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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
42/59

専属護衛と主、立場逆転?



事件が起きる数時間前。

   それは、子機にでかけるついでに買い物を頼まれて家を出た直後に男から声を掛けられたところ

  から始まった。


   「愛美奏様」

   「…」

   「おでかけですか?」

   「…散歩ついでに、買い物を頼まれました」

   前は瞬間移動を使ってさっさとスーパーに行っていたが、今の彼女はこの時間まだ営業時間では

  ないことを把握しているため、すぐに瞬間移動を使うことはなかった。

   「お買い物ですか?…この時間帯だと、まだ開店してないかと」

   痛い所を突かれた。

   そのことにムカついて愛美奏は「知ってますっ!」と、気分を悪くする。

   「時間潰しにその辺を散歩してきます」

   「瞬間移動は使わずに。ですか?」

   「使いませんっ!歩いていきます」

   「では、私もご一緒させていただきます。愛美奏様を守るのが私の役目ですから」

   「守らなくていいです。自分の身は自分で守ります」

   「いいえ、守らせてください。今の貴女は…俺より弱い」

   轟鬼が突然変なことを言い出した。

   今の愛美奏が自分より弱いと。はっきりとした口調で。

   しかし、愛美奏は彼の侮辱に何も言わなかった。

   「愛美奏様、今の貴女は…万能が使えない。違いますか?」

   「…」

   「愛美奏様。万能が使えなくなった理由を轟鬼に説明してもらえませんか?」

    

   その後、愛美奏は轟鬼にこれまでのことを話した。

   時間操作を使ったこと。轟鬼の存在を消した罪を償う反省として、学校へ通ったこと。

   そして、轟鬼の別の未来のことをぶらぶらと散歩しながら…。全てを話し終えた時には、

  清合湾の国立公園まで足を運んでいた。


   「別の未来…だとしても、力を持って生まれ、手を汚すことに変わりはない。ただ違ってい

  たのは…愛美奏様との出会いだけ。轟鬼俊彦でなければ、貴女の護衛に就くことは決してなか

  ってでしょうから」

   『護衛なんて必要ない』と、愛美奏はそう言いたかった。だが、ここは敢えて言わない。

   事件の発端は愛美奏の怒りが引き起こしたものなのだから、また同じ事を繰り返しそうで

   怖かった。例え万能が使えなくても、口を慎んだ方が良いと…。

   「とはいえ、今後また同じ過ちを繰り返さないために、一つ提案があります」

   「提案?」

   「万能の使用権限を俺に託してもらえませんか。今、貴女が使えなくても、俺の力を利用すれ

  ば、使える可能性があります」  

   「下剋上でも企んでるの?」

   「いいえ。それなら、提案などとは言わないでしょう。それに今の貴女は…「弱いって言いた

  いんでしょ!分かってるわよ」

   思わず怒鳴ってしまった。

   愛美奏も『しまった!?』と、自分の行いを後悔する…が。

   「愛美奏様」

   「何よ」

   「反省、してますか?俺を消したことを」

   「…」

   「反省してますか?」

   「……はい」

   これでは、どっちが主か分からない。だが、したことは事実なので、首を縦に振るしかなかっ

  たのである。

   「しかし、俺一人が独断で決めたことを父が許すはずがありません。そこで愛美奏様に一つ

  お願いがございます」

   


   お願いの内容は、聞かなくてもだいたい予想がついていた。

   轟鬼俊彦を消したことを愛美奏は深く深く後悔する。そして、このお願いによってそれがより

  一層に増すことを万能なしの彼女は知る由もなかったのだった。

  

   

   

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