五話 遠矢、三人と合流する
少し遅れました。<(_ _)>
その代わりと云ってはなんですがいつもより少しだけ長いです。
名神高速高架下から大学までの道沿いに、小中高を併せて五校ある。
少し離れた所も入れるともう少し増える。
その住宅密集地を走り抜けるのは神経を使う。
どこかの学校は避難所に指定されているだろうし、
人口密集地には奴等も多数潜んでいるだろう。
慎重に車を走らす。一番音が出ない速度で。
それでも所々でゾンビが出てくる。
車に影響が出ない程度で引っ掛ける様に跳ね飛ばす。
ここで一緒に車のゲームをしていた伯父の言葉が頭に流れる。
「車で人を轢くときは正面から跳ね飛ばすな。
フロントガラスに跳んできて視界が奪われるからな。」
「子供に何を教えているのよぉぉぉ~!!!」
母が絶叫しながら部屋に入ってきたっけ…
いや、マジでおじちゃん、子供に何教えてるんだよ!?
あの時は、
「人なんて撥ねないよ~」
と、笑いながら返事した記憶があるが…
今役立っているのが何とも言えない…
何とか無事に住宅街を抜け車を走らせていると、
ポンポン山と釈迦岳が見えて来た。
この景色も見納めか…
ゾンビを撥ねながら感慨に耽る。
俺もチョットおかしくなってきてるな。
大学の敷地に入る道にハンドルを切り府道6号から道を外れる。
門が見えて来た所で速度を落とし慎重に車を進める。
どうやら門が閉まってたりバリケードがある様子はないな。
門を通りサークル棟に向かう。
途中で轢き易い数体のゾンビを撥ねる。
車内時計を見ると最後の連絡から十五分が過ぎたところだ。
サークル棟玄関前が見える道に曲がると、
サークル棟玄関付近に五体程ゾンビがいた。
クラクションを鳴らしこっちにヘイトを集める。
案の定、こっちに向かってよたよた歩いて来る。
玄関付近から離れたのを確認して跳ね飛ばし始末をしつつ玄関前に車を横付けする。
車を玄関脇に停めると待ってた様なタイミングで三人の女性が飛び出して来た。
素早く車のロックを外す。
三人はバラバラにドアを開け車に乗り込んだ。
完全にドアを閉めたのを確認してから車を出す。
「皆、怪我はないか?後ろ座席にあるバッグの中に軽い食べ物あるから食べていいよ。」
「ありがとトウヤ♪誰も怪我はないよ。」「皇君ありがとう。」「ありがたく貰う皇。」
山鳥愛唯、海島加代、川田恵美の順番で礼を言ってくる。
「いや、こっちも手が欲しかったんだ。
せっかく助けに行くのに腹減って動けなくなったら困る。」
俺は慎重に車を走らせ府道に出て、来た道を戻る。
「メイ。本体を一つ組んで矢を十本ばかり用意してくれ。ああ、食った後でいい。
このまま帰らないで帰り道にあるドラッグストアで物資を補給したい。
食料を優先で缶詰、レトルト、乾麺、カップ麺、塩、味噌、調味料、
飲み物、薬、生活消耗品の優先順位で頼む。
しかし絶対守れの順位じゃないからな?やばいと思ったらすぐに撤退する。
あと自分が欲しい物あったらそれも確保してくれ。
全部自分の物だけの確保は止めてくれれば強制はしない。」
「うん、誰が何を集めるか決めとかない?」
「じゃあうちが重い缶詰やレトルト、飲料を集める。」
「あたしは恵美のサポートしながらで乾麺や調味料、カップ麺で良い?」
メイ、川田さん、海島さんが順番に意見を言う。
「私は薬関係を優先するね。」
「俺は車周辺を警戒しながら集めてくれた物資を車に積み込む。
皆、バッグにヘッドライトもあるからそれを付けるのも忘れるなよ。
店の中に入って五体以上いた場合はすぐに逃げる。良いな?」
「うん。」「はい。」「分かった。」
メイ、海島さん、川田さんが返事する。
「今から住宅密集地に入る。人が居ても見捨てるから覚悟をしといてくれ。」
「えっ?なんで?」
メイが驚き聞いて来る。
「先ず助けても一緒に連れて行けないし車にも乗せたくない。
乗せる分の物資を諦めたくないのと、俺の家では四人以上は無理だ。
助けたいと云うなら俺は邪魔までしないけど、車に乗せないし俺は一人でも逃げる。
今回助けに来たのは手が欲しかったのもあるけど、同じ大学の友人だからだ。見知らぬ信用もない他人を助けるのは無理だし家にも入れたくない。無論俺の意見を押し付けるつもりはないけど、いやならそこで別れる事になると思って。」
「うん。皇が生き残ってた理由が分かった。うちは皇に従うよ。うちらもサークル棟で閉じこもってたとき、襲われているのを放置して見殺しにしたしな…」
「…ごめん。そこまで考えがなかった。」
「あたしは何も出来ないし助けてくれた皇君の足手纏いになる事は、
出来るだけしないようにする。」
「みんなすまない。拠点が広く安全な場所なら勿論助けたいが、今はマジで無理。」
俺のセリフを最後に車内に微妙な空気が流れたが、
俺がゾンビを跳ね飛ばすと川田さんが感心した声で話しかけて来た。
「皇。よくそんなにポンポン跳ね飛ばして車が無事だな。」
「川田さんも免許もってるんだよね?だったら分かると思うけど正面に当てて撥ねている訳じゃないからね。角に引っ掛ける様にして正面に飛んで来ない様にしているんだ。あとは車が大きいのもあるね。」
「ふ~ん。うちにもできるかな?」
「して貰うつもりだよ。
川田さんだけじゃなくメイや海島さんにも車を運転できるようになってもらいたいし。」
「ふえっ!?」
「えっ!?わたしも!?」
海島さんが変な声を出し、メイも驚いて声を上げる。
「うん。俺は単独行動する事が多くなるだろうし、
俺に何かあった時に君達だけでも過ごしていけるだけの行動はできる様に教えるよ。」
「そんな事言わないでよ!」
「皇。単独行動なんてさせないぞ。」
「皇君、変な事言わないで…」
「いや、今すぐって訳じゃないからね?少なくとも皆がある程度一人でも生きていける様になるまでは俺も単独行動なんてしないよ。状況によってはするかもだけど。
さっきの話に戻るけどね、皆が俺なみに動いたり車乗れたりするなら俺も助けたり人を増やすのに躊躇しない。しかし俺に何かあれば君達のこの先の保証がない。最悪助けた人に俺が殺される事も計算に入ってる。特に男性を助けた場合、君達の身体目当てで邪魔な俺を排除するために。嫌な話だけど覚えていてね。」
俺の話を聞いて三者三葉の表情を見せる。
メイは難しい顔をしてうんうん唸っている。
川田さんは笑みを浮かべ俺を見ている。
海島さんは自分の身体を抱いて青い顔をしている。
俺は順調に車を走らし偶に歩いているゾンビを撥ねつつ安全に運転を続ける。
松ヶ丘から安岡寺に差し掛かろうとしたとき海島さんがおずおずと声を掛けてきた。
「あの皇君。そこにスーパーがあるのだけど…」
「うん、ありがとう。でも場所が悪いので寄れない。」
「理由を教えて?」
と、川田さん。
「人数居れば駐車場を封鎖して安全に店内探索できるけどこの人数じゃ出来ないし、店の位置が奥すぎるんだ。その上周りは住宅が密集しているので店内探索している間に百体ぐらいにすぐ集まってきそうなんだ。唯の想像だけどね。でも海島さん。そんな情報はどんどん発言してね。ついでに言うと俺の目的の店は浦堂のドラッグストアだ。あと少しで着くので皆、準備と覚悟してくれ。」
「あそこか!」
「あの店なら最近も行ったしどこに何があるか分かってる。」
「うん。三人でも行ったよね。」
「へ~それなら時間短縮で危険は少なく済みそうだな。」
俺は無理してでも三人を助けに行った事に意味を見出した。
次の予定は裏が十五日前後と告知していますので何とかしますが、
表のこっちは未定にしときます。(>_<)
チートも月末までに出来るか判らないので。