表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部屋選びミスった。幽霊いるじゃん  作者: 時流話説
サイドストーリー
62/66

テツ&アマ その11

―――人は一人じゃない。

―――キミは一人では生きていけない。


と言ったような台詞(せりふ)がある。

ドラマもある。

歌もある。

散々聞いた、色んな、時代ごとの―――でも、同じようなJ-pop(うた)


「本当にそうかな」


確かに、人は集まったらそれなりに楽しい。

でも………やっぱり、一人で生きなきゃいけない奴もいるよ。

一人で、どこかに行かなければならない時があるよ。

そういう奴も―――いる。

例えば俺とか。

ふん。

俺は変な奴で、少数派なんだ。

そうなんだろ?

畜生が。


「テツ、お前さー最近谷瑞と仲いいよなー!」


学校の中なので、煙草は吸わずに、三人で話している。

滝川が何の気なしに言った。


「………それが?」


「んーん、別に、別に―!」


滝川がにやにやと笑い、つられたように、一応松本が笑う。


「いや、付き合ってんのかなーなんて」


「羨ましい限りだよ」


「や………」


俺は苦笑する。

そして否定しなかった。


付き合えたら―――それも、いいのだけれど。

いや、やはりいろいろ考えた末に、

まあこんなものは、本気で言っていない、ただ口を動かしていないと落ち着かない、浮ついた話を話題にしないといけないというような、ただそういうものなのだが。


「谷瑞は真面目ないい子だよ―――それだけだ」


「本当かぁ………?何もなかったのか?」


滝川がニヤニヤする。

うぜえ。


「あ、ほらテツって、実行委員だっただろ、文化祭の―――」


松本が言って、滝川が、ああ―――と納得がいったようだ。


「それを口実に近付いたってわけだ、あ、知ってるか一組の………おいテツ、一組の加藤がさ、お前のことタイプだって」


俺は単なる女たらしではない。

女子を笑わせることに全力を尽くしたいだけだ。

………。


「付き合ったら―――いいことあるのか?」


別に意味があっていったことではないが、俺はそう言って、二人は迷った。

なんとなく口が動く。

喋りたいのではなく、止めるのが面倒だっただけ。

ぼそぼそと呟く。


「女子と、なんだ………恋人になったら―――それでいいことあるのかよ」


二人はなおも、少し笑みのある表情だった。

俺は下を向く。


―――この家を捨てる気か。

―――どうでもよくなったのか。


家で聞いた、俺の家庭の声を拾い上げる。

ひどい罵声を選んで、思い出す。


家族の喧嘩。

捨てたくない祖父、仕事熱心な父。困惑、なだめる母親。

聞き耳を立て――何もしない俺。

何が正しいかわからない弟。


付き合って、どうするのだろう。

付き合ったら変わるのかな。


結婚して家族になったとしても、幸せになれない場合がある。

結婚して家族になったとしても、幸せになれない人はいる。

俺はそれを知っている。

知っているんだーーー毎日感じていた。

俺は幸せになる方法を知らないし、教えてもらってはいない。

あの親から、教わっていない。


俺の家は。

決して、まだ―――最悪ではない、もっと悪い家庭環境なんていくらでもあるだろうし、婆ちゃんの死という、原因は、ある。

誰が悪いというわけでもない、原因はある。


喧嘩するかもしれないのに、分かり合えないかもしれないのに、どうして女子と付き合うなんていう―――つまり、意味のないことをするのだろう。

わからない。


「彼女ができるなんて、なんでそんな意味のない―――ことを―――」


言いかけて、そろそろやめようと思った。

二人が、どんな表情だったか、真っすぐ見れなかったけど。

俺の、居場所をわざわざなくすのも馬鹿らしい。


「まあ、女子とも話さないといけねえ、真面目な奴がいて助かる。俺が実行委員に慣れてねえのは本当だよ」


なんとかそう言うと、二人は少し笑った。

まず最低限、家族を知ってからでないと、女子と付き合う資格はない。

このとき俺はそう考えていた。

だってそうだろう、おかしいじゃあないか。

俺の家のアレなんかではなく―――。









男子中学生だった、としか言いようがない。

今思えば―――男子はみんな、女子のことを、少し恐れていたのだろうと思う。

女子は、きっと強くはない―――はずだ。

だが、しかしわからない。

理解が及ばない。

自分たちと違う。

違い過ぎる。


だが女子とはある程度話せなければ示しがつかない。

ここが男子の悪質なところだ。

学校の。


俺はと言えば―――他のことに精いっぱいで、この時、割とどうでもよかった。

俺は恋愛のエキスパートでもないし、サッカーボールの蹴り方を考えているときの方が楽で、楽しかったことは間違いない。

恋愛のエキスパートになりたいと願ったことはない。

少なくとも少し前までは―――小学生の頃は特にそうだった。


色恋沙汰とかから離れて、くだらない話は続く。

なんでもない話題がほとんどだったから、忘れたのだが、きにhなるのがあった


「お前さ、文化祭の実行委員なんてよくやるよなー?」


くじ引きで決まったことだから、としか言いようがないのだが。


「悪いかよ、祭りだぜ一応、フェスティバルよ。勉強よかマシだよ」


不真面目、不良アピール。


「いやいや、でもこういうのはさ、まじめな奴がやりゃいいんだよ」


二人は、へらへら笑う。


「お前見てると痛々しいんだよ、耐えられねえんだ、心配で」


そんなことを、マイルドに言われた。

優しく。

お前はアマに勝てなくてもいいんだよ、とでも言いたげな―――。


「………別に、悪いことしてねえだろ。ていうかくじ引きで決まったんだから仕方がねえじゃん」


二人は少し悩む。


「ていうか、お前らの方が心配なんだけどな………どうせそのうち、大人になったらよぉ、大人になったら、いろいろやらなきゃなんねーんだぜ………逃げてばかりもいられなくなる」


それでも、やつらはにやにやしていた。

だが―――口調はそうでなくなった。

少し、堅い雰囲気になった。


「―――高次(たかつぐ)の影響か?」


「………なんで、アマが出てくる」


唐突にアマの名前を出されて、俺も口調が変わる。

困ったような声―――しかし悟られてはいけない。


「あいつとかに、任せればいいじゃねえか。勉強とか学校行事とかよぉ」


こいつらは、まあ大きな声で言いはしなかったが、俺がアマと一緒にいることを、気に食わないらしい。

まあ、アマはああいうやつだから、アマのことを苦手な人間は多かった。

まあ、わからないでもない。

俺だってあいつのこと、得意じゃねえもん。


「わかるぜ俺は、別格だ。あいつは―――まあ、違う奴、だとは思うよ」



俺らみたいな半端モノとは違う―――。

学校行事、その企画。

そういうものに関しては。


「鼻持ちならねえよな―――そりゃあ勉強ができれば、学校は楽しいに決まってる。学校というか授業というか。そんでもって、俺らはそうじゃあない」


俺ら、と一括りにしてきたことに、なんだか苛立った。

だけどこいつらの言うことは、確かに一理ある、と思った。


文化祭は。

俺は―――俺は逃げたくなかった。

中学生である自分が、何に向いているかなんて、全容は把握していない。

それに、苦手なものでも得意になれるかもしれない、中学生の、今なら―――無理をすれば、何とかなるかもしれない、そう思ったのだ。

一歩踏み出せば今の、自分を変えられる。

それは大人になったら―――いつかは大人しくなるのかもしれないが。

大人しくなるのは、大人になってからでいいだろう。

といった前向きな心情だった。


「別に、そう思うのは勝手だけどよ―――」


俺は、色んなことに迷ってはいたが、アマのことを悪人ではないと認識していた。

そして、俺は残念に思う。

こそこそと煙草を吸っているだけのこいつら―――そして、その小物臭のする悪事すら、実はもうバレバレだという、こいつら。

この感情を何というのだろう。


正義づらをしたい、という気持ちもあった。

だが―――。


なんてつまらないんだろう。

なんて面白くないのだろう、この男たちは、とそう思ったのだ。

だが、俺は笑顔を作る。

優しく、甘く。

刺激しないように。

直接は言わなかった。


「なんか、やりてえだけだよ。なんかやってないと落ち着かないんだ」


そう答えた。

熱意がこいつらに伝わればよかったのだが―――結局最後まで、それはなかった。







谷瑞(たにみず)、文化祭のことだけどさ―――アマにも手伝ってもらおう」


谷瑞に話した時、俺は言った。

別に、あいつらのように怠けたい、というわけでもなかった。

ただ―――予感がした。


「高次くん?」


「ああ、予定表、資料は煮詰まってるから、それを渡して一緒に考えればいい」


「………うん、いいよ!」


できれば全部任せたい、とまでは言えなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ