第五十話
「マスター。出来た」
「お、完成したか」
ヨシュアから渡されたものを見て、ミチヤは満足そうにうなずいた。
それは、刀であった。
パーツのすべてが黒いという漆黒仕様である。
ルークの脱皮素材から作り上げたものだ。
「こういった武器の存在は知っていたけど、作ったことはなかったから新鮮だった」
「まあ、刀なんて誰も持たないもんなぁ」
「マスターはなぜ知っていたの?」
「地球では、こういったものの製法なんていうのはちょっと調べれば分かるんだよ」
ミチヤが来る前、地球は西暦2019年だったがな。いつ使うんだよって話だが。
それはそれとして、このアムネシアにはそれなりに長くいるはずだが、刀を一本も見たことが無かった。
なんだかんだいって全員分の武器が出来上ったようだ。
イナーセルの大剣。
ヨシュアの魔砲拳銃。
ミーティアのレイピア。
ミラルドの短剣。
タイダロスのハルバード。
テラリアの騎士剣。
それぞれがすさまじいほどの性能を備えている。
まあ、シンプルなものがほとんどだし、そうであった方がやりやすい部分もあるので、あとは本人の実力次第だが。
「さて、で、何か分かったか?」
「分かっていませんね。一般的に認知されている神と、認知されていない神がいるので……」
まあ、ミーティアの言い分はもっともである。
「ふーん……そういえば伝説になっている神とかいるのか?」
聞きながらもコーヒーを口に含んだ。
答えたのはタイダロスだった。
「西の方に進んだある島では、一人の神によって安全安心だと聞いたな。たしか『創造神ゼツヤ』と言っていたはずだが」
「ブフォ!」
ミチヤは思いっきり吹きだした。
「……一体どうしたのだ?マスター」
テラリアが声をかけてくる。
無論。他のみんなも妙な視線だったが。
「いや……ちょっとな。ちょっと確認だが、そのゼツヤって言うのは、青いコートに、アイボリーのシャツやズボン、ブーツだったりするのか?で、黒い長剣を武器としている」
「うむ、その通りだ。知っているのか?」
「知らんわけじゃない。と言っておく」
あいつがいるんだな。
まあそれは置いておくか。
「話を戻そうか。一体どの神が仕組んでいるのかってことだが、これははっきり言って全然わからん。考えるだけ無駄だ。情報を手に入れてから考える。で、アイツらの現段階での目的だな。なんで金を集めているのかってことだが……」
思えば、何故資金が必要になるのだろうか。
神と言うのはもともと、かなりのポテンシャルを所有するが、地上ではそれが大きく制限される。そのため、魔力を大量に保有することで、自らの力を高めるのだ。
そして、その魔力を集めるための……まあ、悪く言えば餌として、何からの形で送り物をするのである。
神と言うのは、魔力さえあればいいはずなのだ。
資金を必要とするのは、一体どういうことなのだろう。
「資金を必要とするってことになるとは思うんだがなぁ……」
「金がいるのは、人間の方じゃないか?」
イナーセルがふと言った。
「……神が人間を雇っているってことか?」
「まあぶっちゃけて言えばな。神にできなくて、人間にできることもある。だから、そのために人間を集めることもある。だが、その多くの場合、魔力の献上による特典の付与だけで事足りるはずだが、そこはいろいろと節理と言うものがあってな。付与できる範囲に限界があるんだよ」
「だからこその金か……何かよくわからんな……」
さて、どうするか……。
次の瞬間。鐘の音が響いた。
なお、この世界に、12時の鐘など存在しない。
だからといって、それぞれの時間ごとの鐘の音が存在するわけでもない。
時計が一般的に存在するからだ。
「何かあったのか?」
よく見ると、覇竜城下町の冒険者ギルドに人が集まっている。
「行ってみるか。……冒険者じゃないけど」
で、行ってみることにした。
冒険者ギルドのドアを開けて中に入る。
なかなか広いスペースにカウンターがあって、丸いテーブル席がいくつもある。
……広いこと以外は普通だった。
「緊急掲示板に張り紙がある」
テラリアが呟いた。
「テラリアって冒険者だったのか?」
「……昔の話だ」
「エルフが言う昔と人族の昔が同じとは思えんが……まあいいか」
ミチヤは掲示板のそばに行こうとしたが、ある気配を感じた。
「……ハルカ。多分どこかにいるな」
「正解」
後ろを振り向くと、最後にあった時と同じ姿でハルカが立っていた。
そしてその後ろには、荒川風雅と瀬戸春瀬がいた。
荒川は金色の鎧に銀色の槍、春瀬は白いローブに彩色の宝玉が先端についた銀製の杖を握っている。
「お前たちも来ていたのか」
「ああ、久しぶりだな。茅宮」
「僕の方は、君が出ていった時以来だね。ミチヤ」
本当に久しぶりである。
ん?荒川の耳のピアスがなくなっている。
「荒川、もう役者はやめたのか?」
「ネタの上がった役者をやり続けたりするかよ」
「まあ、無論だな。しかし……このタイミングか」
ミチヤはハルカを見た。
「ミチヤにはいっていなかったけど、ポーション関連でいろいろ問題が出て来ることは、予測していた」
「前々に言ってほしいことを今言ってくれる君のやさしさには脱帽だよ全く」
まあ、冒険者ではないミチヤが首を突っ込むのは妙な話になってきたところだ。
ハルカが来てくれたのは、タイミングがいいとも言える。
それと……グランドマスター本人が来るほどのものだったとは……。
「ていうか……奴隷。増えてるんだな」
「ああ、そうだな。確か、最後に会った時はテラリアはいなかったか」
帝国に行ってからテラリアを買ったからな。
「何か全員ヤバそうな雰囲気だね。まあそれはいいか。ミチヤ。君、一体レベルがいくつなんだい?」
「カンストしたよ」
「一体どこに行ったんだい?僕ら二人、最近200になったばかりなんだけど……」
「今はその話はいいだろう」
「……とにかく、みんな私についてきて」
ハルカの言うとおりにした方がいいだろう。
どうやら、全ての冒険者ギルドには、グランドマスターであるハルカが独断で使用できる部屋があるとのこと……いったい……どれほどの資金で運営されているのだろうか。
向かっているうちにも、話は進んでいる。
「そう言えば、来たのは二人だけか?」
「ああ、あとの皆はまだ150すら来ていないからな……」
「……海道もか?」
「その通りだよ。ミチヤ」
あいつ大丈夫なのか?
「じゃあ、今回、ええと……お前らの認識だと王国の依頼か、それを受けたのって……」
「無論。全員レベルはアンダー150だ」
荒川の宣告にミチヤは溜息を吐いた。
「大丈夫には見えないよなぁ……」
「見えないな」
部屋についた。
「ここに入る」
ハルカがドアを開けて、中に招いた。
テーブルや新品の紙に筆記道具といったものがおいてある。
本当の意味で会議室だな。
ハルカは置かれていたテーブルに紙を並べる。
「まず、今回発生したのは、簡単に言えば、極力なモンスターの大量出現」
おい!
「それを前提に考えてほしい。発生したモンスターは、『ディザストリカ』という、災害を発生させる竜」
……ん、発生?
「発生ってどういうことだ?」
「要するに、現段階の天気や大地の条件に関係なく、ランダムに災害を起こすことが出来るということ」
そのランダムって言うのが一番厄介な気がする。
「竜巻や雷は当たり前、報告例の中には、砂漠の真ん中にあった町に大規模な津波と洪水がきたというものもある」
確かに天気は関係ないな。砂漠が洪水って……。
「ただ強いのなら、森が焼けたり地面が裂けたり、いたるところにクレーターができたりするくらいだけど……」
「いやいや、そのディザストリカって竜も、その強さはあるんだよな。その時点でいろいろヤバくね?」
荒川がおもわず言った。
「今更」
ハルカに一刀両断された。
「ちなみに、基本現象も無視できる」
基本現象と言うのは、まあ、科学の範囲内の出来事だと思えばいい。
「報告例では、洪水があった直後の森でも勢い良く燃え上がったらしい」
訳が分からんぞ。
「とにかく、一刻も早く倒さないと大変なことになる」
「個体ごとの強さは?」
「一体に対して……私の半分の実力が必要。勇者二人でも一体相手なら倒せる。ミチヤの方だと……ミチヤ一人でも倒せるし、チーム編成によっては奴隷たちも二人いれば倒せる」
「え、マスター一人と、俺達の誰か二人の実力が同じなのか?」
イナーセルが言った。
「状況に対する適応力の問題」
強さ以外にもいろんなことが必要なんだな。
「海道たちは?」
「論外。良くて邪魔。百歩譲って足手まとい」
おいおい。
「ということで、この竜の厄介さは分かってもらえたと思う」
「そう言うことにしてくれ……」
だ……大丈夫なのだろうか。これ。
ミチヤはかなり不安になった。
何体いるのか、それで運命決まるぞ。真面目に。




