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第2話 推しヒロインのメンタルケアー





「お待たせしましたーハンバーグセットのご飯大盛りです」



 店員さんが明るい声と共に七瀬が注文したハンバーグセットが運ばれて来た。


 そして、続けて俺が頼んだハンバーグセットも無事到着。



「……やけ食い!! 今日は大好きなハンバーグを食べる!! 好きなものを食べて幸せになるの!」



 ふんす! とハンバーグをもぐもぐと食べる七瀬を見ながら自分も食べる。



 ……まずいな。正直、二人でカフェなんて展開は予想してなかったぞ。


 しかも、オシャレなところだし、七瀬ひよりと二人きりだし、何を話せば良いのかわからない。



 誰か……助けてくれ……わ、ワァ。



「ここ、いいでしょ? ちょっと高いし、学校からは少し遠いけどオシャレで雰囲気も良くてゆっくりできるんだー」


「……へぇ!!」


「いつも天馬と花ちゃんと3人で……ここで…………」



 まずい、七瀬さんのオーラが急速に消えていく……!!



「七瀬さん、後でパフェ食べる? 奢るよ」


「……食べる」



 よし、七瀬さんの顔に生気が戻ってきたぞ。


 もぐもぐとハンバーグとライス大盛りを平らげて、締めにコーラを一気飲みをして、ゴン! とテーブルに叩きつける。



「入江くん!! 聞いてくれないかな!!」


「え、あ、はい……」


「天馬のやつ!! ちょっとは考えてくれても良いと思わない!? 即答はキツいよ! 即答は!! 私ってそんなに魅力ないかな!? 凹むよ!」


「でも、そんな誠実なところが?」


「すきぃ〜〜〜〜〜〜!!」



 頭を抱えながら、迷惑にならない程度に叫ぶ七瀬。


 うん。こんなやりとりができるのなら、大丈夫だな。



「確かに、天馬はかっこいいし、良いやつだけど……花ちゃんは高嶺の花だから大丈夫だと思ってたのにぃ……」



 いや、あんたも大概高嶺の花だぞ? 

 めちゃくちゃモテてるじゃん……下手したら正ヒロインである綾部一花よりも告白されてる回数は多いんじゃないのか?



「……うぅ。二人の相思相愛っぷりを見るとね……辛くて……でも、そんな自分に嫌気が差して。何なんだろうね、私って……あは、あはは」



 まずいまずい、だんだん七瀬が壊れてきたぞ。



「食後のパフェはこのハイパーメガジョッキパフェで良い?」


「え、待って、何そのパフェ……めちゃくちゃ気になる」


「じゃ、これにしよう」



 よかった……意識がパフェにいったのか、なんとか闇は回避出来たようだ。ありがとうハイパーメガジョッキパフェ。

 


 …………なんというか、原作には描かれなかったけど、振られた直後って結構不安定だったんだなぁ。


 まぁ、原作では天馬と一花が結ばれた後、だんだんとフェードアウトしていったのを察すると二人とは距離を置いてしまったのだろう。


 疎遠になってしまう過程が妙に生々しかったのを覚えている。



「お待たせしましたー苺のハイパーメガジョッキパフェです」


「わ! す、すごい……ジョッキだ!! ハイパーでメガなジョッキのパフェだよ入江くん!!」



 ハイパメガジョッキパフェの大きさにインパクトを感じて目を輝かせながら写真をパシャパシャと撮る。


 その後、告白した時の気持ちとか日頃の愚痴とかを話しながら、二人でハイパーメガジョッキパフェを食べた。



「入江くん。ありがとうね。なんか色々と話を聞いてもらって」


「まぁ、振られた直後って一人でいると色々と考えちゃうから、こうやって誰かと話して考える時間を減らすのが一番だよ」


「…………入江くん。なんだか上級者っぽいね」


「まぁ、俺は恋愛に関しては歴戦の猛者だから……」


「へー! それじゃあ彼女とかいたんだ!」


「……10連敗以上してます」



 生前は10人以上に振られてたからな。そこから先は……数えてないや。


 


「え、クソザコじゃん」


「うるさいな。ど素人は黙ってろ」



 七瀬は拗ねるように言った俺の言葉にからかうように笑った。



「……なんか、分かった気がする」


「え? 何が?」


「……入江くんがなんで私に親切にしてくれたのか……正直ね。声をかけてくれた時は警戒してたんだ。下心とかあるんじゃないのかって」



 ……やはり、そうだったか。



「でも、あまりにも私に対してパーフェクトコミュニケーションを取ってきたから、ついつい頼っちゃった」



 え、嘘だろ? あんなもんがパーフェクトコミュニケーションだったのか? 



「きっと入江くんは失恋の辛さを知る先輩として、寄り添ってくれたんだよね?」


「……うん! まぁ、そんなところかな!!」



 すいません、嘘です。失恋の辛さを知る先輩とか、そんなもん考えてる余裕とかなかったっす。


 え!? 推しの七瀬ひよりが泣いてる!? とりあえず追いかけなきゃ!! 慰めなきゃ!! くらいにしか考えていませんでした。



「やっぱり、そうだったんだね……」



 あ、あ、やめて。そんな純粋無垢な瞳で俺を見ないでくれ。



「あのさ、迷惑じゃなかったら……また、辛いことが入江くんに頼ってもいい……かな?」


「あ、いや、全然……迷惑とかでは……まぁ、愚痴とかいくらでも」



 正直、推しのヒロイン頼られるのって最高だし。



「ありがと、私……入江くんのこと結構好きかも」



 え、あ、お、す、好き?


 ……い、いかん、いかん……勘違いするな。七瀬はあくまで俺のことを異性としてではなく、生き物として好きだと言っているんだ。


 これで告白した日には『え……あの……あ、そんなつもりなくて、その……ごめん……なさい』とか言われて一生口聞けなくなるのが目に見えている。



「あ、そだ。入江くん! 連絡先、交換しよ!」



 あ、あ〜っ、勘違いしそうになるッ……



「今日は充分メンタルケアーしてもらったし! 私の気力はマックスだよ! ひとまず今夜は乗り切れるかな!」



 ドヤ顔で胸を張る七瀬。おっぱいがすんごい。


 無事に連絡先を交換し、喫茶店を出て解散した。



「……ふぅ」



 家に着いて、風呂も入り、ベッドに倒れ込む。

 

 なんか、今日1日ほんとうに色々とあったな。


 推しのヒロインの告白場面を生で見て、慰めて、一緒にご飯食べて連絡先まで交換した。


 まぁ、あれだ。きっと七瀬が立ち直るまでの関係だ。モテモテなんだし、そのうち新しい恋をして、彼氏を作って疎遠になるだろう。


 ……いかん、このまま先の想像をしたら脳が壊れそうだ。


 そんなことを考えていたら、突如流す着信音。


 驚いてスマホを取ると画面に表示されているのは『ひより』の文字。



「……も、もしもし」


『ごめん……一人になった途端、なんか色々と考え込んじゃって』



 そっかぁ……



「……今日はとことん付き合うよ」


『うぅ……ありがど〜』



 現在は夜の8時……これは2時間コースかな。


 この時の俺は、この通話が日付を跨ぐくらい長いものになるとは知るよしもなかった……





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