみ、目にはわずかばかりの涙…
「打ち明けたのは感傷からではない…認めなければきっとこの呪いは解けないから…」
ココはこの不可解な感情を噛み締めながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「だから今宵は貴様に別れを告げに来たのだ。私が魔王として迷わず前に進むために…」
…一輪の花がそっと墓標を飾った。
ココはしなやかに踵を返し、後ろ髪を断ち切るように強く言い放った。
「用件はそれだけだ!貴様はそこで世界の行方を見届けるがいい!」
そして、彼の墓前を離れる直前に、もう一度だけ呟いた。
「さよなら…オオムガ…」
ココは去った。彼女がこの場所を訪れるのはこれが最初で最後だった。
夜が明ける頃、オオムガの墓標に小さな影がひとつ…
それは闇よりも黒い一匹のトカゲ…その背には世にも珍しいハートの模様…
トカゲはココが残した花をしばし眺めたのち、そのまま音もなく森の中へと消えた…
終わり
読んでくれてありがとうございました。
また別の作品でお会いできたら幸いです。




