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真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
責任の方位磁石編
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第九話

 ミチヤがエルーサにあった酒場で飲んでいるときだった。

 あ、ミチヤは酒は飲んでいないよ。ソフトドリンクだ。

 異世界に来てまで酒の年齢制限を守る必要はないと思うが、それでもなんとなく、日本人としての間隔が抜けていない。

 二か月くらい前に父さんに試しに飲んでみろって言われて飲んだことがあるくらいか。

 それくらいだな。

 まあ、イナーセルはもとからすごい量飲むし、フルーセも少々飲むくらい。ヨシュアは飲んではいけません。というか、一回舐めたらアウトだからな。


「なあきいたか、北の方角にある村で、なんか『ガベルスネーク』が増えたらしいぜ」


 ちょっと離れたところで冒険者がそんなことを言っているのが聞こえた。


「北にある村?『テリリアル』だったか」

「ああ、それ。確か、『ザナークル』で勇者召喚があったらしいが、その勇者が、テリリアル周辺の森にいた『ウルガニア』を倒したんだよ。ウルガニアは確かに厄介だったが、勇者は、村人が指定した数以上のウルガニアを倒したらしい。で、なんか地中に良くいるモンスターも絡んでいると思うが、なんかガベルスネークの量が増えたんだとか」


 ザナークルはミチヤたちを召喚した国だ。

 で、テリリアルは、そこから来たに行った方向にある。

 なお、エルーサは、ザナークルから東にある町だ。

 で、さっきからの話を聞いていたら、まあ簡単に言えば、勇者のせいで食物連鎖に影響が出たらしい。

 クラスメイトは何をやっているのやら、ええと、黒川零士だったか。あいつはなんとなく分かっていたはずだが、さすがに食物連鎖のことは考えていなかったらしい。


「マスター。ウルガニアから取れる素材は優秀な部分が多い。エルーサのダンジョンの二十階層に相当する。このことはザナークルでも把握しているはず」


 変に情報力があるのって周りからはすごく迷惑なのだがな。


「……はぁ」

「時期的に見て、マスターの仲間か?」


 アイツらがねぇ。


「仲間とは思っていないよ。同郷だ」

「ま、それでもいいけどよ」

「ヨシュア。ガベルスネークのことは知っているか?」

「繁殖力は高いと聞いたことがある。あと、雑食らしい。その範囲は人間にも及ぶ。ウルガニアも人を食べないけど襲う。ガベルスネークは感染性のある毒を傷口に付ける。しかも、知性もあって厄介」

「ガベルスネークの方を倒してくれれば良かったのにな……」

「同感」


 しかし、感染性か。既に毒で悩んでいる人もいるだろう。

 ミチヤも三十人の職業は把握しているが、性格的、ステータス的には、トップツーで荒川と海道に分かれるだろうと推測している。

 素材に食いつくとなると、荒川だな。

 海道は職業が『勇者』だ。国にあった強力な聖剣とかも使える可能性がある。

 荒川はそう言う職業ではなかったと思う。なんだかんだ言って、素材を求めるだろう。

 さらに言うなら、ミチヤが見る限り、荒川もゲーマーだ。素材を使って強化するという考えは海道よりも強いはずである。

 まったく、面倒なことになったものだ。

 馬車に戻って考えたが、結果。


「尻拭いしに行くか……」


 本当のことを言うと面倒だが、クラスメイトの尻拭いしてもばちは当たるまい。それに、ミチヤも一応は勇者召喚されたのだ。巻き込まれた設定だけどな。変な視線を向けられるのはご免である。

 ……はぁ。


「マスター。何が必要かまとめてみた」


 ヨシュアのPCの画面には箇条書きにされていた。


・ガベルスネークの毒の解毒剤を大量に用意する。

・ガベルスネークを適度に倒す。倒しすぎるともっと厄介な虫が増えるので気を付ける。

・『シュルワーム』を一匹、森に放し飼いにする。


「まとめるとこうなる」

「ウルガニアの特徴が今一つ俺には分かっていないのと、シュルワームってなんだ?」

「ウルガニアは簡潔に言うなら、岩石の蛙。シュルワームは、ちょっと大きいミミズで、ガベルスネークを食べる。そして、ウルガニアの好物」


 ……なんかすごいな。

 蛙って蛇をたべたっけ、逆のような気がする。あと、ミミズが蛇を食べるってどういうことなんだ?


「なんかすさまじいな。で、シュルワームは一匹でいいのか?」

「繁殖力的には一匹でいい」

「なるほど、で、シュルワームを手に入れる方法と、ガベルスネークの毒の解毒剤の作り方か」

「ガベルスネークの毒の解毒剤は私にもわかる。図鑑から把握出来た。でも、シュルワームの生息地は、ここからかなり遠い、直線距離で2000キロある。しかも、常夏で、気温が特に高いエリアにしか生息しない。捕まえるのも、強力な探知魔法がないと無理。魔法具でも、素材のランクが足りないから再現は無理」


 遠すぎる。

 というか、厄介だな。

 それにしても、常夏か。ていうか。地球でも、アフリカとかのミミズってでかいらしいけど……。


「となると……行ってみるか」

「またラシェスタに行くのか?」


 イナーセルはげんなりする。

 まあ、自分が売られていたところなのだ。何度も行くのは嫌だろう。店舗が違うにしても。

 ヨシュアはそうでもないようだった。


「たぶん他にあてがないしな」


 と言うことで、言ってみた。

 あの奴隷商、何か魔物も取り扱っているらしい。この前聞いた。


「で、シュルワーム売ってるか?」

「シュルワームですか。確かに一匹だけおりますが……運搬や飼育に恐ろしいほど手間がかかっておりまして、金貨四十枚、それほどの資金がなければ元が取れない状況なのです」

「こんなところにも運搬してきているってことは……」

「もちろん。今回のテリリアルのことも把握しております。ですが、運ぶ手段が今はないもので、しかも、ガベルスネークの毒は、想定しているよりも厄介なのですよ」

「まあそんなことはいい。一匹いるんだな」

「はい、ただ、こちらも商人でしてね……」

「金貨百枚だ。今すぐ出せ」


 ミチヤは金貨を百枚置いた。


「おい、マスター。そんなに出していいのか?」

「構わん」

「ふふ、あなたの思い切りの良さには脱帽です。少々お待ちを」


 数分後、赤色のちょっと大きなミミズが入った少々大きめのケースを出してくる。

 地球では、オーストラリアの『メガスコリデス・アウストラリス』という種類のミミズが三メートル以上に達する大きさなので、それほど大きいと言うわけでもなかった。


「マスター。これは本物」

「もちろんですよ。金貨百枚ももらってニセモノを出すような愚かなことはしません。それと、さすがに多いので、ちょっとしたものをオマケしておきますよ」


 店員が出したのは、ネオンサインと同じマークのカードだった。


「紛失にはご注意ください」


 ミチヤはカードをもらった。


「会員カードか?」

「まあそのようなものです」


 ケースをミチヤは持ちあげる。

 重さはそれほどでもなかった。


「あと、シュルワームはそれなりに強いモンスターです。とはいえ、その個体はレベル20ですがね」

「マスター。レベル的に問題ない。むしろ適任」


 予測していたのか、それとも偶然なのか……。

 はぁ、いろんな意味でそこが知れんな。この商会。


「それじゃあな」

「またのご来店をお待ちしています。それと、一つ教えておきましょう。ラシェスタには、白金貨百二十枚で購入できる最高級の奴隷がいるのです。頑張って下さいね」

「今の俺に白金貨百二十枚なんてよく言えたもんだ」

「マスター、白金貨百二十枚は金貨一万二千枚と一緒」

「なにかは知らんが買うのは当分先だな」

 

 ふう。

 ……ん、食物連鎖?


「思ったんだが、俺らって牛を狩りまくってるけど、それって食物連鎖的にどうなんだ?」

「あの牛は繁殖力はすさまじい。アリみたいにいる」


 それは多すぎである。

 牛がアリみたいにいたらそれこそ、牛によって世界が滅ぶ。

 まあ、家畜にしかならないのだろうが。


「まあ、それなら問題ないか。出発しよう」


 ただ働きにならないと言いな。

 そんなことを考えながら、ミチヤは進んで行くのだった。

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