第七話
さて、夜もバッチリと寝て再開する。
夜間はフルーセに丸投げした。
元より寝ることすら必要としないのか、言葉通り無尽蔵の体力で魔物を蹴散らしていく。
寝ていたはずなのに、いく、と確信できるのは、実際に見たからである。
まあ、モンスターとはいえ、全身の骨を粉微塵にする勢いの蹴りだ。爆音必須なので、やっぱり五月蝿いのである。
まあそれでも、安全エリアのようになったことは間違いない。
二日目も進んでいた。
「今何層だったっけ?」
「二十四層だ」
イナーセルの疑問に即答する。
もう結構進んでいる。
途中にアンデッドの階層も無論あったが、問題なく進んでいる。
さて、エルーサのダンジョンは二十五層に別れている。
分かりやすく言おう。次でラストなのだ。
さらに言うなら、最下層にあるのはボス部屋のみ。
終わりになっているのだ。速すぎである。
「思えば結構集まったな」
「そりゃそうだ」
「まあ、ヨシュアが喜んでいるだけにも見えるけどな……」
確かに、先程からヨシュアは目を輝かせながら実験を繰り返している。
もとあった腐食液を改良し、ゾンビにぶっかけても倒せるものを生み出し、そしてそれを魔砲銃で打ち出せるレベルまで理解してしまった。
本人いわく、PC様々らしいが、それは知らんな。
「俺、ダンジョンの最深部にいくの初めてだからな。どんなのがいるのか楽しみだ」
「そうか」
まあ、せっかくのダンジョンだ。それくらい考えても別にいいだろう。
あと、イナーセルのレベルが96になった。
明らかに上がる速度がすさまじい。
あ、ミチヤとヨシュアは二人とも1だったが、ミチヤは12。ヨシュアは8になっている。
変な差である。
さて、最深部に到着した。
重苦しい雰囲気の扉がある。
「分かりやすいくらいボス部屋だな」
「ああ。そうだな」
何がいるのか……まあ、行ってみれば分かるか。
「行くぞ」
イナーセルが扉を開ける。
全員がなかにはいる。
暗いな。今までの通路は松明があったが……。
次の瞬間。入り口の方から松明が次々と灯っていく。
全体が見えるようになった。
そして、ドーム状の部屋の奥に、高さ十メートルくらいの鎧の騎士がいた。
それはもう大迫力である。
「これはスゴいな」
「ああ、そうだな。ヨシュアは下がっていろ。あ、そうだ、フルーセ、一発蹴り入れて来ていいぞ」
フルーセが喜んだ気がした。
まあ、ずっと荷車を引っ張っていただけだからな。
フルーセは竜の翼を限界まで広げると、もうスピードで突っ込んでいく。
騎士は剣で叩き落とそうとしたが、無駄であった。
そして、蹴りが騎士の腹に直撃する。
ズガアアアアアアアアというよくわからない音と共に蹴りがめり込んだ。
あと、鎧はなんか普通に砕けていた。
明らかに大ダメージである。
その証拠に、騎士が後ろに倒れ混んだ。
「あー……やっぱりこうなったな」
「ああ」
「フルーセ強い」
騎士は起き上がると剣を構え直す。
「俺もそろそろ行くか」
「行ってらっしゃい」
イナーセルも突っ込んでいく。
さあ、どうなる?
騎士が剣を降り下ろしてきた。
イナーセルはそれを、自分の持つ大剣で横にそらした。
「あいつも大概だな……」
身長差八メートルで、どうやれば剣でそらすことが出来るのだろうか。
まあ、そこはファンタジーの不思議要素であろう。
イナーセルは思いっきりジャンプして飛び上がると、砕けた鎧の部分に剣を叩きつける。
思った以上に斬れなかった。
騎士が固いのか。フルーセが常識はずれなのか……多分両方だろう。
ミチヤも腐食弾丸を放つ。
砕けていた鎧の腹の部分は溶けてなくなった。
鎧の奥には物凄くムキムキの筋肉がある。
「ていうか、自分がボスを勤めるダンジョンのモンスターの対策をしていないって……まあ、質は上がっているんだけどな」
なんか妙な話である。
まあ、効いているのは良いことだ。
思えば、あの冑の中身はどんな顔があるのか気になったが、なんか自殺されて色々面倒なことになりそうなので止めておくことにした。
しかし、なんというか……。
「ヨシュア。夜に俺が寝ている間にイナーセルの剣、強化したな」
「必要だと思ったからやった」
好奇心を抑えれなかったと言っているように聞こえるのは俺の気のせいか?
工具と共に、鍛冶の道具を一式与えたが、ヨシュアはそれをもとに自分専用で作ったようだ。
まず道具から、という意味だろうか。
武器に関してはミチヤは専門外なので何も言えないが、イナーセルの大剣の輝きが増しているのは事実である。
しかも、斬るときになんか変な光が出ている。
エフェクトというだろうか。とにかく、何かしらの追加効果が付与されているようだ。
「オラオラオラアアアアアアア!!」
イナーセルが不良にしか見えんな。
騎士が相手なので剣の勝負とかするのかと思っていたが、そんなことはなく、オーガとしての力と闘技場で身につけた技術、そして、ヨシュアが大剣を強化したことも含めてワンサイドゲームである。
しかも、イナーセルの雄叫びが一々うるさい上に気が散る、しかも、フルーセの蹴りがもうバカにできないほど強いのだ。
強力な腐食液や弾丸を放つミチヤが空気になっているレベルである。
けっかとして、まあ、無傷だった。
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騎士は倒すと、ドロップアイテムを残して消滅する。
なんだかんだ言って素材はすごかった。
さっきからヨシュアの目のハイライトがよくわかる。
「マスター。全部研究したい」
「まあ、金には困らないだろうから別に構わないが、管理はちゃんとしろよ」
「それなら問題ない。アイテムポーチを作ることに成功した。まだ容量は少ないけど、貴重品はこの中に入れておく」
「そ……そうか」
ヨシュアの雰囲気が強くなっている。
悪いことではない。
が、ちょっと怖かった。
あと、イナーセルのレベルが102となった。
やはり、上限が無くなっている……いや、上限がなくなったのか急激に上がったのかは分からないが、100を越えて上げることが可能になっているようだ。
ミチヤは43レベルになり、ヨシュアは24レベルになっている。戦闘回数の差でこうなっているのでまあ問題はないのだ。
色々なものがこれから生まれそうだが、悪い話ではないのでいいとしよう。
「さて、それじゃあ。さっさと戻らないとな」
ミチヤの言葉に三人が固まる。
「ああ、そういや転移させてくれる魔方陣とか無いんだったな……」
「めんどう」
「ごちゃごちゃ言わない。さっさと帰るぞ。資金も増えるだろうし、調味料もいいものが買えるはずだ。美味しいものを食わせてやるよ」
その言葉に極端に反応するのがこの世界の人間の特徴と言うべきなのだろうか。
目を輝かせてモンスターを倒していく。
さて、取り敢えずアンデッド系は売らないことにして、どれくらいの資金になるのだろうか。
分けて売っていった方がいいな。
で、ダンジョンから戻ってきて、ひとまず買い取り屋にいく。
まあ、いろいろとまわっていって……。
「金貨310枚に銀貨40枚か。恐ろしいことになったな」
しかもこれでまだ大量に在庫があるのである。
ダンジョンの深い部分にいくということの意味を知った気がした。
あとはまあ、めんどうなことにならなければ問題はないが……。
晩飯は脂っこいもののオンパレードだったが、問題はないようでバクバク食べている。
酒に関しても純粋に米から作ったものを出せば、イナーセルはグビグビ飲んでいる。
ヨシュアは一回なめたらダウンした。
フルーセも結構飲んでいる。
団らんというものは落ち着くもので、こんな日が続くことを願っていた。




