No. 07 クッキング晴香
前回は人物紹介なんかでお茶を濁してしまいましたが、今回はちゃんと本編の続きです。
なんか、今回あまり進んでません。内容もクッキ〇グパパか、ちょっと前に流行った料理物みたいになったので、タグを増やすことにしました。
仕事も終わり帰宅中に何度も明希ちゃんに連絡してみたけど、まったく反応が無い。あの子は何処ほっつき歩いてるんだろう。
明希ちゃんの男の子な姿を私の同僚に見せていいものか、取り敢えず明希ちゃんにはメッセージを送っておいたけど不安である。
「あのね、明希ちゃんが無理って言ったら帰るか別の所に移動するからね!」
「まぁ、晴香ったらそんなに独り占めしたいの?」
「高橋さん、佐藤さんは二人の時間を邪魔されたくないんですよ」
「あらー、ハルちゃんラブラブなのねえ」
三人は私が牽制しているのを分かってて、敢えて茶化してくる。この人達は本当のこと知ったら、どーなるんだろ?
近所のスーパーで酒とツマミの材料を買い込み、文句を言いながらも私は三人を自分の部屋に案内するのであった。
「ただいまー、明希ちゃんいるー?」
部屋に戻り明希ちゃんを探してみるも、何処にもその姿がない。どうやら今朝出掛けたっきりのようだった。
「メッセージも既読にならないし、どこに行ったのよ…」
取り敢えず明希ちゃんを探すのを諦めて、私は三人を部屋に招き入れた。三人が私の部屋に入るのは初めてではない。みんな勝手知ったるといった様子で室内を歩き回る。
「ねぇー晴香ぁ、写真の子はどこぉー!」
「高橋さん、居ないみたいですね」
「ハルちゃーん、何処に隠してるのー?」
「ちょっと、三人共!まだ出掛けてるみたいだから、勝手に捜索しないでよ。ほら、オツマミ作るからお酒でも飲んでなさい」
歩き回る三人をリビングに押し込み、私は買ってきた材料で軽いツマミを作り始める。こうなったら、とっとと酔い潰してしまおうとの算段である。
それでは『晴香の簡単時短クッキング』の始まりだ。
まずは一品目、水洗いしたレタスを手でちぎりサラダボウルに敷き詰める。大根と人参をスティック状に切り、電子レンジで軽く熱を通して、同じくスティック状に切った胡瓜と共に冷水にさらし、水をよく切ってから先程のレタスの上に彩りよく並べ、そこに水洗いしたプチトマトを適当に配置する。辛子マヨネーズと豆板醤にラー油を混ぜ込んだソースの二つの小皿を添えて『なんか適当に作ったけど見た目の良いサラダ』の出来上がり。
「はい、取り敢えずサラダからね」
リビングにサラダを持っていくと、すでに飲み始めていた三人がはしゃぎだす。よしよし、どんどん飲んで下さい。
「いぇーい、晴香のご飯食べるの久しぶりだぁ!」
「佐藤さんホントに料理上手ですね」
「ハルちゃん良いお嫁さんになるわねぇ」
「はいはい。言っときますけど、こんなの料理の内に入りませんからね?」
三人の前にサラダを置いてキッチンに戻り、次の料理に取りかかる。私はサラダを作る前にオーブンに入れていた料理を取り出した。
「うん、美味しそうな匂い!」
油揚げに包丁を入れて袋状にして中にとろけるチーズを入れたら、砂糖・醤油・料理酒で作ったタレを塗り上から粉チーズをかけてそのまま温めたオーブンへ。チーズに焼き色が付いたら刻んだネギをトッピングし、再び上からタレをかける。ジュワっと音をたてて、焼けた油揚げとチーズにかけられたタレの匂いが食欲をそそる『油揚げのチーズ焼き』の出来上がりだ。
「さて、電子レンジがもうすぐかな?」
すると、電子レンジがチーンと音をたてる。サラダを作る際に、実はまだ料理を仕込んでおいたのだ。
皮を剥いて輪切りにした山芋に冷凍食品のインゲン豆を添えて、その上にバターと醤油を適量かける。後は電子レンジでチンするだけ。名付けて『山芋とインゲン豆のバター醤油』とそのまんまの料理の出来上がり。
この二品をリビングのテーブルに置いて、私はまだまだオツマミを作る。
「あと二品もあればいいかな」
サラダで野菜を切る時に、一緒に切っておいた茄子は既に下ごしらえが済んでいる。サラダを作ってる間に水を張った鍋に入れて、沸騰させたら直ぐに止めザルに上げたらキッチンペーパーに包んでおく。ここまで下ごしらえが済んでいたら、温めたフライパンで挽き肉を豆板醤と一緒に炒め、先程の茄子を投入。白だし・砂糖・醤油を入れ、その水気を利用して味噌を溶いたら出来上がり。
私の好物のひとつ『茄子味噌炒め』が美味しそうな匂いを放っている。
「あと一品は唐揚げでいいかな」
スーパーで買ってきた唐揚げサイズに切り分けられている鶏肉を耐熱ボウルに入れ、砂糖・醤油・料理酒・生姜・ニンニク・塩胡椒を次々に投入。ちなみに生姜とニンニクはチューブ入りのやつを使っている。
調味料を入れた鶏肉を揉むようにして味を馴染ませたら、上からラップをして電子レンジに。ここである程度熱を通しておく。
電子レンジである程度熱を通す理由としては、揚げる時の時間短縮の他にもうひとつ理由がある。
これは電子レンジで食材を温めたる時の仕組みが重要で、簡単云うと電子レンジは食材に含まれる水分を超高速で振動させてその水分を加熱させている。加熱した水分は蒸発するほどの高温になるのだか、食材から水分が抜け出るとそこに隙間ができる。その隙間に先程の調味料が入り込むことで味がしっかりと染みるのだ。
と言っても、これが科学的に実証されている事かどうかは、私は知らなかったりするので本当のことか分からない。
こうすると何となく美味しくなるという実体験があるだけである。
電子レンジから先程の鶏肉を取り出し生卵を落としたら再び揉み込み、小麦粉をまぶしたら加熱したフライパンで揚げ焼きにする。キツネ色に焼き上がったら唐揚げの出来上がりである。
「よし、出来た!こんだけあれば大丈夫だろう」
料理を持ってリビングのテーブルの前にぺたんと座る三人の元に行こうとした処で、玄関の扉がガチャリと音をたてて開いた。
「晴香さんただいま!何かいい匂いがするんだけどー?」
何処で買い物したのか、紙袋を大量に提げた明希ちゃんが帰って来てしまった。バッとリビングで酒を飲む三人の方に視線を向けると、待ってましたとばかりに揃って立ち上がり出迎えの準備をする。
「ちょっと、待っててね!」
私は明希ちゃんと三人に聞こえる様に同時に待ったをかけて、急いで玄関へと向かった。
「お、おかえり明希ちゃん!何度も連絡したのに何処にいってたの!?」
「ただいま晴香さん。心配させてごめんね、今日はヒカルさんと買い物してたんだけど、スマホの充電忘れてて電源切れてたの」
明希ちゃんも成人した大人なので別に心配はしてなかったのだが、取り敢えずそういうことにして頷いておく。というか、心配なのはこれからの事なのだけど。
「あのね、今リビングに同じ会社の友達が来てるんだけど、明希ちゃんが話し合わないとか無理そうだったら余所に行こうと思うんだけど?」
私の『無理って言って!』と遠回しに告げている言葉に、明希ちゃんは気付いた様子も無く顔を綻ばせた。
「晴香さんの会社の友達ですか!?うわぁー、お話ししてみたいです!」
空気を読んでくれない明希ちゃんに焦る私。
「で、でも、明希ちゃんそんな格好だし、大丈夫かな!?」
今の明希ちゃんの服装は、太めのジーンズとTシャツの上にブランド物のジャージとキャップを被ったスポーティーな男の子といった感じである。
この姿だと殆んど男の子にしか見えないのだ。
「うーん、まぁいいんじゃないですか?それに晴香さん、その両手の料理が冷めると勿体無いですよ?」
明希ちゃんに言われて自分の両手に視線をやると、さっき作ったばかりの料理をまだ持ったままだった。
そんな風に慌てる私の背後から、声がかけられる。
「ちょっと晴香、早く紹介しなさいよ!」
「うわぁ、ちっちゃくて可愛い男の子ですねぇ」
「ほうほう、これがハルちゃんの…」
うう、これはもう諦めるしかないか。観念した私は明希ちゃんをリビングに通して両手の料理をテーブルに置く。
すると、三人が口々に自己紹介を始めた。
「どーもー、晴香の同僚の高橋真珠です。よろしくね」
「はじめまして、佐藤さんと仲良くしてもらってる同期の吉本佑実です。よろしくお願いします」
「えーっと、ハルちゃんの先輩の田中朱美です。うーん、やっぱり女の子に見えないんだけど…」
最後の朱美さんの言葉にビクリとする私。
そんな私の様子を見て、明希ちゃんがいつもの悪巧みする時の顔をした。あっ、この子やらかす気だ。
悪い予感がした私が明希ちゃんを止めようするが間に合わない。制止しようとする私に背を向け、明希ちゃんは三人に飛んでもない言葉を放った。
「はじめまして!晴香さんの彼氏の坂本明希です!」
明希ちゃんの言葉に三人の顔がニンマリとして私に向けられる。あーあ、この子やりやがったな。
…つづく
料理は好きです。私の場合は料理というか調理なのかな?
時間をかけずにパッと作る。いかに早い時間で作り上げるか?基本的にずぼらな私は、クック〇ッドなんて見るのも面倒で、有り合わせの物で適当なイメージを元に料理を作ります。
意外とそれで美味しく出来るのが不思議。まぁ、昔と違って今は調味料が豊富ですからね。
漫画やアニメの料理下手ヒロイン達は、味覚以前の問題だと思う今日この頃…
次回は30日の0時更新の予定ですが、もしかしたら早くなるかも。