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time/猫
あなたの纏う時間は
熱い缶コーヒー
ハンドル越しの街並み
手の甲に拵えた引っ掻き傷
新聞をばさばさと広げ
丁寧に捲る
私の纏う時間は
ピラミッド型のティーバッグ
ぺたんこのバレエシューズ
揺れる猫じゃらし
外れた文庫本の帯をつまんで
不器用につけ直す
やわらかなスカーフのように
各々の時を羽織って
同じ秒針に刻まれている
そんな無茶を聞き流して
どこまでも
一人と一人を
寄り添わせ温めている
その傍ら
軽やかな猫の
弧を描いたしなやかな背が
無造作にその領域を
飛び越えていく
2021/12/31 完結
お付き合いくださりありがとうございました。
良い年をお迎えください。
 




