征服の能力④-020
第二十話
──ゼロウスとの戦いの末、イラアは力尽き、その場に倒れた。
目覚めたとき、彼は見覚えのある場所にいた。
「……ここは、寺か? まて……ゼロウスは!?」
そのとき、扉が開く音がした。静かに、だが確かな足音とともに、現れたのは──
「イラア様、目を覚ましたのですね」
──ゼロウスだった。
イラアは身構えながら問う。
「なぜ……俺を生かしたんだ?」
ゼロウスは頬を赤らめ、視線を伏せると、口を開いた。
「……イラア様が花を差し出したあの瞬間、私には分かりましたの。あれは……私への告白だと」
「はぁ? 何言ってんだ、あんた」
「初めてお会いした時から、素敵な方だと感じていました。人のために戦うその姿に、このラファリ・ゼロウス……心を奪われましたわ!」
──堂々とした告白。イラアはその真意を量りかねて、口を開いた。
「それは……ありがたいが。君は国王軍だろ? この街を支配しているのも──」
だが、ゼロウスは首を横に振った。
「国王軍……それはあくまで“表”の顔。改めて申し上げます。私は麗桀こと、ゼロウス。そしてその“裏”の顔は──国王軍へのスパイですわ」
「……スパイ、だと?」
「はい。この村は、かつて国王軍にひどい扱いを受けました。私は、この村を守るため、あえて国王軍に身を置いたのです」
真実を聞いたイラアは、思わずこぼした。
「……じゃあ本当に、この村の人々はあんたを慕ってたのか」
「ええ、そうです。そして、イラア様。私があなたに試練を与えたのは、あなたの実力を見極めるため。──阻止雨様からの伝言でもありましたの」
「阻止雨さんが……君を?」
「ええ。阻止雨様は、この村の先代村長と深い縁がある方。復活されたと聞き、私も驚きましたの」
──真実は、イラアの想像を越えていた。
「……すまない。疑っていた。君は、本当にいい人だったんだな」
ゼロウスはにっこりと微笑み──
「いいえ。ところで、イラア様……少し真面目な話ですが──結婚式は、いつにしましょうか?」
「え、あ、えっと……俺が国王になったら考えるよ。そ、それじゃあ、またな!」
イラアは脱兎のごとく寺を飛び出した。
──背後から聞こえるのは、彼女の絶叫。
「つまり私は王妃になるということですかぁぁぁあああッ!!」
*
──そして、再び阻止雨のもとへ戻ってきたイラア。
「帰ってきたか、イラア」
「まさか、あれが全部あなたの仕込みとはな……さすがです、阻止雨さん」
阻止雨はイラアの手に触れ、魔力を読み取った。
「……ほう、ゼロウスとの戦いで、イラア。お前は“三域”にまで達したか。見事だ」
「自分でも驚いてます。でも全部……あの修行のおかげです」
──そのとき、懐かしい二人が現れた。
「イラア、強くなったな。見ただけでわかるぞ
私もこの一週間で“九域”になった!」
「俺は“五域”だ」
──そう、大島と佑月も、それぞれ修行を終えていた。
イラアは拳を握りしめて言った。
「よし……みんな。次の目的地へ行こう!」
──風が、三人の背を押した。
←To be continued
■成長記録
・イラア:3域
・大島:9域
・佑月:5域
・阻止雨:8域




