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第33話 なんちゃってデート(最終確認編)





 放課後、俺は七瀬ひよりの親友である芹澤美鈴となんちゃってデートをしていた。



 ……どうしてこうなった?


 思わず頭を抱えるが、前回とは違い芹澤さんとはこれまでいくつもの困難を乗り越えて多くの時間を共有してきた。


 つまり、あの頃に比べて相互理解を進んでいるということ。


 芹澤さんが今、何を考えているのか……少しだけでも理解できるはずだ


 チラっと芹澤さんの様子を伺った。



「あの雲……おっぱいみたい」



 ……何を考えているのか全くわからないや。


 ため息をつきながら、芹澤さんが見つめる雲を眺める。



「あ、ほんとだ……おっぱいみたい……えっちだ」


「ね、えっちだね」



 いや、なんの話だよ……



「えと、今回のなんちゃってデートも芹澤さんを満足させられるのか試されるの?」


「ん、今日の課題はちょっと違う」


「あ、そうなんだ……ちなみに今日の課題は?」


「私をこのデートでドキドキとさせて」

 


 無理難題じゃねぇか……


 軽く絶望していると目的地であるカフェへとたどり着いた。


 店員さんが来て、席を案内される。室内は人気なだけあってオシャレな装いで、中庭が見えるいい感じに映える席だった。


 周りのテーブルはカップルだらけで、おそらく俺たちの仲を勘違いして店員さんが気を遣ってくれたのだろう。



「……緊張してる?」



 テーブル越しに向き合っている芹澤さんがメニューを見ながら聞いてきた。

 


「まぁ、多少は」


「ふ、入江は女の子と二人っきりでカフェなんて初めてだろうし、緊張しても仕方ない」


「おっと、甘く見ないで欲しいな。前に七瀬さとん二人っきりでパフェを食べたことがあるから実は今回で2回目なんだ」


「え……」



 まぁ、あの時は天馬に振られたばかりのひよりのメンタルケアーで必死だったからデートもクソもないんだけど。


 そういえば、あのハイパーメガジョッキパフェ美味しかったな……



「……なんか、ムカつく」



 むすっとした表情をしながら視線をメニュー表に戻した芹澤さん。


 あれ、もしかして会話の選択肢間違えたかな……



「ご注文はお決まりでしょうか?」



 俺のやらかしを察知してくれたのか、店員さんが注文を聞きに来てくれた。



「このカップル限定ラブリーパフェセットで」


「えっ」


「かしこまりました。カップル限定ラブリーパフェセットですね。少々お待ちください」


「あのっ……!」



 待ったをかけようとした瞬間、店員さんは俊敏な動きでキッチンへと入って行った。


 動揺しながら芹澤さんを見ると彼女は素知らぬ顔で水を飲んでいる。


 ……やっぱり、何を考えているのか分からない。


 そわそわしながら待っていると店員さんがトレイに飲み物を乗せてやってきた。


「こちら、ピーチ香るラブラブティーソーダーになります」



 テーブルの中央に大きなグラスが置かれる。


 グラスにはピーチティーソーダーと口が二箇所あるハート型のストローが刺さっていた。


 知ってるぞ。これはデートでバカップルがいちゃつきながら一緒に飲むやつだ。


 芹澤さんはストローに口をつけるとこちらをじっと見つめる。



「……入江、飲まないの?」


「え、流石に同時は……あ、いえ……飲みます」



 芹澤さん圧に負けてもう一つのストロに口をつける。



「…………………………」


「…………………………」



 無言でピーチティーソーダを飲む二人。


 なんか、思ってたのと違う。


 ソーダーを飲みながら、ちらりと芹澤さんの顔を見る。


 ……やっぱり、芹澤さんってかわいいよな。顔のパーツも整ってて、ミステリアスな雰囲気からか、少し大人っぽい色気がある。

 

 この前も告白されてたし、モテるんだよなぁ。



「……流石にそんなに見つめられたら、照れる」



 無意識に眺めていると芹澤さんは頬を赤くさせながら目を逸らした。この反応はなかなか珍しい。


 ……ここで、いい感じのことを言ったら芹澤さんをドキッとさせられるのでは?



「照れてる芹澤さん……かわいいね」


「っ……ばか」



 囁くように呟いて、ぷいとそっぽを向かれてしまった


 う、しまった。他のことを言えばよかったかな……


 再びやらかした俺を察知してくれたのか、良いタイミングで店員さんがパフェを持って来てくれた。



「お待たせしました。こちら食べさせ合いラブラブパフェでございます」



 なんつー名前のパフェなんだ。


 なぜかとてもニコニコしている店員さんがパフェをテーブルに置く。俺の方は苺パフェで芹澤さんは桃のパフェのようだ。



「入江、入江、写真撮ろうっ。二人でハート作るやつ!」


「芹澤さん、楽しそうだね……」



 パフェ二つを写しながら二人でハートを作るポーズの写真を店員さんに撮ってもらった。

 

 その時、店員さんにラブラブですねと笑顔で言われてなんだか恥ずかしかった。



「……ん、美味しい」



 かなりご機嫌でパフェを頬張る芹澤さん。桃のパフェいいな。美味しそう。


 幸せそうに桃のパフェを食べている芹澤さんを眺めていると彼女はパフェの一部分スプーンですくってそのまま俺に突き出した。



「食べたいんでしょ? いいよ。一口あげる。はい、あーん」


「え、いや……あーんする必要ないのでは?」


「これ、食べさせ合いっこラブラブパフェだから」


「……それ、口つけてるやつだよね」


「ふーん、桐藤セナとは間接キスしたのに、私とは嫌なんだ。へー」


「ありがたくいただきます」



 結局、食べさせ合いっこラブラブパフェという名前に恥じないようにお互いのパフェを食べさせ合いをして完食し、カフェを出た。

 

 会計の時、店員さんに本当に食べさせ合ったカップルさん初めて見ました!! と悪意のない笑顔で言われた時は流石に恥ずかしさで死にそうだった。



 近場にあったたい焼き屋さんでお返しのたい焼きを買ってもらう。



「入江、今日は付き合ってくれてありがと。楽しかった」


「それはよかった。結局俺は芹澤さんのことドキっとさせられたの?」



 芹澤さんはそれに答えるでもなく、



「……実は、前から入江に聞きたかったことがある」



 そんなことを言い出した。



「え? う、うん」



 俺が頷くと、芹澤さんは今までに見たことがないくらい真剣な表情で口を開く。



「入江はひよりのことが好きなの?」


「え? ああ……まぁ、うん」


「っ……そ、そう……なんだ。付き合いたいとか思ってるんだよ……ね?」


「いや、全く」


「? ……???」



 おお、あの芹澤さんが目をぐるぐるさせて混乱している。今日は色々な芹澤さんが見れて楽しいな。



「えと、入江、どういうこと……?」


「俺にとって七瀬は推しヒロインなんだ」


「どういうこと……!?」


「そうだな……例えば、すごく好きなアイドルがいても、本気で付き合いたいとは思わないでしょ? だからあくまで七瀬は俺の推しなんだよ」



 芹澤さんはドヤ顔で語る俺の顔をぽかんと見つめる


「えと、芹澤さん? わかってもらえたかな?」


「……ふ、ふふ」


「え? ど、どうしたの? 大丈夫?」



 おかしそうに笑う芹澤さんに心配して声をかけると、笑い涙を拭きながらこう言った。



「揺らいだ。自分でもびっくりするくらい」



 揺らいだ? どういうことだ? 動揺しちゃったってことだろうか?



「うん……私、入江がいいかな……いや、入江じゃなきゃダメなのかも」


「えと、それってどういうー」


「ねぇ、入江」










「私と付き合おうよ」



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