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真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
責任の方位磁石編
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第八話

 クラス転移。

 それは無論、どこかの学校のどこかのクラスの生徒全員が集団で転移する。

 簡潔に言うなら、そこでも、物語は進んでいるのだ。

 ミチヤがいたクラスは全員で三十一人。ミチヤを除いて三十人となる。


「しっかし、ミチヤのやつ、まさか一日目で怖じ気づいて出ていくとは思わなかったな」


 耳にピアスをいくつもした男子、荒川風雅(あらかわふうが)はケラケラと笑う。

 顔はまあ悪くはない。身長も180センチとかなり高い方だ。

 恵まれた才能。と言うべきだろうか。父親が理事長と言うこともあって、好き放題やっている不良生徒である。

 だが、それで先生たちが強く言わない理由は、成績は悪くないからだ。

 全教科で80点以上を出しているし、しかも、親が理事長であるがゆえに、なかなか強く言えないのだ。

 全身に金属鎧を装備しており、槍を構えた姿は騎士だろう。


「そうだな。まあ、あのステータスで、しかも、なんのスキルもなかったんだ。ここはゲームの世界でもラノベの世界じゃなくて現実なんだから、強くなれるはずもないしな」


 黒髪の男子が無表情に言う。

 名前は黒川零士(くろかわれいじ)。身長は165センチほどでまあ普通だ。

 全身黒装束でダガーを装備している暗殺者タイプ。

 そして、言葉からなんとなく予想はできると思うが、所謂、隠れオタクというジャンルの人間である。

 なんだかんだ言って強いので変な目は向けられていない。


「あいつウザかったもんなぁ。いなくなってせいせいしたぜ」

「確かに」


 まあ、よくある話だ。意中の女の子が気に入っている男子がいて、気に入らなくて、その本人は居なくなったから気分がいいというだけのことである。

 ただし、本人たちも気づいていない。

 それが、テンプレだということを。

 しかしまあ、そういってクラスメイトを貶すことを言っていると不快に思う生徒もいる。

 それを本人に言うかどうかは別として。

 そして別の場所でも、話し合っているものはいる。


「夏菜。さっきから黙っているけどどうしたの?」

「え、あ、いや、何でもないよ」


 菊田夏菜(きくたなつな)式森茜(しきもりあかね)が話し合っている。

 夏菜は長い茶髪でとても整った容姿だ。どこに行っても通じる可愛らしさがある。

 身に付けているのは法衣で、僧侶、もしくは神官というものだろう。

 茜は身長は156センチで夏奈と一緒。

 眼鏡をかけていて知的な印象はある。外せば愛らしさがあり、しかも胸はクラスで一番大きい。

 メイン武器は短剣だ。


「また茅宮君のことを考えていたの?」

「うん、そうだよ。最近会えてないからね、去年とった盗撮写真があるから我慢できてるけど、なんとなくミチヤ君成分が足りなくて」


 色々と問題のある発言だが、茜はなにも言わなかった。

 所謂、慣れである。

 茜としては、付き合ったとしても茅宮君のほうが疲れるでしょうね。と思ったが、声には出さなかった。


「おーい。二人とも、ここにいたのか」


 そこにいたのは、身長180センチで長い黒髪で抜群にイケメンの男子、海道正哉(かいどうまさや)である。

 成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、サッカー部部長と生徒会長を兼任する化け物っぷり、親が資産家という要素が色々混ぜまくった感じの生徒だ。

 天職は色々あったが、正哉は唯一、『勇者』を持つ。そうであるがゆえに、運以外のすべてのステータスがのびやすいというチートっぷりだ。

 青を基調として金色の装飾をつけた鎧に、金色の剣。

 白馬に乗っていれば王子さまである。


「あなたは元気ね」

「もうそろそろ、俺たちもこの国の困っている人たちのための旅に出る段階になる。風邪なんてひいていられないからね」

「それにしても、魔王軍の殲滅なんて言われたけど、やっぱり旅に出るのは変わらないのね」

「今はまだ魔王軍の侵攻はおさまっている。でも、困っている人たちがいるんだ。俺たちは勇者なんだから、たすけにいくのは当然だよ」


 言っていることは間違っていないのだが……そこのところちょっと妙だと思わないのだろうか。

 まあ、正哉はいつもこんな感じである。

 言っていることは間違っていない。が、どうもよくわからないのだ。

 本人は思いやりが大切と言っている。

 茜は一度、ミチヤに聞いたことがある。

 思いやりについて、正哉は間違っているかどうか。

 ミチヤの返答はこうだ。


『思いやるってことは、他人のことを考えるんじゃなくて、他人に自分の考えを押し付けないことだろう。正哉は間違っていないし、正解を導き出しているわけでもない。ただ、その場かぎりで、偽善と判断されるようなことを無意識にしているだけだとおもう。今は、関わっている問題にたいして、自分のポテンシャルでどうにかできるから問題がないだけで、あとのことを考えないからな。正哉の進路は知らんが、よく考えて選ばせるべきだと思う』


 とのこと。

 まあよくそこまで考えることができるものだ。

 それにしても、どうなるのやら、

 現在、三十人いる。

 これを、風雅の班と正哉の班の半分ずつにわけて行うらしい。

 色々と面倒な部分は多いと茜は思う。

 そして、そんなことを考える人間はまだいる。


「さて、ミチヤ。俺は君が弱いままでいるとは思えないけど、どうしているのかな」


 庭が見える窓から、茶髪の男子、瀬戸春瀬(せとはるせ)が外を見ている。

 顔は正哉ほどではないが整っている。

 正哉と同じく、人の善性を信じるタイプではあるが、彼ほどのものではなく、よくも悪くもミチヤに寄った考え方をしている。

 ミチヤとはよく話す関係だった。

 去っていった今ではその真意はわからないが。

 本人は知らないが、ミチヤからの評価は『出来の悪い観察者』である。


「さて、こうなるパターンは予想ができなかったと言えば嘘にはなるが……本当に君はわからないな」


 春瀬は廊下を歩き始めた。

 どうなるのかは、もうわからない。

 しかし、もう歯車は回っている。

 尻拭いはだれがやるのかも、すでに決まっているのだった。

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