第64話:新マップ、呼び出し
メインクエストを進めました。
というか、ようやく進める理由ができたという感じだ。
先日のイベント以降に追加されたメインクエストで、先行してるプレイヤー達がある地点に到達して、新規マップが解放された。
その名も大空洞。超巨大なドーム状の地下空間。
そこにはなんと、町がある。
モリス・ルクス以外に人の居住している都市はないと言われていた、このゲーム世界における新発見だ。
町の名前はアガラム。規模は小さめだけど、立派な都市になっているそうな。
そもそも大空洞自体が、過去において人々が避難していた巨大シェルターらしく、物語としては逃げ込んだ人々の生き残りをプレイヤー側が見つけた体になる。
その大空洞が、今後の冒険の舞台というわけだ。
そんな情報が出回ったのと同じタイミングでカモグンさんから連絡があった。集合場所はアガラムの町外れ。あの人にしては珍しいことに相談があるらしい。
というわけで、俺は大急ぎでメインクエストを消化して、大空洞に到達したのだった。
「思ったよりも中は明るいんだなー」
青く輝く天井を見上げて呟きながら、俺は石畳の上を歩いていた。
メインクエストの難易度はそんなに高くない。さっさと進めて大空洞に入れた。巨大な山々に囲われたドーム状の球体が埋まった地域。SFとファンタジーが入り混じった門をくぐると、その巨大空間に入ることができる。
大空洞内は本当に広い。天井の高さなんて千メートル以上あるんじゃないだろうか。圧迫感を与えないためか、青空のように輝き、足元までしっかり照らしてくれている。さすがは古代文明の超巨大シェルターって感じだ。
アガラムの街は門をくぐってすぐにある。ファンタジー然としていたモリス・ルクスと異なり、四角い現代的な建物が多い。ちょっと装飾のついた五階建てのビルみたいのが並んでいる、といえばいいだろうか。たまに違う形の家が混ざっているのはここで人々が暮らすうちに変化があったということを端的に説明しているんだろう。
集合場所は郊外にある雑居ビルの一室だった。中に入るとテーブルとソファが置かれていて、カモグンさんとコサヤさんが待っていた。
「どうも。急いでメインクエスト進めてきました」
「思ったより早かったな」
「多分、トミオはメインやってないと思ってた……」
「新発見とかは先行してる廃人任せでいいかなーって」
「気持ちはわかる。ところで……」
俺がソファに腰掛けると、カモグンさんが真剣な顔で見てきた。なんだ? なにかあったんだろうか? 面倒な集団に目をつけられたとかか?
「なんでスクラちゃんの状態で来ないんだ」
全然違った。ただの配信視聴者だった。
「あの格好でここに来る理由ないでしょ! 弱くなるし、目立つし!」
「……なんでスクラちゃんじゃないの」
「コサヤさんまで!」
ちょっと見た目が変わるだけで俺への需要が急減したというのか。なんという理不尽。
「まあ、この件は後にとっておくとしよう。相談があるのは本当でな」
「スクラ目当てで呼ばれたんじゃなくてよかったですよ……」
「……配信する時は連絡して」
「あっはい」
なんか気に入られてるな。それより本題だ、本題。
俺の様子に気づいたのか、カモグンさんが改めて口を開く。
「ここらでギルドを作ろうと思う」
「なるほど。それはつまり、チームというか、クラン的なやつですね?」
BWOにおいて、ギルドという言葉には二つの意味がある。シーフギルド、アルケミストギルドというゲーム内ジョブで組まれた職業的集団。
それとは別にプレイヤーの集まりとしてのギルドも存在する。今回はこちらのことだ。
「アガラム内で受けるクエストをクリアすると、プレイヤー向けの区画が解放されるんだよ。モンスターが出ない、ギルドハウスとか作れるフィールド」
「なるほど。ハウジング用の区域ってことですかね?」
「……そこにギルドハウスを作ると、帰還アイテムが手に入る」
どこでも家に帰れるようになるのか、便利だ。
「ゲーム内の情報も増えて来て、いちいちログアウトして検索するのも面倒になってきたしな。プライベートモードを使える場所も欲しい」
プライベートモード。ゲームのシステムから一時的に切り離し、ブラウジングなどをできるようにする機能だ。これによりゲーム内でオフィス仕事やネット検索、なんならちょっとしたゲームも遊べる。
意外と需要のある機能で、昨今のVRMMOでは標準的に搭載されている。大抵は拠点など落ち着いた場所でしか使えないようになっているものだ。
BWOの場合、一部のNPC施設かハウジングで作られた空間で実行可能だ。
「承知しました。で、俺は何をすればいいんで?」
ハウジング用の素材集めだろうか? あるいはギルドハウス設立に共同でやらなきゃいけないクエストでもあるとか?
「うむ。区画解放クエストを受けて来てくれ。そうしないと、そもそも入れん」
「……ちょっとしたイベントだから楽だよ」
そもそも入口にすら立ってないのでイベントこなして来てねという話だった。
「それと、ギルド名も考えてくれ」
「……私も頑張って考えてみるけど」
「わかりました」
こういう時、コサヤさんは中二病全開の名前を考えてくる傾向がある。
もう中学生が遠い昔になった俺としては出来るだけ回避したいので、ちゃんと考えようと心に誓った。それもかなり。




