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プロローグ:あの日、世界は終わって、始まった

新連載始めます

「その死、僕らがエスコートします」


漆黒の翼を広げる銀髪の死神・ジェード。

その隣で、小さな翼をパタつかせる

真っ白なマルチーズ・マルル。


彼らが現世に降り立つのは

命の灯火が消える二週間前。

涙を拭い、未練を汲み

安らかな眠りへと導くのが彼らの仕事だ。


孤独な老婆が最期に見た「乙女の夢」も。

虐げられた恋人が

押し入れの奥に隠した「色褪せない記憶」も。

すべては天界へと続く、長い散歩道の途中のこと。


これは、一人の青年と一匹の愛犬が

死神となって最愛のひとを救い出すまでの

切なくも温かい「死後の物語」。



ーーーーーーーーーーー



その日は、抜けるような青空だった。


俺、早見敏也はやみとしや

20歳。大学生。


傍らには

真っ白でふわふわなマルチーズの愛犬

マルルが短い足を一生懸命動かして歩いている。


「マルル、今日は最高の散歩日和だな」

『ワンッ!』


マルルが見上げて、嬉しそうに尻尾を振る。


この後、恋人の杏奈あんなと合流して

三人で公園のカフェに行く予定だった。


杏奈の手作りクッキーを持ってくると言っていた。


世界は平和で、幸せに満ち溢れている


――そう信じて疑わなかった。



交差点の信号が青に変わる。

マルルを一歩先に行かせ

俺が足を踏み出した、その時だった。


鼓膜を裂くようなスキール音。


視界の端から飛び込んできた

制御を失ったトラック。


「――マルルッ!」


身体が勝手に動いた。

マルルを抱きかかえ、庇うように背を向ける。


衝撃は、感じなかった。


ただ、視界がぐにゃりと歪み

ものすごい速度で景色が流れた後

急激に冷たくなっていくのを感じた。


(ああ……杏奈、ごめん。

クッキー、食えなくなっちゃったな……)


薄れゆく意識の中で

腕の中のマルルが、悲しそうに鳴いた気がした。


享年20。

俺とマルルの短い一生は、そこで幕を閉じた。



次に目を覚ました時

そこは真っ白な霧に包まれた場所だった。


身体は軽い。

事故の痛みなんて微塵もない。


「ここは……?」

「お目覚めですか、早見敏也様」


鈴を転がすような声に振り返ると

背中に純白の翼を生やした

人間離れした美貌の青年が立っていた。


「俺……死んだのか?」

「はい。現世うつしよでの貴方の肉体は停止しました。

私は天使のサファエル。

貴方を『霊界』を経て『天界』へとご案内いたします」


驚くほど冷静に

その事実を受け入れている自分がいた。


サファエルに連れられ

霧の彼方にある巨大な門をくぐる。


そこが地上の魂が最初に訪れる「霊界」だった。


霊界の奥、威厳に満ちた庁舎のような建物の中で

俺は一人の威圧的な人物と対面した。


地獄の沙汰もなんとやら

そのまんまの姿をした、閻魔大王だ。



本来であれば【死神】が迎えに来るらしいが

何故か、リストに載っていなかったため

急遽、天使サファエルが来たらしい。



「早見敏也。享年20。生前の行いは……

ふむ、清廉潔白。事故死の憐れみもある。

――天界の『人間ゾーン』にて

永き安らぎを得るが良い」


閻魔大王の裁定は下った。


こうして俺は

死んだものが集まる至上の楽園

天界へとやってきたのだ。




お読み頂きありがとうございます

次回も楽しみに♡

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