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吸血鬼の慟哭  作者: 不田 颯奈夜
第四章
21/24

part4

 其処には、市街まちが在った。

 否、市街と呼ぶには広過ぎる。一つの村が在ったと言うのが最も的を射て居るだろう。

 家が在り、店が在り、農地が在り、人が居る。

 其処は殆ど――私が居た所と大差の無い――村だった。

 私が居た村とは異なる点が在るとすると、其の場所は地下室で在り、天井には窓が在り月光が射し込んで居た事と、そして……其処には活気が無い事。

 其処に満ちて居た雰囲気を敢えて表現するのならば、其れは“死”と言う一文字が相応しい。

 人々は確かに生きて居る。はっきりと動いて居る。然し、感じられたのは“死”と言う印象イメージだった。生気が感じられなかった。

 気持ち悪い。

 何と無く、そんな感情を抱いた。

 其処に充満する“死”の印象イメージが私に不快感を与えて居た。同時に、恐怖を。

「僕から問わせて貰おう。此の場所は何だ。住民は何者だ。そして……」

 先生が領主様に詰め、更に続けた。

「……何故住民全員が吸血鬼と化した人間なんだ」

 先生の放った問いは衝撃的で、且つ一方で納得の行く物で在った。

 吸血鬼に血を吸われた者は一度死に、吸血鬼として蘇生すると言う。此の村が“死”の雰囲気を漂わせて居るのは其の所為か。

 領主様が口を開いた。

「御答えしましょう。此処は村です。流行り病の罹患者の……いえ、罹患者だった者達の村です」

「如何言う事だ……いや、待て、まさか……? ……一つ疑問が有る。吸血鬼が人間を吸血鬼にするには、吸血行為を行う際に吸血鬼自らの血を人間の体内に送る必要が在る筈だ。だが、単なる貴殿の娯楽の吸血で在るならば、態々人間を吸血鬼にする必要性を感じない。此の事は、病の治療と関係が在るのか?」

 先生が更に問う。然し、何かを理解した様子だった。

 領主様が答える。

「ええ、御察しの通りです。罹患者を生かす為に必要だった。そう言えば納得して頂けますか?」

「……ああ。理解したよ。貴殿は荒療治ながら流行り病の治療法を確立させた。副作用の酷い治療法を、ね」

 先生が目を瞑って呟く様に言った後、少し哀しい顔をして私の方を向いて、

「僕に決定権は無い。決定権を持って居るのは君丈だ。君にとって究極的な選択に為るだろう」

と今一つ意味を捉え切れない事を語り掛けた。

「あの、先生、如何言う意味ですか?」

「其れは其処に居る吸血鬼の領主様に訊くと良い。

 そうだ、其れともう一つ。僕は君に謝らなくては行けない。大口を叩いたが、僕に君の病を治す事は出来ないみたいだ。本当に申し訳無い、約束を守れなくて」

 先生が私の事を優しく抱き締めた。

 私は、答えなくては。

「良いんです、先生。先生が居なければ何方にせよ野垂れ死んで居たんですから」

「そんな事は関係無い。僕が君を安心させようと無責任な事を言って、結果的に大嘘を吐いてしまった。此れは、僕が一生背負わなくては行けない十字架だ」

 先生は、私の言葉等御構い無しに自身を責め、そして私を抱き締める力を強くした。

「本当にごめんよ」

 先生が耳許で絞り出す様な声で囁いた。

 先生の温かみを感じながら、私は自分の動悸が速まって居る事、体温が上がって居る事に気付いた。

 何時迄も大人しくして居る訳にも行かない。

「先生、先程の選択とは何ですか。私は何を決定しなくては行けないのですか」

 そう先生に問うた。

「君が選択しなくては為らないのは、副作用の酷い治療を受けるか、奇跡を信じて待つか……いや、はっきりと言うべきだな、生きるか死ぬかだ」

「生きるか死ぬか……?」

「ああ。扨、説明してあげたら如何だい、領主様?」

 先生が領主様に話を振った。

 そして、領主様が語り始めた。流行り病に就いて。領主様がして来た事に就いて。そう、則ち流行り病の治療法に就いて。


 お久しぶりです。颯奈夜です。

 試験週間も挟み、大変長い間隔となってしまいましたが、やっと更新出来ました。

 お話は核心に大きく近付いたかな、と。あと二話で終わる予定ですが、ひょっとしたらもう一話必要となるかも。

 兎に角次話はクライマックスな予定です。どうぞお楽しみに。

 また、過去掲載していた小説を書き直したり加筆したりして再掲しました。そちらもよければ読んでみて下さい。

 では、終わりの近付いた吸血鬼の慟哭。最後までお付き合い頂けると幸いです。

 それではまた次話でお会いしましょう。

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