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癒しの木  作者:
ふつうを求めた、オレの友達
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30

 この状況をどう回避するか必死に考えていると蒼が呑気に声を掛けてきた。


「要?入り口にいたら他のお客さんの迷惑だろ?」

「あ、蒼、今は別の所へ、」

「あれ?要じゃん。どうしたの?」


 タイミング悪く、遥稀がこちらへ気づいてしまった。それにならい、男子も近寄ってくる。


「お、お前、蒼と付き合ったばかりって、」

「あ、蒼だ。映画ってここの見に来てたの?」

「おう。要がどうしてもって言うから」

「あ、由愛ちゃんイベント参加で断られたんだ。かわいそうに」


 笑いながら遥稀は言ってのけた。良い性格をしてやがる。


「用事って、渉と?」

「そ。渉が涼音ちゃんの誕生日プレゼント選びたいから手伝ってくれって泣きついてきた」

「泣いてませんよ。捏造しないでください、先輩」


 オレを置いて会話は進んで行く。先輩、ということは遥稀の後輩か?確かに、見たことがある気がする。蒼も面識があるみたいだ。


「あ、要は学園祭の時に話してなかったっけ?この子は渉。部活の後輩。前に学園祭に遊びに来た時に見たことはあるよね?」

「あ、ああ…うん…」

「お久しぶりです。先輩にはお世話になっています。厳しいけど」


 思っていた関係ではないみたいだ。蒼は少し拗ねた表情をしているけど。

 結局、遥稀に店の紹介をしてもらいながら選ぶことになった。いかにも女の子が好きそうな店に渉を特攻させようとしたり、こいつ先輩として大丈夫なのかと思ったりもしたが、それでもいい関係を築けているらしい。


「渉は、何か目ぼしいものあったか?」

「あ、要さん。はい、一応決まりました」


 渉はお菓子とお茶の詰め合わせセットにしたらしい。オレはまだ決まらない。


「はあ、先輩と蒼さん、いい方向に転んでよかった」


 渉は、楽しそうに会話している蒼と遥稀を見て呟いた。


「遥稀が先輩だと何かと大変だろ?大丈夫か?」

「はは、確かに、厳しい時もあるけど、褒める時は手放しで褒めてくれるので嬉しいような、恥ずかしいような…」

「はぁ、後輩にはそんな感じかよ。オレは厳しいことしか言われてないけどな」

「ただ、先輩、僕たちのことは凄く褒めてくれるのに、自己肯定感が低いんですよね。そこは直してほしいです」

「遥稀が?あのバケモノ並みのメンタルを持ち合わせている遥稀が?」

「たまーに、そんな感じがするんですよね」


 蒼と楽しそうに話している様子からは想像ができない。


「でも、たぶん、大丈夫ですよね」

「うん?」

「先輩って普段は物凄くカッコいいのに、蒼さんといる時は可愛くなるんですよ」

 それは、何度か聞いたことがある。

「オレからしたら遥稀は阿保で変人で、そんでもって、世界一カッコいいやつだけどな」

「…要さん、変わってるって人に言われません?」

「オレが?」


 渉は少しおかしそうに笑っていた。


「先輩から聞く要さんって、先輩以上に変わった人なんですよ」

「あいつ、後輩にどんなこと吹き込みやがったんだ?」


 あ、蒼がへこんでる。遥稀は、ワクワク顔でハンドクリームをレジへ持って行ってる。


「先輩のああいうとこ、面白いですよね」

「…だな」


 蒼は遥稀に話しかけられるとすぐに機嫌を直していた。本当に単純なやつ。

 店の外ではまいが友達と買い物に来た様子が見えた。こちらを注意深く見ていたが、少し笑った後に移動するみたいだ。


「遥稀は、こういうの、好きそう」

「うん、このシリーズ集めてたんだよ」


 蒼と遥稀は楽しそうに会話をしている。

 その時に漏れ出た遥稀の笑顔は、まいの言っていた通り、本当にきれいだった。





 「癒木遥稀」やはりやつはオレが今まで出会ってきた人間の中で、最も不思議で、つかみどころがなくて、消えてしまいそうなのに存在感があって、蒼の前だと可愛くて、世界一カッコイイ、そんな変なやつだった。


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