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打ち明けてくれた日からハルの周囲は緩やかに変化していった。
奈穂も積極的にハルを守ろうとして、他のクラスメイトもハルのことを庇う機会が増えたらしい。今までやり過ぎだと思っていた子もいたみたいだけど誰も何もしないから行動を起こせない子が多かった、というわけで...。若干思うことがあるけれど、少しでも被害が減らせるのであれば良しとするべきなのかもしれない。
ハルの方もスクールカウンセラーの先生に病院でのカウンセリングを進められて通い始めたらしい。どんなことを話したらいいのか相談しているのが蒼くんなのが少しだけ気に食わないけど、少しずつ前に進み始めているのは喜ばしいことだ。
そして、私達はそれぞれ別の高校へと進学した。
特別進学クラスで蒼くんと3年間同じクラスで腐れ縁が続いてしまうのは癪だけどこればかりは仕方がない。
「人の顔を見るたびにため息を吐くのは俺に対して失礼だと思わないか?」
「あ、ごめんなさい。ハルも同じ高校だったらよかったのにって思ってただけだから」
「それは、俺も思ってることだけど、遥稀が決めたことだし。知り合いの少ない所に行くって」
ハルは同じ中学からの進学者があまりいない高校を進路先に選んだ。
中学時代のことを知る人がいるとまた委縮してしまうかも知らないから、新しい環境で1からやり直してみたいということらしい。
その勇気と度胸はハルらしいと言えばハルらしいけど、きちんと友達を作れているか、嫌な目に遭っていないか、クラスに馴染めているか心配な部分はある。
たまにメッセージのやり取りはするけれど、文字だけの会話でそこまで深いところまでは聞けないし、何より私よりも蒼くんの方が頻繁に連絡を取っているのが少し羨ましい。
2年生に進級した今でもクラス替え後ハルが馴染めているのか心配になる。
「あ、来週だな」
「何が?」
「何がって、部活の合同練習あるって言ってただろ?」
「それがどうしたの?」
「練習場所、遥稀の通ってるとこだろ?上手くいけば会えるんじゃないかと、」
蒼くんの言う通りだった。
改めて日程を確認するとハルの通っている学校。会うには絶好のチャンス!
ハルに連絡して会ってもいいけど、ここはサプライズの方が良いのかもしれない。それは蒼くんも同じ考えのようだ。
練習時間と休憩時間を考えて、ハルがいそうなエリアを考える。部活に入るにしても文化部だろうし、となると、体育館付近にはいないはず。
あとは、ハルのことを知っていそうな子に話しかけて案内してもらえればラッキーという感じね。
「よし、ハルに会えるわ。完璧ね」
「...前から思ってたけどまいって遥稀が関わると物凄く阿保になったり、暴走したりするよな」
「そんなことないわよ。というか、蒼くんには言われたくないわ」
知能が著しく低下して冷静さを失うのは蒼くんのことだと思う。私まだマシよ。
合同練習当日、私達は学校の散策をしていた。両校が午前授業で終わった今日、練習時間の間にそれなりに長い休憩時間が設けられr、その間に生徒同士で交流することが可能となっているのだ。
「早緑くん、連絡先の交換お願いしても、」
「彼女とかいるの?」
相変わらず女子に囲まれている。
ハルというものがありながら、やっぱり嫌いだわ、蒼くん。ハルもこの光景を見るたびに遠くで笑っているけれど。
「早緑、彼女いるよな?よく連絡とってる子だろ?」
「まだ彼女じゃないですけど、はい、」
「まだってことは、好きな子か?くぅーイケメンは良いね!勝ち確じゃん!」
いや、勝ち確ではないでしょ。ハルは蒼くんの好意にたぶん気付いていないか、気づかないふりをしているし。人間関係の複雑さを理解しすげてすぐに恋愛脳に切り替えるのは難しいだろうし。
「確か、この学校の子なんだよな?会いに行ってやれよ」
「言われなくてもそのつもりですよ」
蒼くんが立ち上がって移動を始めた。別ルートから私もハルを探すために移動を始める。見つけ次第連絡を入れて合流する予定だ。
ここは共同戦線を張らせてもらう。
「いたか?」
「見つからないわ」
校舎の中間地点と思われる場所で私達は合流した。
収穫はなし。早めに帰宅したのか校舎内の教室にいるのかどちらにせよ、会うのは難しいのかもしれない。
諦めるかと思った時、こちらを見て驚いている女子生徒がいた。...ハルだ。
ハルは走って私に抱き着いてきた。ぎゅーっと強い力で抱きしめられる。私も同じくらい強い力でハルを抱きしめた。
ハルの後方には私達の様子を見て驚いている男子生徒。ハルの隣を歩いていた子だ。
ひとまず牽制はしておく。
「おーい、俺もいるんですケドえてますかー?」
蒼くんが拗ねたように言うとハルは蒼くんにも嬉しそうに笑いかけた。
いい加減後ろの子が放置されて可哀そうに思えてきたのでハルに紹介してもらうことにする。
羽付渉くん、ハルの部活の後輩で師弟関係にあるらしい。ハルが気に入っていて渉くんもハルのことを慕っているのがよくわかる。まあ、彼がハルに抱いている感情は憧れに近いものだろうな。
蒼くんは少し警戒しているみたいだけど。
ハルは蒼くんの言葉でコロコロ表情を変える。見ていて可愛いけど、やっぱり少しだけ面白くない。
ここは蒼くんに効果てきめんなマウントを取っておこう。お泊り会は女子同士でしか楽しめない特権だし、その時の様子を知るのは私しかいない。
羨ましいと、表情に書いているのに少しだけ満足することができた。
どうにか次会う約束も取り付けることができたし今日は収穫がいっぱいね。
渉くんからh部活でのハルの様子も聞くことが出来そうだし、これもいい収穫だと言えるのかもしれない。
とりあえず、問題なく学校生活を送れているようで安心した。
騒がしくなってきた中、私は満足して練習場所へと戻った。




