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荒治療


『…ねぇ、遊ぼうよ?』



今までに見たことのない笑みを浮かべて手を伸ばしてきた。

私は、涙を流しながら…。



*  *  *


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


自分の声で目を覚ます。

バッと起き上がって、さっきのが夢だと自覚する。

…あぁ、久しぶりに見た。

せっかく、忘れかけていたのに。


「やっと起きたか。」


その声にハッとする。

見なくてもわかる。

咲々宮冬夜だ。

横にいる冬夜を見ないように反対方向に体を向けて再度寝転がった。


「まったく…。行きなり倒れやがって。保健室まで運んできてやったんだ、感謝しろよな。」

「は!?あんたが運んできたの!?」

「おう。他に誰がいる。」


あぁ…。寒気がする…。

自分を抱き締めているような格好で震えた。


「ってかさー、お前、前より酷くなってねぇか。あーなんだ?イケメンへの拒絶反応。」

「へ?……そう、かな。」


冬夜に言われて、考えてみる。


「酷くなってるよ。前は、見つめ合っても拒絶反応出なかったじゃん。」

「あー、そういえばそうだったね。」


なげやりに答える。

どうでもいい。


「そんなんじゃ、この学園で生きていけねぇぞ。気づいてると思うけど、この学園イケメン率高いからな。」

「へぇ…。だから、最近いつも頭痛がしてたんだ。」

「おいおい…。」


顔を見てないから分からないが呆れた顔をしているような気がした。

少しはぶてているとふと気を失う前のことを思い出した。


「そうよあんた!!主人公をやめるの阻止するのはなんでよ!!」


冬夜の方を見そうになって、慌てて顔をそらした。

や、やばかった…。


「そりゃ、面白くないからだよ。それ以外になんの理由があるのさ?」


こ、こいつ…!

なにが、面白くないだっ!

こっちは、死活問題だっていうのに…!


歯軋りをしていると、冬夜が吹き出した。


「おまえさー。主人公やめるっつったって、ここはゲームの世界だぜ?許してくれるわけないだろ。お前、せめてイケメンの顔を見ても倒れないぐらいにはなれよ。」

「うぐっ……。そ、そうよね…。」


冬夜の意見は悔しいけど正論だ。

チラリと冬夜の方を見る。

その瞬間、頭痛が襲ってくる。

目をそらしたくなる。


「目、そらすなよ。荒治療だけど、これが手っ取り早い。」

「……うん。」


冬夜に従うのは、癪だけど我慢して見つめる。

見つめる。見つめる。見つめる。見つめる。見つめる…。

……だんだん、恥ずかしくなってきた。

冬夜も同じ気持ちなのか、顔が若干赤い。

痛みを我慢して数分。

頭痛もだいぶんおさまってきた。


「あれ…。痛くなくなってきた。変なの……。」

「慣れてきたんじゃねぇの?昔は大丈夫だったし。」


まだ、少し痛いけど見つめあっても大丈夫になってきていた。

意外と克服するのに時間かかんなかったじゃん…。

拍子抜けした。

はぁ、とため息をつく。

ふと、時計を見るともう七時。

……………七時。


「ひゃあ!?もうこんな時間!?」

「……あ、ほんとだ。」


慌ててベッドから降り、ぐしゃぐしゃのスカートやら髪やらを直す。

近くにあった鞄をとり保健室から慌てて出た。


「玄関で待っとけよ。」

「なんでよ?」


さっさと帰ろうとすると冬夜に声をかけられた。

不満そうに冬夜を見る。

……うん。大丈夫になってきた。


「外は、暗いだろ。お前一人じゃ危ない。それに、もう少し話したいことがある。」

「……わかったわよ。」


渋々了解して、歩き始めた。

……話したいことってなんだろ?

前世のことかな?

首をかしげながら、玄関へ向かった。


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