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マーマンの暑い日々  作者: ベスタ
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18 コノワタという男

 アーラウトの支配者、タコスがポリフェルに潜入しているという状況からすでに半月ほどがたっていた。おそらくタコスはもうこのポリフェルにはいないのだろう。

 コノワタは安堵の吐息をついた。


 随分と昔、コノワタはカララトを通りアーラウト海に向かうタコスと会ったことがある。

 その時は随分と小さな子供であり、支配者としてのコノワタは別段恐怖に感じることはなかった。会話をしても普通の子供のようなものだった。

 しかし、その目だ。

 最後の挨拶の時、金色の目を見た時、コノワタは戦慄した。


 そして、タコスはその瞳をゆっくりと横に裂き、にっこりと笑って言ったのだ。


『コノワタ殿。ではまた、後ほど会うこともあるでしょう』


 普通に見れば、特段変わった挨拶でもなかっただろう。それは近所づきあいをする以上、顔を見せるのは当たり前のことだからだ。

 しかし、コノワタにとってはとても恐ろしいものに見えた。

 真意は結局わからなかったものの、スイカがアーラウト海域の支配者になったと聞いた時はどこか安心したものだった。


 しかし、アーラウト海をタコスが支配したという報告があって、コノワタは昔の恐怖を思い出した。

 恐怖におののくコノワタを助けてくれたのは1番魚人のボンジモだった。

 ボンジモはポリフェル城にいる兵力のみで、見事タコス率いる軍勢を倒してみせたのだ。

 その時のコノワタはとても嬉しくて、ボンジモが戻り次第、戦勝祝いを行なったくらいであった。


 その時にいたのだ。

 あの赤髪の小僧が、金色の瞳をランランと輝かせて。

 緊張のあまり、コノワタは内臓を吐き出してしまった。悪い癖だった。緊張しすぎるとコノワタは内臓を吐き出してしまうのだ。

 周りは騒然として結局、タコスたちは取り逃がしてしまう。

 ここ半月ほどはコノワタは眠れない日々を送っていた。タコスを捕らえたという報告を聞くまでは眠れないだろうと思ってもいた。


 そんな時である。タコスを捜索している部隊から、タコス率いる軍勢が再び現れたという報告を聞いたのは。


「ボンジモ! ボンジモはいるか!!?」

「「「「「「はい、こちらに」」」」」」


 ボンジモ将軍たちが現れる。コノワタは慌てるように言った。


「急いで迎撃に迎え! 今度は逃さず倒すのだ!!」

「「「「「「承知しました」」」」」」


 ボンジモは意気揚々と戦の準備のために退室していった。

 コノワタはそれでも不安で体が震えていた。


「コノワタ様。ボンジモ様は先ほどの戦いでも勝利を収めた歴戦の勇士。今度もきっと勝つことができるでしょう」

「今度こそ奴らを血祭りにするでしょうな」

「そ、そうか。お主らがそういうのならそうなのだろうな」


 コノワタは周りにいる部下たちの言葉に安堵した。

 確かにそうなのだ。ボンジモは以前勝っている。おそらく今度もきっと勝てるだろう。

 そう確信すると先程までの不安が急速に消えていくのを感じた。逆にもう勝ったような気持ちすら込み上げてくる。ふふん、と笑うとコノワタは勝った後の世界を想像する。


「この戦いで勝てば、我らは戦う機会の少ない今の世の中で、唯一の戦争に勝った経験のある国となるであろう。そうなればサイガンドの戦闘狂のオームや何を考えているのか分からんタロスのビゼンに怯えることもなくなる。


 カララトの支配は盤石なものになり、安心できるというものだ。」


 コノワタはまだ見ぬ世界を夢見て心が踊るような気持ちであった。

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