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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
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ドッジボールトラブル



  

   幼い頃、体育の授業でドッジボールをする機会が一度だけあった。その際、私はテレパシーを

  使って敵チームの心を読み、投げたボールを行動予測で交わして最後まで残っていた。しかし、

  今の私にはテレパシーも行動予測も使えない。敵チームに渡ったボールに当たりたくないと、他の

  女子生徒に混じって必死で逃げていたが、背中に思い切りボールが当たって倒れてしまった。

  「痛い…」

  そう言いながらも、痛みが走る背中を手で擦りながら外野の方へ回る。

  「大丈夫?さっきすごい音したよね?」

  背中をちらっと見て、最初にいた外野の女子に声を掛けられる。

  「あぁ…うん。そうだね」

  「あれちょっときつすぎない?さっきから気の弱い子ばっか当ててる気がする」

  「私もそう思う」

  「私も。監視ロボどうなってるのよ」

  私より先にボールに当てられた女子二人が敵チームにいる女子達への不満を溢した。実は体育の

 授業がドッジボールと決まった際、敵チームの彼女達が勝手にチーム分けを行ったため、私がいた

 チームの女子は皆不満を持っていたのだ。ゲームのルールに反しているなら人型ロボットも彼女

 達の行動を無視できない。だが、ボールを投げる力が強く、弱い者ばかりを当てているというだ

 けでルールに反しているとは言えない。それから体育の授業が終わった後、事件が起こった。


  「あぁ~楽しかったぁ~」

  「これから体育はずっとドッジがいい」

  授業が終わり、ドッジボールは終わって清々しい言葉が敵チームから聞こえてくる。それはそうだ。

 自分達が余裕で勝ってボールを当て続けたのだから。けれど、そこで怒りの声が飛び交う。

  「何が楽しかったよっ!ふざけんなっ!」

  「私達がろくにボール投げられやしないからって、バカ力で投げまくって」

  「いい加減にしなさいよ!」

  お怒りはごもっともだ。けれど、敵チームの女子達も黙ってはいない。

  「何よっ。あんた達が積極的になってないから、あたし達がチーム分けしたんじゃない」

  「協力しなかった方が悪いんじゃん?」

  「文句があるんだったらちゃんとあたし達に協力しなよ。ガキじゃないんだからさ」」

  これは予知がなくても想定していた展開。確かに敵チームの彼女達が仕切らなかったら、ドッジ

 ボールはやれてなかった。非積極的だった自分達にも非がある。しかし…。

  「はぁ!?そっちがさっさとチーム分けしたくせに何言ってんのよ!」

  「もう頭にきた…監視がいようと関係ないっ!」

  ここで女子達の激しい喧嘩が始まってしまってしまい、人型ロボットが数台駆けつける騒ぎにな

 った。


 

  人型ロボットが撮影した証拠映像により、騒ぎの発端である敵チームの女子生徒達に対して一人

 2,000ポイントの罰金。そして、私のいたチームで喧嘩に参加した女子生徒数名には一人

 1,000ポイントの罰金。喧嘩に参加していなかった私を含む他の女子生徒達には、一人500

 ポイントの罰金と反省文を書かされることになった。

  「500で済んだとはいえ、大きいな」

  2,000よりはマシだが、500は大きい。節約しないとこの先飲み食いなしで過ごさなけれ

 ばならなくなる…。こんな時、時間操作が使えていたらと考えながら、まず女子寮と男子寮の境界

 線にある自動販売機で飲み物を購入する。買ったのは一番安い紙パックの麦茶。

  「あぁ~しばらくは麦茶で我慢か」

  と、紙パックに付いてあるストローを挿して麦茶を飲んでいると…。

  「あっ、いた」と急に声を掛けられ、思わず飲んでいた麦茶を吹き出してしまう。さらにげほげ

 ほと咳込みながら、私はその場で座り込んでしまう。

  「あっ、ごめん。まさかいるとは思わなくてつい…」

  謝って意味が分からない言い訳をしているのは、本日三度目の笑馬。彼も自動販売機で飲み物を

 買いにここへ来たのだろうか?…とそんな疑問よりもまだ咳き込んでいて正常に息することが出来

 ず、しばらく笑馬に背中を擦ってもらっていた。

  「…見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありませんでした」

  「いや、俺も急に声掛けたのが悪かったんだ。ごめん」

  「お詫びに何か奢ってあげたいけど、今日の体育で500ポイント没収されたから安い麦茶ぐらい

 しか…」

  こんな時、予知があれば…とまた思ってしまう私。だが、今はそれは使えない。万能なしでは本当

 に自分は何も出来ない無力な存在なのだと思うとますます気持ちが暗くなっていく。

  「いいってそんなの。っていうか、女子の体育…大変だったね」

  私から口にしたこともあり、笑馬も話に触れた。テレパシーがあれば正確な彼の気持ちが読めるの

 に、それが出来ないのが残念でならない。まぁ、だからと言って彼の印象が変わることは恐らくない

 だろう。

  「背中当てられたんでしょ?大丈夫だった?」

  「えっ?何で私がドッジで当てられたこと知ってるの?」

  男子は体育館でバレーボールをすると聞いていた。女子のドッジボールは運動場で行っていたから、

 体育館で見ることは不可能。笑馬はどうしてそのことを知っているのだろうかと私は不思議でならな

 い。

  「クラスの女子から聞いたんだ。菊馬さんが背中にボール当てられたって話してて」

  「それならどうして教室にいた時に話してくれれば良かったのに」

  「いっ、いや……」

  「ん?」

  「そんなこと皆の前で言ったらからかわれるじゃんか」

  「はぁ?」

  何を今更…。あんた朝からクラスの皆の前で私を笑わせようとしてるじゃないの。それとこれと

 どう違うのかちゃんと説明してほしいよ、マジで。

  「菊馬さんだって、皆の前で心配されたら恥ずかしいって思うでしょ?」

  「まぁ…そうだけど」   

  だから、どう違うんだよ。まるっきりわけ分からんぞ。

  「とっ、とにかくっ!何ともないならそれでいいよ。じゃあまた明日っ!」

  笑馬は私にそう言うと逃げるように男子寮へと去って行った。彼が去った後、私はやっぱりこん

 な時テレパシーがあったらと感じるのだった。

  

  

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