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後朝
砂糖壺が空っぽになった時のような
寂しさ
儚い甘さの余韻だけが
朝の空気に漂っている
はだけたシャツから覗く
肩の寒々しさ
白い陽が
カーテンの下を潜り抜け
皺の寄ったシーツを淡く撫でる
耳たぶに引っかけたままの
ピアスが
聞いてきたすべての吐息を仕舞い込んで
ゆらゆらと揺れ
過ぎ去った夜は
ことごとく
夢のように思われ
あなたという人を
たちまち幻にする
薄張りのガラスのように
透明な熱が
私を入れ換え
空しささえ
晴れ晴れと澄みきっている
開いたままの
部屋のドアは
いつも出ていくためにあって
私も
静けさを突き破り
ここを後にするだろう




