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マーマンの暑い日々  作者: ベスタ
23/25

23 ポリフェル陥落

 テル達はポリフェル城についた。その外にエルエイル率いる薄い民の部隊がすでに待っており、合流してポリフェル城に進む。


 ずんずんと進んで行くタコスを先頭に城内に入ると警備の魚人達に呼び止められる。


「ここはコノワタ様のお城です! 軍なんかを入れていいと思っているのですか!?」

「ああ!?」


 メンチを切る支配者。もう完全にゴロツキであった。タコスはその警備に言って聞かせる。


「俺様も支配者だ。さらにいうとコノワタの1番魚人を倒してこの場所に来ている。止めるぐらいだったらコノワタのところに案内しろ!」

「あ、支配者様。えっ、ボンジモ様を!?」


 しどろもどろとなる警備を置いておいてそのままズカズカと進むタコス。そのまま同じようなことを何度か繰り返し、謁見の間に到着する。

 タコスはその謁見の間の扉を足で開けはなつ。


 バァンッ


「邪魔するぞ!」


 堂々と侵入すると奥にいるコノワタが大きくはねる。驚いたのだろう。それを少しだけ同情的な目で見るテルだった。


「な、なにやつだ!」

「俺様は覚えておいてやったのにつれないやつだな。かしこまった態度でまた会いましょうって言ってやっただろ? 今がその時だ!」


 タコスはズカズカと近づく。コノワタの周りにいたもの達はそそくさと離れていこうとした。それを見た一二三はすぐさま周りの魚人達に伝える。


「捕らえろ」

「ひぃぃぃ」

「わ、私たちは何もしておりません」


 捕らえられた魚人達は縛られて部屋の隅に追いやられる。テルには一二三のその処置がわからなかった。一二三は彼らに告げる。


「何もしていない。本当にそうなのか?」

「は、はい」

「本当に何もしておりません」


 その言葉を聞いて一二三は声を高くして告げた。


「ほう! この海域に敵の軍勢が迫っており、将軍率いるほとんどのものが戦って命を落としている国が危ない時だというのに、何もしなかったのか!」

「あ」

「そ、それは」


 何がいけなかったのか気づいたのだろうがもう遅い。一二三はティガに告げる。


「やれ!」


 ドドッ


「グエッ」

「ゴボッ」


 一二三の言葉に合わせすぐに処断される魚人達。あたりに血がただよい、血の臭いがきつく鼻につく。その臭いに顔をしかめそうになるが、テルはなんとか表情に出さずに済んだ。


「コノワタ。こんなゴミをそばに置いておくと現実が見えなくなるぞ」

「くうっ」


 悔しそうな呻きをあげるコノワタに反抗できない様子を見たのだろう。タコスはくるりと後ろを見るとテルに聞いて来た。


「テル。こいつはどうした方がいい?」

「はい?」


 毎度毎度思うのだが、タコスはなぜテルに決定権を委ねるのだろう。

 テルとしては思ったより往生際のいいコノワタに、逆に不審な様子を感じ取る。時代劇の悪役などは最後の最後は「おのれこうなれば」と怒り出すのがおきまりのパターンだ。

 まあ、ここまで兵士に取り囲まれて、どうしようもないのだろうが。


「ううーん。どうしましょうかね」


 そう言って近づいたテルはコノワタが玉座の後ろに手をやっているのが見えた。大体が良くないことをしようとしているのだろう。その動きが見つかったと、コノワタも思ったのだろう。椅子の後ろから大きな湾曲した剣を取り出した。


「このガキが! 死ねいっ!!」

「危ないっ!」


 テルはとっさにタコスを引きずり倒す。


 シュッ


 剣が頬にかすめたが、なんとかタコスが殺されずにすんだ。タコスは少しの間頬に手を当てていたが、現状を理解したの顔の表情が消える。


「それがお前の返答か」

「黙れガキが。お前さえ殺せばこの場所に支配者は私1人。お前達の軍などどうとでもなるわ」


 それがコノワタの狙いだったのだろう。暴論に聞こえるが実は一理ある。魚人だけではきっとこのポリフェル城は降伏しないだろうし支配もされないだろう。それほどに支配者というのは大きいのである。


 タコスは指示を出す。


「殺せ」

「支配者の一族である青い血の流れるこの私が、下賎な赤い血の貴様らに殺せると思うか!!」


 コノワタは剣を振りかざしタコスに一直線に走って来ていた。その横からティガがコノワタの顔面をなぐりとばす。


 バキィ!!


「おぼら!」


 綺麗に吹っ飛んでいくコノワタ。しかし、タフなのかすぐに起き上がる。


「この下賎な魚人め! 青い血の私に手を上げたこと後悔させてやる!」


 そう言って剣を振り回すコノワタ。振り回す剣はなかなかのスピードであり、当たれば切れそうな威力をともなっていた。水の抵抗が強い中で槍の突きではなく、剣の切りでこれほど振れるのだ。力はかなりあるのだろう。


 シュンシュンシュン


 剣が通るたびに不気味な音を立てる。近づこうにも素手のティガでは部が悪い。スキをつこうとしているがなかなか、どうして、付け入るスキを作らない。


 そこでテルが突撃する。

 元々テルのヤリは防御重視である。一撃の剣撃で切れる槍ではない。当然のごとく剣がテルに振られるが、それを槍で防ぐだけであれば難しくはない。


 カッ


 防いだはしから角度を変えて次の斬撃が襲ってくる。素早くなんども槍の柄で防ぐテル。その何度も防ぐ間、周囲を取り囲む魚人達。焦りからかコノワタの顔に辛そうな表情が踊る。


 カッカッカッコッコッ


 リズムが刻まれるなか、ついに1人の魚人がスキをついて飛びついた。


「ぐっ、なんて怪力だ」

「同じ海域にいて初めましてですな。支配者様」


 コノワタの動きを封じたのは薄い民の魚人、エルエイルであった。恵まれたその体とパワーを持って後ろからコノワタの持っている剣を、コノワタの手ごと握っているのである。コノワタは同じ海域と聞いてふと閃くものがあったのだろう。


「カララトの民であるのならばちょうど良い。私に手を貸せ。今はタコスの小僧についていることも不問とする」

「残念ですが」


 エルエイルは首をゆっくりと横に振った。


「貴方様からもっと早くそう言った言葉を聞ければよかったのですがな」

「な……」


 バンッ


 破裂するような音とともに何か言おうとしたコノワタの言葉が中断させられる。エルエイルはコノワタの右手を持ったまま電撃を流したのだろう。剣を取り落としたコノワタの腹に、すかさず槍を突き刺すテル。


「ぐっ」


 しぶとく残った左手で剣を拾いテルに反撃しようとするコノワタを、ティガが思いっきりぶん殴る。その反動で再び玉座付近まで吹き飛ばされるコノワタ。それでも意識は残っており、こちらを睨んでくるのを忘れない。


「わ、私は、青き血の一族。支配者の一族なんだぞ。赤き血の貴様らに…」

「殺されるんだよ。ティガ、殺れ」


 タコスの言葉にティガが思い切り振りかぶって顔面を殴るつける。


 グジュ


 気持ちの悪い音がしてコノワタの動きが完全に止まる。コノワタの近くには、コノワタが流していたであろう青い血があたりを漂っていた。

 タコスは大きくため息をつくと立ち上がる。テルはそのタコスの頬にある切り傷から青い血が流れているのを見た。本当に血の色が違っているのだと感じるのと、生物として支配者と魚人の根本が違っているのを実感し、すこしやるせない気持ちになったテルだった。


 それに気づいたタコスは堂々とコノワタの死体を退けて玉座に座る。


「この程度のことで気にするな。俺様は俺様。お前らはお前ら。そこに今までと同じように違いはない、これからもだ」

「そう言われればそうだな」


 テルは割り切った。

 そもそもタコスが魚人ではないのは知っていたことだ。支配者でなければジンカすらしてもらえなかったのだ。そう考えるとテルは感謝すらできるような気がしていた。

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