第三十九話
「ここが……首都マハードラスか」
ミチヤたちは、帝国の首都に来ていた。
「一体何なんだろうな」
「さあな。迷宮攻略っていうのは、ちょっと遅すぎる気がする。それとは別のことだろう。まあ、確認したいことがたくさんあるからな……」
可能性として考えられるのは……トラブルだ。
早速、皇帝謁見室に案内され……るかと思ったが、普通の応接室だった。
なお、部屋に入るのはミチヤだけだ。
「よく来たな」
黒髪の男性だ。若いな。
ただ、そのオーラはすさまじい。
「私がザウスフィード帝国皇帝。クロノス・S・ザウスフィードだ。よろしく」
「茅宮ミチヤです」
「うむ、今回は、君たちにある頼みがあって読んだのだよ」
「何ですか?」
「それにはまず、ある人物を紹介しなければな。入ってくれ」
奥の扉から来たのは、青い髪の少女だった。
ただ、何だろう。実力を精神年齢と経験量がごちゃごちゃになったような……そんな不思議な感じがする。
ただ、すごく眠そうだったが。
「彼女は?」
「冒険者ギルドグランドマスター。ハルカだ」
「宜しく」
すごく無表情なのだが……まあそれはいいか。
「厳密には彼女からの依頼となる」
「グランドマスター本人からの依頼ですか」
「そう、この二つを見てほしい」
ハルカは二枚の紙を渡してきた。
一つはポーションに関するもの、もうひとつ……は?
「竜族の第二王女が、いまこの宮殿で保護されているんですか?」
「そうだ」
「一体なぜここにいるのやら……」
「それは私たちにもわからない。だが、このままでは国際問題になるのでな」
「それで、俺達に頼みたいと」
「そうだ」
「ついでに言えば、このポーションについても調べてほしい。そして、裏で何かが起こっている可能性が高いから、それを突き止めて報告してほしい」
「報告するんですか?」
裏の存在の排除だとか捕獲だったら面倒だと思ったが……。
「かなり重要なものになるから。調査のみにしてほしい」
「まあ、連絡手段があれば引き受けますけど、依頼……なんですよね」
「そうだ。報酬も渡そう」
「ふーん……」
「どうかしたのか?」
「いや、引き受けますが、物体的な報酬はいいです」
「そうかな?」
「いや、ここまで重要な依頼になると、報酬も多分すごいんでしょう。俺のこと調べていると思うんですけど、これ以上すごいのが増えたら胃潰瘍になるんで……」
「「……」」
クロノスとハルカはミチヤの所有物や奴隷を思い出す。
確かに、管理するだけで骨が折れそうだ。
「では、コネと言うことでいいだろうか。王国、法国、帝国、冒険者ギルドグランドマスター。ほぼ人族内では最大の味方になるだろう」
「……?なぜ法国と王国までなんですかね。王国で手助けをしているのは分かりますが、法国では一応、何もしていない設定では?」
クロノスは苦い顔になった。
ハルカも苦笑した。
「気づいていたのか」
「あえて乗っかっていました。あと、法国で何をしていたのかはなんとなくでしかなかったので、カマかけて正解でした」
「ぐ……」
「さらにいうなら、少なくとも、悪い内容にならないと判断しました。帝国皇帝と、世界中に支部がある冒険者ギルドグランドマスターがそろって同じような反応でしたからね」
「む……」
「ついでに……ラシェスタってご存知ですか?」
「いや、そのような商業組織は知らないが」
「ごまかすのが下手ですね。俺、商業組織なんていってないですよ」
「……」
「何故俺がここで聞いたのかと言う理由ですけど、帝国に入ってから、ラシェスタの店の大きさの規模が、地下でかなり広いんです。扱っているものがあまりにも貴重なのに、ここまで大胆にできるってことは、大きなうしろ盾があるということです。知っているという時点で、あなたも運営している。いや、大胆さから考えれば、あなたが会長でも不思議ではないのです」
「そこまで大胆だったかな?」
「ガベルスネークの収集の時に来た女性。思えば、他国に本部がある中で、あそこまで大規模な商談を行う権利を持っていたこと、それ自体、ちょっと不自然なんです。しかも、本人から詳しくは聞いていないが、天使族の中でも恐ろしく優秀なものを奴隷として取引し、その上で白金貨を大量に用意できるとなれば、帝国皇帝本人くらいです。いや、他にもいる可能性を考えなかったわけではないんですけどね」
クロノスはうなっている。
「さらにいうなら、この話を聞いてグランドマスターが、そのような商業組織の話を聞いて反応が少なすぎるんです。まあ、もともと感情が出にくいタイプだとは思いますが。そこから、グランドマスターも運営に……いえ、その反応だと、完全黙認状態のようですね。そして、法国との関係を考えれば、そこもある程度認識はあるでしょう。そこまで行けば、王国にも勢力があっても問題はない。むしろ必要な場合もある」
「……」
「現在のラシェスタと言うのは、皇帝直轄の裏の商業組織、勢力は、グランドマスターの黙認。いえ、協力している可能性も十分考えられますから、店の規模がバラバラでも、ほぼ全世界に存在している。なお、ラシェスタの存在そのものは王国、帝国、法国の『スリートップ』の認識されたものであること。そして最後に、何をしているのか具体的にはしりませんが、とある大きなプロジェクトがある。間違いありませんね」
クロノスは溜息を吐いた。
「そうだ。だがなぜ、プロジェクトの存在を予測できたんだ?」
「簡単な話です。ガベルスネークの金額の差ですよ。王国では二束三文だったのに、こっちでは恐ろしいレベルだった。しかも、買い取り人も、行きつくところまで調べたらあなただったので」
「完敗だな」
ふう、さて、確認は終了だ。
「なぜ俺がここまで言って確定させたのかを言います。まず、あなたがラシェスタのトップだということを明確にしたかったということです。店員の指揮系統は完璧に一つだった。そんななかで、トップがもしもヤバいやつらだったらどうします?」
「確かに不安になるな」
「そう言うことです。まあ、三国が認識するほどだとは予測していませんでしたが」
「……ふむ、賢い」
「そうだな。まさか、口だけで負けるとは思わなかった」
「クロノスはもともと口下手」
クロノスは沈んだ。
「まあとにかく、依頼は引き受けます。人族の領土内なら問題はなかったんですけど、竜族の領土に行ってラシェスタがどういう立ち位置になるのか不安だったので」
「最大限のサポートをしよう。散々もうけさせてもらっているのでな」
「それは何より。それでは……」
その時、応接室の扉が勢いよく開かれた。
鎧を着た兵士だった。
「大変です。会長!」
「どうした」
「王国にいた勇者が、第二王女を護衛を開始したとの情報が」
「何!?詳しく説明しろ」
「ザナークル王国の国王配下のものが、転移魔方陣で王国に連れていき、冒険者ギルドのクエストとして勇者たちを出発させたとのことです。さらに、特殊ポーションの裏について調べるクエストも同時に受けています」
「なんだと!?」
あのデブ国王。これまた妙なことしやがって……。
「ザナークル王国って一体どうなっているんだ?」
「本来なら90歳くらいのおじいさんが国王。でも、今は国を出るときが多いから、その孫が全権代理になっている」
「任せるやつ間違えてるだろ……」
「今更」
確かにな。
「ん?クエストとしてって言ってたよな」
「その通り。本来なら厳重に書類がつくられるはず。でも、半年前、何枚か、獣人族領土でその契約書類の盗難があった。それを使えば、一応、クエストを作ることが出来る」
「あの王だからな。そんなコネがあるとは思えん。裏の組織か」
「私も同感」
「狙いは……勇者たち、および竜族の第二王女の殺害、もしくは捕獲しての利用。それくらいか?竜族領土内での、Sランク以上のクエストの失敗から発生した被害や損失の責任が、グランドマスターにかかることか」
「今回の規模や事情を考えると、良くて奴隷。下手すれば死刑になる」
ミチヤは頭を抱えた。
「さっさと行くことにしようか」
「よろしく」
「行かないのか?」
「あなたを信じるから、問題ない」
「評価されるのは好きだが、期待されるのは好きじゃないんだがな……仕方ないか」
「二つだけ」
「なんだ?」
「向かうときよりも、行ってからの調査の方が大変になると思う」
「それぐらいは予測できるさ。すでに向こうのテリトリーみたいなもんだ。もうひとつは何だ?」
「もし、私が奴隷になったら、あなたが私を買って」
目を見れば真剣なのは分かる。
「本音は?」
「あなたの作った料理がおいしいという話はよく聞くから」
「この世界の料理本というものに喧嘩を売りたいよ俺は。まあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
さて、行きますか。しかし、面倒なことになったもんだな。




