第5話 私を支えてくれる人
私、七瀬ひよりはこの前、好きな人に告白して振られた。
相手は神藤天馬。中学からの腐れ縁の親友。
正直……今も天馬の顔を見ると辛い。吹っ切れてないし、引きずってる。
私は今、そんな相手とお昼ご飯を食べている。
本当はもうちょっと時間が欲しかったけど、そうは言ってられない。だって、天馬と花ちゃんが付き合うのは、時間の問題だと思うから。
このまま、振られたことを引きずって天馬を避けて……その間に二人が付き合ってしまったら、今度こそ話しかけることが出来なくなってしまう。
そうなったら、私は確実にこの二人とは関わらないだろう。
それはなんだが……寂しくて。
だから……前に進むって決めて、天馬と向き合うためにここに居る。
それなのに……いつも通りに天馬と話せない。
花ちゃんとは話せてるのに、天馬とは何を話したら良いのかわからない。
私と天馬の間にある微妙な距離感を花ちゃんも気付き始めている。
まずい。何か話さなきゃ……前みたいに、いつも通りに……
…………あれ?
私、天馬といつもどんな感じで話してたっけ?
「……ひゃっ!?」
頭が真っ白になりかけた瞬間、つんっと横腹を突かれた。
隣を見ると女装をした文くんがこちらをじっと見つめている。ここは俺に任せておけと言わんばかりのドヤ顔でスマホをタップして天馬に見せた。
『神藤くんと七瀬さんって、どういう風に出会われたんですか?』
「……ん? 俺とひよりの出会った時の話?」
え、文くん。なんでそんなことを……?
「そうだな……俺がひよりと絡むようになったのは……二人で授業中に昼寝してるのがバレて補習を受けたことがきっかけだったかな」
ああ、あったなぁ。そんなこと……なんだか、すごく懐かしい。
「あ、そういえばさ……補習も問題がすごく難しかったよね」
「そうそう!! 二人で頭抱えてたなー」
「天馬が5択以上の選択問題は4番目が正解の確率が高いって言った時は笑ちゃったけどね」
「な、ひよりも同じことして正解してただろー」
……あれ、なんか、いつもみたいに話せてる?
ふと隣を見ると文くんが満足そうな表情で私たちの会話を聞いている。そしてその文くんをどこか感心そうに見ている花ちゃん。
「文香ちゃん」
『はい?』
「……文香ちゃんは……すごいですね」
『あ、ありがとうございます?』
……もしかして、こうなることが分かっていて、文くんは天馬に話を振ってくれたのだろうか?
だとしたら……私、文くんに助けてもらってばっかりだ。いつもいつも、辛い時や困った時いつも支えてくれてる。
………………女装してるけど。
「入江さん、結構ひよりと仲が良いんだな」
ふと天馬が私と文くんを交互に見ながらそんなことを言い出した。
「そうだよー? 私たち超仲良しなんだから! ね? 文香ちゃん?」
「ぴゃ!?」
仲良しアピールで文くんに抱きついたら、変な悲鳴をあげて、顔が真っ赤にしえながら固まった。
その反応がちょっと面白くて。
「俺も、入江さんとは仲良くしていきたいかな」
「言っておくけど、天馬には私の文香ちゃんはあげないよー」
なぜか、ぎゅーと抱きしめる力が強くなる。
「私も、文香ちゃんと仲良くなりたいです」
「へ? 花ちゃんまで? ……うちの文香と話すには私を一度通してもらってからでも良いですか」
「お前は入江さんのマネージャか……そんなにムキにならなくても」
……確かに、なんでちょっとムキになってるんだろ。
長かったようで短かった昼休みも予備チャイムによって終わりを告げた。
この頃には、私たちはいつも通りに会話が出来ていて。完全にとは言わないけど、私たちらしさが戻って来たような気がする。
「それじゃ、私と文香ちゃんは一緒にクラスに戻るね」
文くんと二人で中庭を離れようとした瞬間
「あの、文香ちゃん。良かったらまた私たちと一緒にご飯を食べませんか?」
「……へ?」
突然の花ちゃんの提案に思わず、裏声を上げて驚く文くん。
「私も文香ちゃんと同じであまりお友達が居ないので……今日とても楽しかったんです。ですから、気が向いてくれた時でいいので来てほしいです……どうですか?」
……正直、びっくりした。花ちゃんは結構人を見ていて警戒心が強い。
だから自分からここまで言うのはあんまりない。それこそ、天馬や私くらいだと思う。
文くんはどう答えるんだろう……?
ふと隣を見ると
「あ、あぁ……ぁぁ」
文くんの顔が引き攣ってる!! そうだよね!? だってこれからも女装しなくちゃならないってことだもんね!?
「……だめ。ですか?」
花ちゃん!! 今、そのしゅんとした表情はずるいよ!!
「…………………………………………………………………………私なんかでよければ」
「……文香ちゃん!」
穏やかで、無垢な微笑みを浮かべる花ちゃんに対して、今にも気を失いそうなくらい顔を青ざめる文くん。
そんな二人を見ながらどこか満足そうな顔をして頷く天馬。
「出来たら週1……2回は来てくれると嬉しいですっ」
「え、あ、お、おぅ……し、週2回」
満天の笑顔の花ちゃんと優しく微笑んでいる天馬に見送られ、私たちは教室へ向かう。
「……えと、文くん。大丈夫?」
「……フ!!」
そう聞くと文くんは青ざめた顔で、頬を引き攣らせながら親指を立てた。




