第四十九話
コハクがいつも以上に弱弱しくプルプルしている。
いやまあ、プルプルしているのに強いとか弱いとかあるのかと言われると少々不明な部分もあるのだが、なんとなく疲れているような感じがした。
まあ、理由は分かる。
体内での錬金をやりすぎた。それに尽きる。
ファセーラであるルークの脱皮素材を錬金して、ヨシュアにそれを渡した時、ヨシュアは目を丸くした。
で、体内に何があるのかをしるために解剖するんじゃないかと思われるくらいにコハクにつかみかかったのだ。
コハクはいきなりちょっとヤバい目をした女の子が飛びかかってきたのでびっくり仰天。
ものすごい勢いで逃走し……スライムの走るという概念はよくわからないが、まあとにかく、今まで見たこともないようなスピードでミチヤの後ろに隠れた。
そこからも、錬金している時のコハクを、殺せるんじゃないかと言えるほどの視線でコハクを見ているのだ。
ちょっと怖かったな。
だが、コハクにとって、錬金とは体内で行う技術だ。
当然。疲れは発生するのだ。
が、ヨシュアがそれはもう怖かったのだろう。続けていた。
現在はぐったりしている。
「そう言えば、なんでスライムは錬金が得意なんだ?」
ふと疑問に思ったのでミチヤは馬車の中でつぶやいた。
答えたのはイナーセルだ。
「スライムって言うのは単細胞生物だからな。コアがあるにはあるが、スライムを構成している細胞って言うのは、人間で言うと、脳の役割を果たすことが出来る。まあ、スライムにもいろいろ種族はあるから錬金効率は変わってくるが、数億個レベルの脳で錬金を行っているようなものだからな。スライムはもともと雑食だし、食べたものや体内に取り込んだものの情報を分析するのも得意だ。分解能力は専売特許だし、再構成能力もかなり高い方だと思うぜ」
「錬金において、コハクを超えるのは難しいということか?」
「いや、コハクにも限界はあるだろうし、妖精族もそうだったと思うが、魔力関連においてはすさまじい精度を誇る。そう言ったもの達が限界まで設備を整えたら、さすがにスライムの体内では越えられないだろう。即座に錬金することにおいては、まずトップクラスだと思うがな」
「まあ、俺達はかなりのペースで移動を繰り返すからな。コハクがいることは、少なくともヨシュアにとっては最高の環境なんだろうな」
「そうとも言えるな」
なんだかんだ言って、移動ペースは多い。ちょっと滞在すると言ったことはあっても、そこに居続けるということはしていない。
まあ、いろんなところを見てみたいとは思うので問題はないのだが。
設備か……。
「ま、今はどんなものが出来上るのか待つとしようか」
「それが一番いいと思うぜ」
「さて、俺達も俺達で、いろいろ調べるか」
「そうだな」
ミチヤも、さすがにバスタードにあったことは言っていない。
だが、持ち前の話術で、神々が運営しているのではないかと言うことを認識させてはいる。
さすがにな……。
「それにしても、一体誰が運営しているんだろうな……」
「それは最後にわかることだろう。情報も少なすぎるしな」
「だよなぁ……」
結果的に言うと、本当に情報が少ない。
何をすればいいのやら……。
「本当に分からんぞ。これは」
ミチヤは溜息を吐いた。
ていうかさ。人族のトップ連中。誰か来いって。
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覇竜城。竜王の自室にて。
「ぬあああああ!ちょ、アークヒルズ!早くこっちに来てくれ!死ぬーーー……あ」
「おいバスタード!また貴様だけで三乙してしまったではないか!どうしてくれる!せっかく連続狩猟の間に逆鱗を入手したというのに!」
竜王であるアークヒルズと魔王であるバスタードが某狩りゲーをやっていた。
ちなみに、バスタードの成長速度はほぼ皆無であった。
なお、防音室なので、どれだけ騒いでも問題ない。
「ぐぬぬぬぬ……一体どうすれば倒せるんだ?この鬼畜火竜」
「まだ初級だがな。貴様だけG級装備だが」
「どうでもいいけどさ。竜王である君がこのゲームやるって……同族争いに等しくないかい?」
「それを今言うな。ところで、時間は問題ないのか?」
「もんだいない。ちょっと前にある少年……まあ君も知っていると思うから名前を出すけど、ミチヤにあってね。その時に、あるアイテムがほしかったからアイテムポーチをもらったんだけど。近づいた瞬間に、彼の体内から魔力を大量に抜き取って、私の体を経由させずに保存したのだ」
「……足りているのか?」
「足りているんだよねぇ……彼、もしかしたら私よりも魔力が多いかもしれないから」
勇者召喚によって呼び出されたもの達は、人族の平均としてみると高い戦闘力であり、それに比例して……いや、それをうまく運用するために魔力も多いのだが、あそこまで多いのも珍しい。
竜族は魔力が多いとされているし、ぶっちゃけ才能だけで魔族の頂点に君臨する魔王も魔力量はケタ違いなのだが、彼の場合は正真正銘のケタ違いなのだ。訳が分からない。
「しかし、今回、神の誰かが関与している可能性もあるという話だったからね……」
「うむ。あれには驚いた」
この世界には、本当の意味で神が生きている。
性格も本当に様々なので、そうなる可能性が無いわけではないが、多くの神が趣味としているのは観察である。
全ての神に対して、特殊状況下で交信することが出来る巫女の存在もいるのだが、そうであるがゆえに、傍観主義だ。
無論。他の神が暴れたとしても、よほど自分の観察対象に影響が出ない限り動かないのも神である。
……まあ、祈る対象であっても、すがり続けていい存在ではないということは、どの世界であっても同じと言うことなのだ。多分だが。
「一体何があるんだろうね……」
「わからぬ。今現在、資金を集めているという段階のようにも思えるが……」
「私も概ねそのように考えている。が、なんだろうね。私は、今回の一件、ちょっとヤバいものに感じているよ」
「うむ。確かに」
神と言うのは、神以外が存在することのできない特殊空間においては、誰もが何の制約にかかることもなく能力を使うことが出来る。
しかし、こちらの領域に来た場合。その能力は著しく低下する。
その能力を補うために、魔力を献上する場合が多いのだ。
そして、神にも制約がかけられているということは、世界の節理を、神が決めたものではなく、世界が決めたものなのだという証拠にもなるのである。
まあそれは置いておくとして、結果的に言えば、何を考えればいいのかが分からない。
「……思えば、少々気になることがある」
「む、なんだ?」
「何故彼らは、魔法具を作るのだろうか……」
「コマンディアが所有する犯罪組織の強化なのではなかったか?」
「それも間違いではないと思うけど、資金を集めようと思うのなら、ポーション一択にした方がいいはずなんだよ。臨時収入のために店に並べるより、そうした方がポーション販売のための予算を回せるはずだ。アークヒルズ。君は知らないだろうが、魔法具の開発と言うのは、魔族であっても、コストは低くはないんだよ」
「ほう……」
「今現在。ポーションの方に意識が向きすぎていると感じる。魔法具の方にも意識を向けて考える必要があるかもしれない」
「だとするなら……どうなるのだろうな」
「もしもだ。一見完成品が並んでいるように感じるが、もしも、店に並んでいる魔法具が失敗作だとするなら、どうだろう」
「……まさか、アーティファクトの大量生産」
「可能性も考えられるだろう。職人が多ければ、ある程度の失敗なら、普通の魔法具として販売させるレベルにまでなおすことは可能だからね」
「ふむ……」
「もしこれが本当だとするなら、考えることは、『何のアーティファクトを再現しようとしているのか』ということだ。まあ、まだそれは分からない。だが、現在、彼らによる武力行使に目立った部分はないが、これから出てくるかもしれない。その危険性は考えておいて、損はないだろう」
アーティファクトの大量生産。
それが、第一段階のゴールだとするなら……一体、最終目的は何なのだろうか。




