22.召喚者、オーク一万匹を全滅させる
突如起こった爆発に、雲霞の如く押し寄せてきたオークたちは将棋倒しになる。
後ろからはオークロード率いる本軍が攻め立ててこようとするので、多くのオークが踏み潰された。
これでも止まらないオーク軍団の猪突猛進は脅威だ。
「ほら、何をぼさっとしてるんだ。逃げるぞ!」
オークと一緒に呆然としているマールたちオークスレイヤー団に声をかけて逃がす。
ライフルを自動掃射し、手榴弾を投げつけながらアキトとテトラも一緒に引く。
「ブフォオオオオオオオオオッ!」
オークたちの怒りは、ものすごいものであった。
アキトがこれほどの攻撃を喰らわせても、味方の死体を踏み潰してどんどん殺到してくる。
肝の座っているアキトでも、周り中の全ての敵が突撃を敢行してくるこの状況には少し威圧される。
Fランクパーティーのオークスレイヤー団など、もう腰を抜かさないで逃げるのに必至だ。
「アキトさん、これどうするんですか!」
「この数、絶対無理よ! 死んじゃうぅぅううう!」
村や採掘所から、一万はいるんじゃないかという大量のオークを引きつけて逃げるアキトはそれでもまだまだ余裕だった。
「こういうのなんだっけ、モンスタートレインと言うんだったか?」
「アキトさんが、何言ってるかわかりませぇぇええん!」
この世界にはRPGの用語は通じないのかと、アキトはのんきに笑う。
その余裕だけが、マールたちの心の支えだった。
「アキトさん! ほんとにどうするんですか、このままじゃ囲まれて私たち全滅ですよ!」
「まあ見ていろ。このへんでいいだろう」
アキトはアキトで、無駄に逃げていたわけではない。
大きな召喚術を使うイメージを準備していたのだ。
それは極めて大規模で、そして簡単な魔術であった。
前面にいたオーク五千匹の足元から、土がごそっと召喚されてなくなる。
五千匹のオークが、いきなりできた巨大な落とし穴に落下する結果となった。
「ブギィイイイイ!」
後ろで指揮をとっていたオークロードたちが吠えて、慌てて進軍の足が止まる。
止まりきれずに、穴に落ちたものは死んだだろう。
だが、止まっても無駄なのだ。
続けて、後ろの残りのオーク五千匹の上に、超巨大な魔法陣が出現し、そこから土砂が大量に降り注いだ。
一瞬にして、一万のオークが落とし穴と土砂で全滅した。
もはや大災害である。
「終わったぞ。思ったより上手くいったな」
上手く出来たという達成感に、笑顔で振り返るアキトだが……。
無言。
「さすが、あるじなのだ……」
心なしか、テトラの相槌も元気がない。おしゃべりなスライムたちも、言葉を失っている。
これはちょっと凄すぎる。
魔術師の少女エマが、全員の気持ちを代表してその場に突っ伏して叫ぶ。
「これは一体何なの。人間にこんなことができるわけない……神様だって無理よ!」
同じ魔術の使い手だから、その凄さがわかる。
魔術師である自分が、たとえ一万年修行してもできるわけがない空前絶後の最強魔法だ。
その御業は、単純にして最強。いや、これはもはや人間レベルの最強じゃない。
強いしお金持ちだし、ちょっとかっこいい大人な人だなと思ってたけど、とんでもない思い上がりだったとエマは恐ろしく思う。
この人は神、いやそれ以上の畏怖されるべき存在なのだ。
オーク一万匹など、アキト様が恐れるわけがないのも当然だった。
「アキトさん、あのなんて言うか僕たち凄く驚いてしまって、でもありがとうございます」
礼を言うマールに、「まだ終わっていないぞ」とアキトは厳かに言う。
その視線の先に、大量に降り注いだ土砂から命からがら抜け出したオークロードがいた。
「アキトさん」
「俺は助けると言ったが、全部やるとは言っていない。あれがおそらく最後のオークだろう、できるか?」
腕を組んでいるアキトは、みんなの反応を見て。
この期に及んで、ちょっと一人でやりすぎちゃったかなと思ったのだ。
だから、たまたま生き残ったオークロードを見てホッとして、あれはマールたちに倒させてなんかいい感じに話を締めるつもりだ。
「アキトさん、ありがとうございます。あいつは、僕たちがやります。みんな行くぞ!」
オークスレイヤー団は、最後に一匹残った半死半生のオークロードをフルボッコにして勝利した。
アキトはその間に、そこらに散らばっている一万ものオークの死体を空間収納に入れていったのだが、むしろこっちの作業の方が大変だったりした。
「収納魔法って、結構魔力使うんだな」
なんだかこう自分の頭の中にある架空のカバンがパンパンに膨れ上がって、ずっしりと重たいイメージである。
ここまでの量になると、そりゃ空間収納とはいえ無理があるという話であった。





