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“矢ムギ”
そうして歩いていくと今度は、ムギのようなものを売っている場所がある。
この世界にもムギがあるのか? でもムギが原料のパンは木になっていたようなと思ってついそちらの方を見ているとマリーが、
「“矢ムギ”ですね。どうかしましたか?」
「僕達の世界の、パンの原料に似ているなと思って」
「? 全く違うものなのに原料なのですか。味を見てみますか?」
興味があるので頷くと、マリーがそれを買ってきてくれる。
それをもらい、ムギの種の部分を一粒引っ張ってとり、口に入れると、
「……麸を洋風のだしで煮たような……牛肉? のような旨味があるきがします」
「その様子ではぜんぜん違うようですね?」
「はい。でも美味しいです」
そう言って僕は、二つぶ目に口をつけたのだった。




