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20/28

数字は嘘をつかない

記録帳の角が、掌の中で温もっていた。


七日間持ち歩いた帳面は、革が手の熱を吸って柔らかくなっていた。カイはそれを机の上に置いた。表紙に指を一度当てた——石材の番号、工程日数、人員の記録、石積みの段数。全部が中に入っていた。全部が数字だった。全部が本物だった。


視察官が来る朝だった。


写しを作った。炭筆の音が集会所に響いた——工程記録、石材記録、人員記録、費用記録。ヴァルスが来た日の記録も書き移した。一字も変えなかった。元帳と写しを並べて、数字を目で追った。一致した。写しを道具袋の内側に入れた。元帳を袖に入れた。




夜明け前に現場を歩いた。


城門の東側を起点に、第二城壁の北面、北東角の張り出し部、城門の北側を順番に歩いた。石畳ではなく土のままの外周は、朝の冷えを足の裏から入れてきた。岩盤の固さが靴底を通してきた——動かなかった。この丘は冬を越しても動かなかった。春が来ても、移住者が五百人になっても、揺れていなかった。


第二城壁の北面を触れた。


夜明けの石は冷たかった。花崗岩の結晶が指先に当たった。五段積まれていた——この七日で二段、積み切った。予定通りだった。北東角の張り出し部が外に出ていた。あの角度から北林の縁を見れば、射手が林の中に隠れた人間を狙える。線が頭の中に開いた——北林の縁、矢の仰角、城壁の高さ。超えていた。届かない。


足の裏から振動は来なかった。


岩盤が深い場所だった。基礎の底が岩盤に刻まれた感覚が、壁を通して足まで来た。見えなかったが知っていた。測量した日付と数字を知っていた。この壁がどこに立っているかを知っていた。


ヴィルが背後から来た。


足音でわかった——商家育ちの歩き方で、走っているのに靴の着地が静かだった。


「視察官の馬が見えました。北街道から来ています。半刻以内に着きます」


「分かりました」


「護衛が二名、書記が一名、本人が一名の計四名です」ヴィルは帳面を出した。「昨日、商人から入りました。王城の文書局の視察官ということは確かです。名前はレドヴァル——文書局の第二書記官です」


「案内はヴィルに任せます」


「了解しました」ヴィルは帳面に何かを書いた。「工作員の男は昨晩も城壁を写し取っていました。移住者の夜番が報告しています。今朝、北林方面に向けて紙を持って歩いています。馬を使えば——視察官の来訪が辺境伯に伝わっているとしたら、今日の朝には届きます」


カイは城壁から手を離した。


「辺境伯が動くとしたら」


「今日、視察官に接触するか——視察の後に何かするか、です」ヴィルは帳面を閉じた。「どちらに転んでも、数字は揃っています」


カイは何も言わなかった。ヴィルが言ったことを繰り返す必要がなかった。七日間、その状態を作ってきた。記録帳が揃っていた。工程が完了していた。嘘の数字が一つもなかった。


「グラン爺に朝の確認を頼んでいます。北東角の最終目視を」


「頼みます」


ヴィルは帳面を袖に入れた。前髪を一度払った。「カイさん、今日の朝飯は食べましたか」


「まだです」


「……グラン爺に言います」


ヴィルは去った。カイは城壁の外周を最後まで歩いた。




グランが来たのは夜明けから少し経ってからだった。


集会所の扉が開いた。老棟梁の足音が板張りの床に当たった——踵を出さずに指の付け根で踏む歩き方だった。カイは記録帳を机に並べていた。工程記録の一冊、工作員の監視記録の一冊、石材の在庫確認の一冊。三冊を並べた。そのうち二冊を今日の視察官に見せるつもりだった。


グランは机の上を見た。三冊の配置を見た。何も言わなかった。


「北東角の最終確認をしてくれましたか」


「した」グランは立ったままだった。椅子には来なかった。「問題ない、じゃ」


「目地の広がりは」


「ない。確認した、じゃ」グランは机の上の記録帳から目を離した。カイの方を見た。「視察官に何を話す」


「数字を全部出します。嘘のない数字で——工程、人員、石材の量、費用の記録」


「言葉は」


「ヴィルがやります」


グランは顎を引いた。


承認の仕草だった。それだけだった。集会所の壁の方に目を向けた——羊皮紙の設計図が壁に貼ってあった。第二城壁の全体図だった。最新の工程が入っていた。北東角の張り出し部が赤土で引いた線で入っていた。


老棟梁の目が、図の上を動いた。


城門の位置、城壁の全長、北東角の角度と張り出し寸法——図を読んでいなかった。全部頭に入っているから見ていなかった。ただ壁の前に立つように図の前に立っていた。北東角の張り出し部の赤土の線が、朝の光を受けて乾いた色をしていた。


「向こうが決めることじゃ」グランは言った。「だが見えないものを見せようとするな。建てたものだけが話す」


カイは記録帳を一冊ずつ確認した。日付が揃っていた。数字が揃っていた。


「分かっています」


グランは扉の方へ向いた。集会所を出る前に振り返った。


「飯は食ったか」


「これから食べます」


「ヴィルが心配しておった」


扉が閉まった。カイは焼き麦のパンが朝から机の端にあることに気づいた。グランが置いていった。いつ置いたか分からなかった。




視察官レドヴァルが城門を通ったのは、朝の半刻後だった。秋の朝の光が低く差し込み、城壁の石が白く浮いた。北から来た風が薄かった——冬の手前だった。


馬から降りた人間は五十代に見えた。中背、がっしりした体格で、騎士ではなかった——手の動き方が書記の動きだった。腰に剣はなかった。王城の紋章が入った外套を着ていたが、外套の裾が泥を跳ねていた。馬で来た道を省かなかった証拠だった。書記が一名、護衛が二名、後ろに控えていた。


ヴィルが前に出た。


「視察官殿、ようこそいらっしゃいました。ハルムの副官を務めておりますヴィルと申します」


レドヴァルは馬を護衛に預けた。城門の柱を一度見た——柱の基礎の幅を見ていた。目が動いた。何かを確認していた。


「管理人は」


「こちらにおります」ヴィルが一歩引いた。


カイは前に出た。道具袋を肩に掛けたままだった。測量用の紐が腰から下がっていた。腰に炭筆もあった。


レドヴァルがカイを見た。年齢を確認した。確認してから、もう一度見た。


「三年目の管理人がこれほど若いとは聞いていなかった」


カイは何も言わなかった。言う必要がなかった。


「ご案内いたします」ヴィルが続けた。「まず城壁の全長と工程の確認から、よろしければ記録帳もご覧いただけます。数字を全部揃えております」


レドヴァルの目がカイに来た。「記録帳を見せてもらえるか」


カイは道具袋から記録帳を出した。今日のために持ち歩いていた帳面だった。渡した。レドヴァルは受け取った。表紙を開いた。最初のページから読み始めた。


「これは——全期間分か」


「着任から現在まで。工程・人員・石材・費用、全部入っています」


レドヴァルはページをめくった。止まった。数字を指でなぞった。「石工の人数が途中で変わっている」


「移住者から職人が増えました。もう一冊に人員の変動があります」


カイは二冊目を出した。渡した——写しの方を渡した。レドヴァルは両方を手に持った。交互に見た。書記が後ろから来て二冊目を受け取り、書記帳に書き写し始めた。


「案内しながらでも読めますか」とヴィルが言った。「城壁の実物を見ながら数字を確認いただいた方が分かりやすいかと思いますが」


「そうしよう」




城壁を歩いた。


ヴィルが先導した。カイは隣に入った。記録帳の数字と目の前の壁が一致するたびに、レドヴァルが何かを書記に告げた。書記が書いた。視察官の目は城壁の段数を数えていた。石の目地を見ていた。城門の幅を見ていた。基礎の露出した部分を見ていた。


北東角に来た時、レドヴァルが足を止めた。


張り出し部を見ていた。外側に突き出た角の形を見ていた。


「これは設計図にあったか」


「追加です」カイは言った。「北林の方角に向けた防衛設計です」


レドヴァルは張り出し部の底面を一度触れた。指先が石の面に当たった。面の揃いを確認しているように見えた——建物を知っている人間の触れ方だった。


「北林に脅威があるか」


「偵察の動きがあります。紋章は確認していません」


レドヴァルは指を離した。城壁の外側から内側に視線を移した——城壁の高さを目で測っていた。


「三年でここまでやるとは」


独り言に近かった。カイに言ったのではなかった。ヴィルに言ったのでも、書記に言ったのでもなかった。ただ、口から出た言葉だった。


カイは何も言わなかった。


数字が揃っている。建てたものが立っている。それだけだった。




昼前に集会所に戻った。


市場区画を通った。朝の取引がまだ続いていた。東出入口から荷車が右回りで入り、北端の荷預かり区画で荷を下ろしていた。食料と道具が並んだ屋台が東側まで広がっていた。商人と移住者が値を言い合っていた。子供が荷車の間を抜けていった。東出入口の柱に板が打ってあった——荷車通行・右回り、荷預かりは北端。柱の横に荷預かりの看板が立っていた——ヴィルが移住者に頼んで文字を彫らせたものだった。あの看板が立った日から、荷車が東口に詰まらなくなった。ヴィルが立ち上げた区画だった。カイは設計した——区画の割り振り、出入口の幅、荷車が通れる通路の広さ。ヴィルが人を入れた。人が入ったら声が来た。声が来たら数字になった。


レドヴァルは市場区画を歩きながら、人の数を数えていた。


「商人は何組いるか」


「定期が十二組、今日は六組が来ています」ヴィルが言った。「収入の内訳は別の帳面にあります」


「それも見せてもらえるか」


ヴィルは袖から帳面を取り出した。渡した。レドヴァルは市場の中を歩きながら読んだ。立ち止まらなかった。読みながら歩いた——慣れた動きだった。書類を現場で読む人間の動きだった。


集会所の中に入った。


カイが壁の設計図を広げた。第二城壁の全体図——今日の時点での進行が入っている図だった。


レドヴァルは図の前に立った。


しばらく、動かなかった。


書記も何も言わなかった。護衛は扉のそばに立ったままだった。市場の声が外から聞こえた。石工の作業音が遠くから来た——今日も積んでいた。視察があっても工程は止めなかった。


「計画と現在の差は」


「計画より四日早い」カイは言った。「岩盤まで掘り下げた。荷重を受けるために必要だった」


北東角の張り出し部は、外側に重さを持つ。岩盤に基礎を刻まなければ、あの角は立たなかった。石工を一人追加して遅れを戻した。そこまでが判断だった。


「誰が判断した」


「俺です」


レドヴァルは図から目を離した。カイを見た。


「棟梁と相談したか」


「グランに確認を取りました。承認をもらっています。記録帳に日付と内容が入っています」


レドヴァルは記録帳を開いた。その日付のページに来た。グランの名前が書いてある行を指で押さえた。確認の仕草だった。


「グランというのは」


「棟梁です。六十年、ここの地盤を見てきた人間です」


「その棟梁に会えるか」


「今、北東角にいます。案内します」




グランは北東角にいた。


石工二人の作業を見ていた。壁から一歩離れた位置で、立ったまま石の目地を見ていた。カイたちが来ても振り向かなかった——石の面が揃っているかを確認している途中だった。


「グラン爺、視察官殿です」とヴィルが言った。


グランはそこで振り向いた。


レドヴァルを一度見た。それだけだった。立ち方が変わらなかった。礼はしなかった。視察官が来たからといって背筋が変わる老棟梁ではなかった。


レドヴァルがグランの手を見た。曲がったまま治っていない人差し指の第二関節を見た。石積み事故の傷だと、見た人間なら分かる。


「六十年、ここを」


「ここを離れたことはない、じゃ」グランは言った。「センが来る前も、来た後も、去った後も」


「センというのは」


グランは石工の方に目を向けた。石工が目地を確認していた。「カイの親父じゃ。二十年前にここの調査をした騎士だ。この丘が要衝になると書いて、上申書を出した。聞いたことはあるか」


「記録に残っているかどうかは分からない」レドヴァルは正直に言った。


「残っていないかもしれない」グランは石工の作業から目を離した。カイの方を一度見た。「だが今、その息子がここに立っている。三年でこれだけ積んだ。数字は全部あそこの帳面に入っている」


レドヴァルはカイの方を見た。


カイは何も言わなかった。グランが言った後に繰り返す言葉はなかった。




昼過ぎ、集会所に戻った。


レドヴァルが書記に口述した。書記が書いた。ヴィルが数字を補足した。カイは記録帳の数字を確認するために何度か開いた。数字は全部揃っていた。どれも嘘がなかった。どれも今日初めて作った数字ではなかった。着任一日目から積んできた数字だった。


ヴィルが茶を出した。


レドヴァルは茶を受け取った。飲む前に一度杯を見た。陶製の粗い杯だった。辺境の集会所のものだった。それを飲んだ。


「一つ聞いていいか」レドヴァルは茶杯を置いた。「辺境伯ヴァルスとの関係は」


部屋の音が一瞬だけ静かになった。


ヴィルの帳面を持つ指が止まった。グランが遠くの壁を見た。石工の音が外から来た。


カイは記録帳を開いた。


別の帳面だった——監視記録の帳面ではなかった。もう一冊、今日持ってきていた帳面だった。ヴァルスが来た夜から書き始めた帳面だった。ヴァルスが来た日の記録だった。


「辺境伯の訪問記録があります」


レドヴァルは手を伸ばした。


カイは渡した。


レドヴァルはページを開いた。最初のページに日付と来訪者名と来訪目的が入っていた。次のページに会話の記録が入っていた——「二十年前、お前の父が書いた上申書は、私が握りつぶした」。一字一句そのままだった。日付、時刻、発言者、内容。カイが聞いた言葉をそのまま書き移していた。


レドヴァルは読んだ。


読み終わって、もう一度読んだ。


書記を手で呼んだ。書記が来て、書き写し始めた。


「この発言は確認できるか」


「俺が聞きました。ヴィルも同席しています」


「他の証人は」


「ヴィルだけです」


レドヴァルは帳面を閉じた。まだ手に持っていた。「これを提出する意思があるか」


喉の奥に、何かが詰まった感覚があった。証人は一人だった。記録は自作だった。証拠として薄い——それは分かっていた。それでも今この部屋にある記録が、父の名前が書かれた唯一の帳面だった。指先が道具袋の革を探していた。薄い。それでも出す。


「あります」カイは言った。「父の上申書を正式に再提出します。発言記録と一緒に」


声に出したのは初めてだった。


部屋が静かだった。


外から石工の作業音が来た——一打、止まった。また一打。その間に部屋は動かなかった。ヴィルが前髪を払った——いつもと違う、ゆっくりした動きだった。グランが視線を壁から外した。グランの手が一度、腿の上で握られた。老いた節くれの指が、膝の布地を一瞬だけ掴んだ。


カイの右手が、道具袋の革を握っていた。いつ握ったか分からなかった。革が掌の中で温もっていた。


レドヴァルは帳面を置いた。茶杯を見た。指が杯の縁を一度なぞった。


「預かる」レドヴァルは帳面を手に取った。両手で持ち直した。指が表紙の端をわずかに押した——紙の束が何枚あるか、重みで測っているように見えた。「上申を届けるまでが文書局の仕事だ。動かすのは上の話になる——王城が直接動くには文書局より上の命令が要る。書面の様式は書記に聞いてくれ」


カイの手が、道具袋の革から離れた。息が少し抜けた。足の裏から岩盤の固さが来た——集会所の床の下に、この丘の根があった。「預かる」。上は別の話だ——それは知っている。だが扉が開いた。それで十分だった。


「分かりました」


「それと——」レドヴァルは立った。「発言記録の日時・内容に誤りがないか、書記に照合させたい。内容を確認してからにする」


カイは記録帳を閉じた。




夕方になった。


視察官の一行は宿に入った。


ヴィルが宿の手配をした。移住者の多い宿屋に部屋を四つ確保した。夕飯が出る手配をした。護衛の馬の世話を移住者に頼んだ——ヴィルが頼むと人が動いた。カイが頼むと動く前に一瞬止まる。そういう違いだった。


グランは現場に残っていた。


石工が作業を終える時間まで、北東角にいた。膝が悪いのに、縁から一歩手前で立ち続けていた。誰も言わなかった。グランも言わなかった。石工が道具を収めてから、老棟梁は最後に石の目地を一度だけ触れた。それから坂を下った——右足が少し遅れた。


カイはその背中を一瞬だけ目で追った。すぐに城壁の方へ視線を戻した。


城壁の外から全体を見た。


第二城壁が五段まで立っていた。北東角の張り出し部が外に出ていた。城門が東と北に開いていた。市場の屋根が並んでいた。集落の炊煙が上がっていた。五百人分以上の夕飯の煙だった。夕風が来た——城壁の石が冷えていた。日中に温まった花崗岩が、日没と同時に熱を手放していた。その冷気が手の甲に当たった。


頭の中で、図が開いた。


父の手帳の配置図が浮いた——ハルム丘陵の測量データ。三街道の見通し台。城壁基礎の線。二十年前に父が歩いて手帳に入れた線だった。その線の上に、今日の壁が立っていた。


図が合っていた。


父の目が見ていたものを、三年かけて建ててきた。建てたものが父の図と同じだった。


手が城壁から離れた。指先に冷えた石の感触が残った。肩が、一度下がった。


足の裏から岩盤の固さが来た。ここが揺れないことを知っていた。


今夜、辺境伯が視察官に接触するかどうかは分からなかった。するかもしれなかった。圧力をかけようとするかもしれなかった。それでも記録帳が残る。書記が書き写した内容が残る。レドヴァルが受け取った帳面が残る。消えない。


嘘の数字は一つも出さなかった。全部本物だった。全部今日まで積んできた数字だった。


ヴィルが後ろから来た。


「視察官殿が宿に入りました。今夜、辺境伯の使者が宿を訪ねる可能性があります——工作員の男が北林方面に向かった後、戻ってきていません。今夜が動くとしたら、今夜です」


「分かりました」


「何かしますか」


「しません」カイは言った。「向こうが何をしても——数字は揃っています」


ヴィルは帳面を出した。何かを書いた。「つまりこういうことですよね——視察官殿はもう記録を持っています。俺たちが今から動く必要はない」


「それだけです」


ヴィルは帳面を閉じた。前髪を払った。「カイさん、夕飯は」


「食べます」


「本当に」


「グランが怒る前に」


ヴィルが少し笑った。声は出さなかった。帳面を袖に入れた。「宿屋の分を確保しています。一緒にどうですか」


「グランを呼んでください」


「もう呼んであります」




夜、集会所に戻った。


机の上に記録帳を並べた。三冊が並んだ。視察官に渡したのは写しだった——今朝書き移したものだった。元帳はここにあった。


炭筆を持った。


今日の記録を入れた。視察官の来訪、案内した場所と時刻、見せた帳面の内容、レドヴァルの発言。書き移した。書き移しながら、頭の中で今日の数字を確認した——どの数字も嘘がなかった。どの数字も昨日と違っていなかった。今日視察官に見せたものは、昨日と全く同じ数字だった。


今夜、辺境伯の使者が視察官のところへ行くとしても。


行った先で視察官が持っているのは、カイが渡した帳面の写しだった。工程記録、石材記録、人員記録、費用記録——それと、ヴァルスが「握りつぶした」と言った日の記録だった。今朝書き移した写しが、今夜レドヴァルの宿にあった。


使者が何を言っても。


数字がある。数字は変わらない。


道具袋を手に取った。底の革表紙に指が当たった。父の手帳だった。角が丸くなっていた。使い込まれた表紙だった。今日は取り出さなかった。取り出す必要がなかった——今日は父の手帳の外で、父の上申書の話をした。紙の上でなく、声で言った。


「父の上申書を正式に再提出します」


声に出したのは昼間だった。今夜は出さなかった。もう言った。もう届いた。


炭筆が動いた。


数字が刻まれた。


問題ない。来週には終わる——第二城壁の残り工程が、頭の中にあった。数字が揃っていた。



あとがき: |

第20話です。視察官レドヴァルがハルムを訪れ、カイが三年分の記録帳を全て見せます。嘘の数字を一つも出さない——それが今日の武器でした。ヴァルスが訪問した日の会話記録も渡しました。父の上申書の再提出を、今日初めて声に出しました。レドヴァルは「受け取る」ではなく「預かる」と言いました——上申を届けるまでが文書局の仕事であり、動かすのは上の話だというのが王城の制度です。それが第二書記官が現場でできる限界であり、それで十分でした。辺境伯が今夜何かしようとしても、数字はもう視察官の手にあります。第2アーク完結です。ここまで読んでくださりありがとうございました。

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