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打ち上げからの帰り道、クラスメイトと歩いていると見覚えのある人物を見かけた。
「渉じゃん。こんなとこでどうしたんだ?」
「あ、蒼さん、こんにちは。実は、部活で使う資料を買いに来たんですけど」
「資料?てことは遥稀もいるのか?」
「いるんですけど、」
渉の示す方へと視線を向けると女子数人に囲まれている遥稀がいた。
「どれがいいか先輩に聞きたかったんですけど、あの調子で...」
さすがにあの中には入っていきにくいよな...。わかる...。
「早緑の知り合い?」
「ああ。遥稀の後輩で仲良くなったんだ」
「あ、どうも。羽付渉です」
「女子の先輩が多いってことは実質ハーレム!?しかもかわいい子ばっかじゃん」
「いや、そんないいものじゃないですよ」
渉が遠い目をしている。ねぎらいの気持ちを込めて俺は渉の肩を叩いた。
「渉、買うの決まった?」
「あ、先輩。実は相談したいことがあって、」
「なに?」
遥稀が声を掛けると渉は早速相談内容を持ちかけた。どっちの参考書と本が分かりやすいか聞きたかったらしい。
遥稀も渉の性格を熟知しているのか、それぞれのおすすめポイントを話している。正直、面白い光景とは言えない。
「ありがとうございます。ってか、先輩大丈夫でしたか?結構いろんなこと聞かれて疲れたんじゃ...」
「まあ、それなりに...ほら、早く買っておいで」
「は、はい」
遥稀に急かされて渉はレジまで小走りで行った。
「蒼も用事できたの?」
「いや、学園祭の打ち上げで帰る途中。偶然渉を見つけたから声を掛けたんだ」
「そ、そっか...」
遥稀が目を泳がせている。これは何かあったな。
「そういやここ、今の期間お化け屋敷やってるんだっけ」
クラスメイトが何気なく言うと、遥稀の肩が大きく跳ねた。
「遥稀、もしかしていく予定だったとか?」
「ほ、ほんとは、いきたくない...。」
「なら、なんで?」
「お、思い出作りにどうかって、言われたら断れなくて...私、ホラー耐性あると思われてるみたいで...」
ホラー系、好んで読んでたからか...。
「遥稀、無理なら今からでも断った方が良いんじゃないか?夜とか眠れなくなったら、」
「それは、確かに...」
しかし、チケットは既に買ってあるらしい...逃げ道がない。
「はるきー買い物終わったよーってあれ?はるきの彼氏?」
「ゆか、違うよ、中学の時からの友達の蒼」
「ふーん?そういえば、お化け屋敷なんだけど、めぐちゃんも怖いの苦手らしくて、」
「提案してきたのめぐちゃんなのに?」
「まあ、そうなんだけどね?それで、チーム分けどうしようかって話。耐性ありそうなの渉くんと伊織ちゃんと部長くらいで、渉くんははるきとが良いって、言ってて、あとめぐちゃんも」
渉、やっぱり遥稀に気があるのか?...いや、女子の中だと遥稀がまだ絡みやすいだけか。
「それで、ここだけの話、涼音ちゃんが渉くんと組みたいんだって」
「なるほど?え、それじゃあ...」
「私もあんまりお化け屋敷得意じゃないんだよね...」
「2人1組だから、誰かが1人で潜入…?」
「そういうことに、」
「無理無理無理」
遥稀が激しく首を振っている。これはレアだ。
「怖い人同士を汲ませたら絶対出てこれないからどうしたものかと...ってことで、はるき」
「え、1人で入るの無理だよ?」
「違くて、」
遥稀の友達はこちらに笑いかけた...。なるほど。
「遥稀、一緒に入るか?それなら恐くないだろ?」
「誰が一緒でも怖いものは怖いよ」
それは確かにな。
「ほら、手を握るから。それに、せっかくのチケット無駄にしたらもったいないだろ?」
遥稀は渋々頷いた。グッジョブ、遥稀の友達。
ちなみに、クラスメイトは楽しそうという理由で1人で入るらしい。
遥稀はありえないものを見る目で見ていた。先ほどからめぐちゃん、と呼ばれていた女子からの視線が痛いが、気にしてはいけないのだと思う。
「遥稀、大丈夫か?」
「だいじょばない」
「ハルちゃん、無理しない方が...」
「蒼、絶対に置いてかないで。あと、何が出てきたとかの実況も禁止で」
「わ、わかった...」
遥稀が俺の手を力強く握ると同時に視線も強くなった。
入る前から震えているし無事ゴールできるだろうか。いや、いざとなったらおんぶでもすればいいか。
「次の方、どうぞ」
スタッフさんに案内されて中へ入る。
まずは、お化け屋敷の世界観についての説明と軽い注意事項などが話される。
所要時間は30分。そこそこ長いコースらしい。
「それでは、いってらっしゃーい」
黒く装飾されたエレベーターへと乗せられ、下降していく。まだ始まってもいないのに遥稀は怖いらしい。
「遥稀、まだ始まってないから、うおっ、」
エレベーターが止まり、ドアが開くタイミングでドアが叩かれた。
遥稀は小さく悲鳴を漏らし、首を振っている。
「ほら、置いてかないから、な?」
いつまでも留まっていられないのでどうにかコースへと歩みを進めた。
所々で小さく悲鳴を漏らしているものの、どうにか耐えているらしい。
「えっと、ここで写真を撮るんだっけ...」
最初の案内で説明されたフォトスポットまで来たわけだが。
「一瞬で終わるらしいから、な?」
「う、うん...」
ボタンを押すとシャッターと共にフラッシュまで光った。
それにもびっくりした遥稀は俺の腕にしがみついてきた。咄嗟の行動なのだろうけど、これは可愛い。ご褒美なのかもしれない。
写真にもその様子が撮られていて、これは宝物になりそうだ。




