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部屋選びミスった。幽霊いるじゃん  作者: 時流話説
サイドストーリー
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64/66

テツ&アマ その13

図書館から離れて、自転車を漕いだ。

どこをどう走ったのかは、覚えている。

走ったことのない、アマにも、誰にも予想のつかないルートを選んだことだけは覚えている。

そして、そのあとに、そいつはいた。


クズ野郎と一対一。

どうしてそうなったのか、という途中の流れ自体は、思い出せない。

しかしいつかは起こることだった、ということはなんとなくわかっていた。

場所はどこだっていいた、部活でも教室でも―――。

俺はこうなることを知っていたのかもしれない。


やつは言いがかりをつけてきた、いつものように。

「お前なんなんだよ、俺の家なんてどうでもいいだろ!」

シカトもできたが、言い分を聞いてやることにした。

今後の人生のためだ。

「………うそつき」

「何がだ………」


「うそ、うそ、うそだ」

そいつは言う。

人の見た目をどうこう言っても始まらないが、ひどい目だった、それは間違いない。


「全部知ってるぜ、テツよぉ、お前が嘘つきだってこと。お前ん家だってもう終わってるくせに、人生面白いことばっかじゃないってわかってるくせに、お前が一番全部わかってるくせに、人を笑わせている」


その後も―――、同じような、ことを、言い続ける。

結局のところ、だから何だということだ。

「………何が、悪いんだ、それが」

ニヤニヤする、クズ。

………まてよ?


お前ん家も、だと?

俺は視線を切った。踵を返す。


「シカトかよ、オイ!」

「ああ、そうさ」

「本当に逃げるの上手いな、お前!」

ぎゃんぎゃん吠える犬。

これも最後かと思うと―――少し、心に引っかかるものもあるが。


「………逃げるどころじゃねえんだよ、いなくなるんだ」


そう言ったら、奴が怪訝な顔をした―――のかもしれない。

背中側にいるからわからなかった、だが狼狽えたか、静かになったので少し嬉しかった。

いや、安心した。

俺はシカトするんじゃねえ、教室から、マジでいなくなるんだぜ、これから。

笑っちまうだろ。

俺だって何でこんなことになってんだか。

あいつも不幸だ。

この話は―――不幸比べだったらしいと、俺は悟って、終わりにした。

といえば格好はいいだろうが、上手い返しが思いつかなかった。

下手にこいつを挑発し傷つければ後味が悪い。

俺が綺麗に―――少なくともクラスメイトの前では綺麗に、引っ越すのに、必要。

必要な無視。


「シカトどころじゃねえ、いなくなるんだよ―――」


それは、ゆっくりとトーンが下がる………自分でも驚くくらい、そう、大人びた声色だった。







そのあとは、家で、皿をぶち壊した。


「くっ、くそがぁ!」


鋭い音は。

初めて聞く音ではないから、それほど驚きもなかった。

まあ心情では―――。

まだ大丈夫だ。

誰かを殴るよりはましだ。

まだマシだ、と言い聞かせる自分がいた


思えば、アマの言うことには何にも、怒る要素はなかった。

あれは勉強方法としては正論なのだろう。

だが、俺は限界だったのだ。

家の中のことも、そうだったし。


「お前にはわかんねえ!わかってねえ!わかんねえだろ!どんだけ勉強しようが、この中学を一緒に卒業することすらできねえんだよ、俺はぁ!」


アマ。

あの男の―――あの笑顔。

つまんねえことで悩んでんじゃねえよって、言う。

それは世間でよく推奨されている、笑顔で、前向きに生きるということ。

正解だった。

今の自分には絶対にできない表情だった。

殴られるより、きっと、痛かった。


「この中学を、くっそ、こんな普通のこともできなくて悪かったな!」


皿は割れるが、飛び散る陶器の音が、俺の頭の中よりも、でも、まだ静かだった。

ああ、俺は自分が不幸だってことを知っていたさ。

でも。


「お前が――――そういうことを言わなければ、俺は静かに、いなくなることができたんだ」


こんなにいらいらしなくて済んだんだ。

もっとスマートに行けたんだ。

アマ。

俺は不幸だが、不幸だと知っているが。

プライドはある。

お前らの邪魔をするつもりはなかったんだ。

俺だってやることやってるんだ。


「お前がなぁ、くそ、俺だって。本当は―――」


俺だって、本当は………!

本当にやりたいことは---!


そう、俺は、自分の気持ちを、知った。

突きつけられた。


だが、それでもやることは―――変わらない、変われないはずだった。

転校は、俺みたいな男子中学生が騒いだところで、変わらない。

俺は被害者を気取りながらも、黙々と、次の準備をしていた。

黙々と、クラスメイトを裏切る準備―――仕方がなかった。



アマ。

言い返せなかった。

会話が長引けば「面白い話」からは遠ざかることが明白だった。

だが………お前は結局のところ、人生のことをわかっていない。

人生に終わりがあるってことを、わかっていないから、そんな笑顔が作れる。

お前の目は子供みたいに綺麗で、残酷だ。

強烈な光を、体中に浴びているような気分になる。

それに反撃すれば、俺は悪者だ。

酷すぎる。




楽しいことばかりじゃねえ。

お前、幸せそうだけれど、そんなの嘘っぱちだ。

楽しいことなんて、ねえ。

教室、みんな幸せそう。

俺も、笑っているけれど。

空気を壊さないために。

それが『良いこと』だから。

でも楽しいことなんて、本当はない。

楽しくない。


俺の婆ちゃんは死んだ。

死んだし、大切な人が死んで、いなくなってから、おかしくなる人間はいる。

居場所が変わることもある。

俺が楽しそうに見えたか?

アマ。

お前が、まだ知らないだけなんだ。


確かに俺は、お前に劣っている人間かもしれない。

だが、お前は無知だぜ。

笑えるくらい。

いつか気づくだろう、お前も。


人生はお前の都合で決まらない。

お前の思い通りにはいかない。

俺の思い通りにも―――いかなかった。

………そもそも、俺の人生だ。

お前は関係ない。

お前は―――俺と偶然同じクラスになっただけだ。

いただけだ。


お前の笑顔、まだ何にも、『人の死』を知らない笑顔。

俺には宇宙人のように思えた。










俺が皿を割ったことは、じいちゃんも、見ていた。

知っていた―――はずだったが何も言われなかった。

何も感じなかったのか?



母親はそれも、いつもの通りだと感じ、片付けた。

次の日、じいちゃんがいなくなった。


探せ、と親父は帰ってきてから言った。

俺と弟は動けない。

しぶしぶ―――ではなく、純粋にどう探せばいいのかわからない、という想いで、足が動かなかった。

そもそも、一人になりたいときくらいあるのではないか―――。

そっとしてあげればいい。



親父は冷たい目で睨むが―――。

親父の態度にも、言いたいことはあった。

そもそも。

あんたが引っ越しの伝え方ををミスしたから、じいちゃんはこんなことになっているんだ。

強引なんだよ。

誰から負の連鎖が始まったか、わからないのかよ。


と、言っても口の悪さは俺も同じ---親から譲り受けてしまったものらしく。

だから何も言えない。

まあとにかく、俺がここで何かを言えば、親父と祖父の喧嘩が、親父と祖父と息子の喧嘩になるだけだということは、わかってきた。


友達の家、知り合いを当たろう、と思って親父にそれを聞いた。

そこで、ふと気づく。

友達と別れるのは、俺だけではない。

じいちゃんも、一緒なのか、と。

だが気づいただけで、深く考える余裕はない。




俺、そんなに悪いことしたのかな。

そんなに俺………俺は無能なのか。

それとも、人生って本当はこんなのなのかな。

これが、大人に近づくということなのか?

大人になれば―――俺は、だんだん強くなれるものだと、思っていた。

信じていた。

しかし、そうではない、今回は。


そんな想いで、俺はじいちゃんに追い付いた。


俺が探し当てたのは―――見つけたのが俺で良かった。

親父だったらまた怒鳴り声を張り上げるだけだ。









「じじい、いい加減にしろ」


………騒ぐことでもないだろう、歩いただけじゃ


「みんな心配してる」


と、言ってはみたもののあきれ果てているというか。


「―――じいちゃん、さ。やかんに火を点けっぱなしにして、忘れてるよね。俺知ってるぜ」


………。


「料理なんてしなかったくせに」


………。


「昔、料理をしてたのは、一番していたのは婆ちゃんの、ほうだったよな」


………テツ、儂は、人の気持ちがわからん。


「………」


………でも、いなくなってから―――やはり、忘れたくないんじゃ、考え直したいんじゃ。結局わからんがな、あいつが何を想っていたか---。


感傷があった。


俺の家の関係は、険悪だ。

だが、血も涙もないわけではなかった。

最悪な家庭ではない―――と、少なくとも俺は、心の底から思っていた。

人の心は持っている。

そういう家だと―――思っていた。


人の心があり。

だから悲しみがあり。

じいちゃんが………悲しみを背負っているのなら、俺も背負った。

家族が抱えている問題は、俺だって、いくらでも抱える覚悟があった。


俺の家庭を知れば、馬鹿にする人間も、それはいるかもしれないが。

憐れむ人が多いだろう。

でも。

ただの暴力ではなかった。

血も涙もないのはむしろアマじゃないか、人の家のことを知らずにあんなことを言って。


「………じいちゃんが最初に、親父と喧嘩したとき、俺は自分の部屋にいて、聞き耳を立てていた」


じいちゃんが顔を上げる。


「引っ越しをつぶせ、と思っている自分も、いた」


いいぞじいちゃん、もっと言ってやれ、そう、思う自分がいた。

勝手に物事を進める親父が嫌だった。

最初は―――こんなことを突然決められても、どうすればいいかわからなかった。


「やっぱり、考えなきゃならないことが多すぎて―――ただ」


ただ、死んだ婆ちゃんは、今のこの家を見たとしても。

家族を見たとしても。

喜んではいないと思うよ、今のざまでは―――と、あるいはいえばよかったのかもしれない。


ああ、そうじゃーーーだけど、この家を捨てていくなんて。死んだモンだと思って、簡単にきめやがった―――ふざけとる。


「引っ越しが―――不安なのは俺もだよ―――でもじいちゃん」


テツ、これは口出しすんな、お前は家庭(ウチ)ん中で一番わかいんだろうが。


「そういわれても、小学生の弟だっているんだがな」


………やめないと、いけないか。引っ越すのか。




じいちゃんは、本当の意味での認知症などではなかった。

ああ、そうさ。

病気よりも、もっとひどい。

単なる、情けない人間だった。

普通の人だった。

人を愛そうとして、上手く愛せないだけの―――普通の人だった。



「じいちゃん―――婆ちゃんは死んだんだよ」


何も知らない奴が言ったのではない、家族が、家族に言ったのだ。


じいちゃんは、それほど(こた)えたようには見えなかったが、視線を下げる。


儂は………わかっとる。

無駄じゃ、儂のやっていることは。

意味もわからない―――だけど―――だけど。


じゃあ、―――、どうなるんじゃ


俺は、少し、考えて………頷けない自分に気付く。

どうなるか?

どうなるかって。


「ど、どうって―――ひ、引っ越し先で、だから―――なにか」


じいちゃんの目に吸い込まれそうだった。

期待の光のようなものがない。

それはいうなれば、つまらないものを見る目ではないのだろうか。

何故か、冷や汗が出た。


俺は。

引っ越しがしたかったのかもしてないが、いやだったという気持ちもある。

いや、親父の言うことに従うのが嫌だったのだろうか。

親の何かに従うというのが、子ども扱いされているみたいでいやだった。

駄々をこねているだけ、なのだろうか。



何がしたかったんだ俺は?

引っ越しがしたかったのか、したくなかったのか?

何が望みなんだ。

もう、だいぶ前から、わからない。


苦手だと感づいていた文化祭に集中しようとしたり、色々と、もがいた。

そう、何故俺は、慣れないことだとわかりながらも―――やめなかったのか。

俺にとって苦手で、谷瑞の足を引っ張りつつあると気づきながらも………。


それは、より嫌な事実をわすれるためでは、ないのか。

何かに打ち込んで、忘れようとした。


文化祭を、成功させる気が俺にあったのだろうか。

………自信がない。

そもそもやりたかったのだろうか。

滝川たちの煙草の件を、やめろ、と言ったのは―――あれは、本当に、滝川たちのことを想ってのことだったのか?

教室の治安を守りたかったのか?

心の底から、やりたかったことなのか?

そんなわけがない。

俺はそんなことのために生まれてきていない。

一番やりたかったことではない。

俺は―――何か重要なことを、忘れられる時間を増やしたかったのでは、ないのか。



多くが上手くいかず―――アマとも喧嘩して、結局、結果は変わらない。

俺は努力をして―――努力に似た、しかし偽物の、何かをして―――残ったものは、何もない。


「そして―――」


引っ越し先、どんな奴らがいるかもわからない、どんな奴らがいるかもわからない場所に、今から入って。

学校………教室だけではない、部活もそうだ。

中学二年生の終わりに、違う部活に入ったりすることに必要とされる勇気………それまで、考えたこともなかったが、急に息苦しくなってきた。

そして、それで、何が手に入る。

俺は、それでも何かが見つかる気はしていたが、言葉で説明できなかった。

前向きに生きる―――と言っても何をすればいいか。

前向きに流されるだけだ―――自分で決めた未来ではない。

俺は強くなっていない。


「と、………」


どうなるんじゃ、テツ。


「とにかく―――やるんだよ、わからないけど」


じいちゃんは、少し目を細めるだけ。

あきらめた。

突然の引っ越しのことを、あきらめたし。

俺から素晴らしい案が出るのを、かもしれない。


儂は―――ここまでされるようなことをしたか

一人じゃ………。


爺ちゃんが呟く。

何がだ、と思った。

何をいまさら。

俺だって一人だよ。



家に帰ると、谷瑞から電話が来た。

このタイミングだ、俺の家庭のことかと身構えたが、そうではないようだ。

委員会のことだった。

単なる、普通のミーティングだ。

実行委員長の俺と話すようにとのことだったが、俺は---。


「アマに任せる」


と、言った。

視線を落とし、あきらめるように。

思いのほか、はっきりとした声が出た。

子供のころには絶対に言わなかったような、しかし、現実を知った―――人生を知った俺の、言葉だった。


やれる自信がなかったのは―――嘘偽りない、真実だった。

いや―――そもそも、文化祭のことに興味を持てなくなった。

何故だろう。

文化祭は二の次だと、感じた。

もっと大切なものがあった。


「アイデアは、話したし………文化祭については、今何をやっているか、アマは―――あいつだってよくわかっているはずだ」


谷瑞は困惑し、俺を説得しようとした、してくれたのだが―――もういい。

疲れた、というよりも、みんなの前でいつものテツでいる自信がなくなった。

面白いテツでいる自信が、無かったのだ。

次の日から、学校に登校したが、俺はもう何もしなかった。

誰の邪魔にもならないように―――ただ、尽くした。



それからも、警察に捕まったことなど、あったが―――夜に歩くことくらい勝手だろう、と思った。

別に今更、何も感じなかった。


それがあろうとなかろうと、俺は幸せになれなかったように思う。

誰かを幸せにすることも、できなかったと思う。

学校に行くのをやめた。

家のことは嫌いだったが、それはもちろんだが、今の自分をアマに見られるのが嫌だった。

それが一番大切だった。

中学生の頃の俺は、そう、心の底から思っていた。

アマだけじゃない―――クラスのみんなに、迷惑までかける気にはならなかった。

学校に行かないのは、手っ取り早い方法だった。



この頃は―――じいちゃんを、そして親父のことを考えた。

じいちゃんは、大切な人を失い、そして住み慣れた土地からも離れる―――単なる被害者だと思った。

認知症だ―――と、言って擁護した。

真実は―――実際、あの人にそういう症状はあった。

だがそれ以上に、単なる弱い人だ。

あんな可哀想な、弱い人を―――これ以上責めることはできないと思った。

だが、放っておけないとも思った。




アマのことや、カツアキに関して、悩んだ。

俺はタバコの()け方を何とか覚えながら、ずっと考えていた。

そう、これ以上格好をつける必要はない。

事実を言うと、俺はタバコを吸った。

理由は特にないが、しいて言えば面倒になった。

何もかも。

面倒なことを一生懸命やって、その結果、いいことはなかった。

どうせ委員長には、『そういう奴』だと思われているようだし。

流石にひどすぎる。

もういいじゃあないか。



………いや、これは違う。



タバコは吸ったが、だが、頭の中ではいろんなことがぐるぐると、まわる。

タバコを吸っているからと言って、タバコのことを考えているわけではない。


こんな不良じみた真似をして、その理由は。

理由はと、聞かれることはなかったが。

―――なんとなく。

と、言いたいところだが。


俺は冷静で、クレバーだった、気がする。

馬鹿な、と思われるかもしれないが。


出来るだけ、学校の人間から嫌われたかった。

そういう意図があった。

この学校を『終わらせる』ことで、そうすることで、次の学校に集中したかった。

ひどい人間だ。ガキだ。

だけど学校だってひどいだろう?

みんな、結局のところ俺のことを好きではない。

勉強はしていたし、授業中は大人しくしていたつもりだが。

何か意味があると信じて通っていた奴は馬鹿を見る。

この時は本当に、心の底からそう思っていた。


………。

アマ。

あいつは、タバコを吸っている俺を見て、どう思うだろう。

嫌悪するだろうか。

どうしようもない奴だと、思うだろうか。

あいつには嫌われたかったなぁ………すごく。


これ以上あいつの近くにいて、別れるときに泣くのは御免だった。

嫌だった。

別れるとき―――あいつに、自分が何を言い出すか、言ってしまうか―――怖かった。

アマをどう傷つけるか―――傷つけてしまうのか、わからなかった。




「タバコを吸ったからなんだっていうんだよ………」

アマと別れる。

皆とも。

同じじゃないか。

色んな努力を―――した気がする。

すべて無駄だった。


「アマに何も返せない時点で………俺は終わりだ」


アマ。

アマ―――お前なら、お前ならなんとかできたのか、この状況で。

何か上手い手を思いついたのだろうな。

テストみたいに問題を解くように、解決したのだろう、そしてへらへらと笑うのだろう。

お前は人生について、人間が生きたり死んだりすることについて、そういう風に―――進めるのだろう。

効率を重視し。

だって頭いいもんな、お前。

そして俺はクズだもんな。

………生まれた家の、差なのかな。

最初から、俺には無理だったのかな。

………でも、じゃあ、俺。

学校で、教室で、どうしていればよかったんだよ。

本当にわからないんだ。


苦手なんだよ。

最初から。

だから、得意になろうと努力はしていたんだよ。


アマ。

お前みたいになれたらいいのに―――、と。

思っていたことも―――あるんだぜ?


タバコの煙には、慣れつつあった。

それは美味しかった。


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