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危機回避・未来  作者: 中野翔
僕に危機回避能力は存在しない
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転校生




    5月6日、日曜日。

    GWの最終日、炎樹が何の連絡もなしに幸磨達の家へ遊びに来た。

    彼には月冴が対応し、リビングで二人きりで話をすることに。

    「何しに来たんだよ」

    麦茶の入ったコップを渡した後、月冴は早速用件を聞く。

    彼が家まで来ることには何の問題もないはずだが、それでも聞かねばならない。

    「決まってるだろ。遊びに来たんだ」

    炎樹は麦茶を半分ぐらいまで飲んでからそう答える。

    今日で長い休みが終わり、明日から学校だ。そうなると必ず母親が子供に尋ねるセリフは

   これだ。

    「炎樹。お前、宿題は終わったのか?今日で休みは終わりだぞ」

    「ん?宿題?」

    なんのことだ?と言いたげに炎樹が月冴に首を傾げる。

    これはとぼけてるわけではなく、本当に身に覚えがないのだ。

    「お前…先生から出されてただろ。長いお休みだから宿題いっぱい出しますねって」

    「そんなのあったか?」

    「あったよっ!」

    月冴の言葉を聞き、炎樹は自分の中に眠っている記憶を振り返った。

    そしてGW前の登校日に担任教師から『いいですか。お休みだからと遊び呆けて宿題するの

   忘れたなんてことがないようにしてくださいね』と言われていたことを炎樹は思い出した。

    「あー……そういえば、そんなこと言われてたような気が…」

    「気がするじゃない、言われたんだよ!お前、明日から学校なんだぞ。どうするんだ?」

    「うーんー…困ったなぁ」

    炎樹は腕を組んで少し考え込んだ。

    月冴は自分の愚かさに失望しているのかと思っていたのだが…

    「あぁ…だめだ。休みの宿題で何を出されてたのか、全然思い出せないぞ」

    炎樹が考え込んでいたのは自分の頭ではなく、宿題のことだった。

    「そこからかよっ!」

    子供の頃から知ってるとはいえ、炎樹の忘れん坊には困ったものだ。

    自分の責任だと言って突き放すことも出来たが、月冴は幸磨と協力して炎樹の宿題をたった

   一日で終わらせたのだった。


   

    5月7日、月曜日。

    GWが明けて今日からまた学校生活が始まる。

    炎樹は幸磨と月冴のおかげで担任から雷を落とされずに済んで、とても喜んでいた。

    「いやぁ~二人のおかげで助かったよ」

    「言っとくけど、今回だけだぞ。次は自分でなんとかしろよな」

    「分かってるって。次からは気をつけるよ」

    そうは言うものの、炎樹がまた宿題を忘れて自分達に泣きつく姿を想像してしまう月冴。

    幸磨も全く同じことを想像していて、炎樹は二人に全く信用されていなかった。


    学校へ着き、自分達のクラスへ入ると、マリアが三人に「おはようございます」と挨拶。

    その後、月冴・炎樹・幸磨の順に三人はマリアに朝の挨拶をした。

    「皆さん、先生からお聞きになりましたか?」

    「えっ、何を?」

    マリアから聞かれて最初にそう答えたのは月冴。

    三人は今さっき学校に来たばかりなので担任教師とは顔を合わせていないのだから、何か

   聞いたか?と聞かれても何も答えられない。

    「えっ、もしかして先生が風邪をひいてお休みになったとか?」 

    「お前はもう一日お休みが欲しいだけだろ」

    GWの宿題を最終日までほったらかしにしていた人には贅沢な願いだ。

    「マリアちゃん、何かあったの?」

    月冴の代わりに幸磨がマリアに尋ねる。

    「いえ…その…実は先生から、このクラスに転校生が入ると言う話を聞きまして」

    「転校生?このクラスに?」

    「ええ。女の子だそうですよ」

    幸磨とマリアが話しているのを聞いて、月冴と炎樹は二人で内緒話を始める。

    「女子か…。これで男3、女3…それでもまだ少人数だな」

    「マリアちゃんはともかく、問題は伊東楼だな」

    炎樹と月冴が真剣な話をしたその直後、「僕がどうかしたか?」と声がかかる。

    「「っ!?」」

    後ろに振り向くとそこには楼の姿があった。

    彼女の気配に気がつかなかったことに二人は驚きを隠せなかった。

    だが反省する間もなくマリアが楼に駆け寄り、彼女をとられてしまう。

    「楼さん、今日私達のクラスに転校生の女の子が入ってきますよ」

    マリアが早速その話題を持ちかける。

    「そうなのか?良かったじゃないか」

    楼はマリアにそう言うと、さっさと自分の席へ行ってしまう。

    マリアは転校生が女の子だと聞いて楽しみにしていたが、楼はそうでもなかったようだ。

    その後も転校生の話で盛り上がっていると、HRの時間となり担任教師が女子生徒を連れて

   クラスへと入って来た。


    「もう知ってるかと思いますが、今日からこのクラスに新しい生徒さんが入ることになりま

   した。…では、皆さんの前で自己紹介を」

    「はい。分かりました」

    黒板に白いチョークで、大きく綺麗な字で『歌藤かとう桜華おうか』と女子生徒は

   自分の名前を書いた。

    「初めまして。歌藤桜華と言います。よろしくお願いします」

    桜華が自己紹介を終えると、担任教師は空いている席を指定して彼女をその席へ座らせて

   HRの続きを行ったのだった。


    



   

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