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マーマンの暑い日々  作者: ベスタ
12/25

12 大悪魔の口

 タコスはジンカしたい淡水魚達を一同に集めるとまとめてジンカの業を施した。

 その神秘的な姿に最初は驚いたりしていたのだが。


「ここ数日、何回もピカピカ光ってたらな」

「神秘の業のバーゲンセールッスね」


 ノエですらちょっと苦笑しながら言っていた。なにせここらにいる淡水魚の全てが今のうちにとばかりにタコスのいる場所に集まってきているのだ。

 時間差で来るもの、まとめて来るもの。それぞれの事情を勘案して、ある程度まとめてジンカしているのだった。


 その間、テルは薄い民達と一緒に色々な話し合いをしていた。それは魚人となった後にどうしていくのか、だった。

 魚と魚人では色々違う。だから、その説明を行っていたのだ。衣食住、その全てが変わるのだから戸惑うのも無理はない。


 見返りとしてここらの情報を教えてもらっていた。

 最初に聞いたのは木の加工方法について。

 これは残念なことにここらはたまたま木が倒れてきて、それが沈んでいるのを椅子に利用しているだけであって、加工して椅子のようにしているわけではないとのことだった。



 次に聞いたのは、ここはどんなところなのかと言うことだった。

 上から海の力の弱い水が流れてきており、その力を溜めてだんだんと海の力が強くなっていくという。

 その説明から、テルはここは河であるだろうと予想をつけた。


 川の石は流されるうちに角が取れて丸みを帯びる。陸から砂と粘度が運ばれて蓄積する。テルとエルエイルがあった場所は河口の条件を満たしていた。

 テルも流石に忘れかけていたが、思い返してみればすごく昔になんか小学生くらいに習ったような記憶があるような無いような。

 さんかくす、とか。



 最後に聞いたのは、抜け道について。

 おそらくカララトの軍はテル達を探しているのだろう。このまま一二三達と合流することは危険だと思えた。

 そのために、一二三達のいる方へ行くための抜道か何かがないかと聞いていたのだが。


「聞いたことがないですね」

「そうか」


 そんなにうまい話はなかった。

 エルエイルの話ではここはどちらかというとサイガンドやタロスに近いのだという。そんなところからアーラウトにいく抜け道があれば大変なことである。

 ガックリとしたテルに、たまたま近くを通ったカッターが答える


「抜け道とは違いますが、大悪魔の口、と呼ばれるものがあるのは聞いてます。カララトの魚人達によると近づくと体調が悪くなるとか、見たことないものがいたとか」

「そうなのか?」

「はい。そこは崖のようになっており底も見えないとか。そんな大悪魔の口ですが、ポリフェルから少し離れたところからアーラウト方面へと崖は続いているそうです」

「ふむ」


 テルは考える。

 つい少し前に淡水と海水の話が出たのだ。頭がかなり現代日本の知識を思いだし易くなっていた。テルの頭で地球儀がクルクルと回る。

 そんな時日本の近くで深い崖のようなものが海に眠っているのを思い出した。


(海溝……なのか?)


 海溝というのはまさしく海の崖。深海魚とかそういうのが住むほど深い深い崖である。

 地球がプレートでできていて、とかプレート移動説とかそういうのはわからなくても、テルにも子供の頃興味を持ったものはある。


 日本一高い山は富士山。日本一広い湖は琵琶湖。世界一高いのはエベレスト。じゃあ、世界一深い場所は?

 チャレンジャー海淵である。


 そういった、海には深い亀裂が走っているのだということは知っているのだ。そこは陽の光が海底に反射しないため暗く、そして冷たい。潜っていけば普段は見かけない深海魚もいるだろう。


 それらを合わせると、たしかに大悪魔の口は海溝であるように思えた。

 となると、


「苦内、いるか?」

「はい、ここに」


 音もなく現れた苦内に、驚くカッターとエルエイル。しかし、テルはひとまず説明は後にして苦内に伝えた。


「調べて欲しいことがある。その大悪魔の口について、ここからの位置と、カララト、一二三のキャンプの位置をざっとでいいから調べて見てくれないか」

「わかりました。時間を少しもらいますが」

「大丈夫だ。こっちもすぐには終わらない」


 そう言いながらテルはタコスを見る。タコスはいまだに尽きないジンカ待ちの魚を相手にしていた。後数日はかかるだろう。

 その視線の先を辿った苦内は苦笑して頷く。


「わかりました」

「頼むぞ」


 そういうとテルの言葉を聞いたか聞かずかフッと闇の中に溶けていった。

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