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第25話 ドルゴラッヘ火山-0 ◇

挿絵(By みてみん)



 ――R.E.1311。

 ビテルギューズ大陸本土から離れた孤島、タージリア島。生い茂る自然の中に佇む神殿に、未発見の魔力物質が現れた。

 それが、有史以来の観測上初めてとされる、《影》の出現だった。


 後に大陸を未曾有の災厄に陥れる《影》と呼ばれることなど、当時の島の人々は知る由もない。

 ただ、既存のどの物質をも凌駕するエネルギーを持ち、作物の豊作をもたらし、病を治し、荒れ狂う波から島を守った。そのような力が神殿に現れたのであれば、「それは古くから島が祀っている、神の恩恵である」と、島の人々は感謝を捧げるようになった。

 

 後に歴史の片隅に名を残す青年――《人形師》ベルフェ・リオ=オンブラーも、その島に行き渡る力を受けて育ったとされる、彼の生まれ故郷である。



 神殿の噂はいつしか海を超えて本土に届いた。

 その効力にあずかろうと遥々島に上陸し、神殿に参拝していく者が増え始めた。



 この未知の魔力物質の正体は、生物の欲望に触れて力を与えるものであった。

 それがタージリア島において恩恵をもたらしていたのは、島の人々が本土の文明から遮断され、限られた自然の中で、島の神を前に己を律し続ける――そんなストイックな精神が物質に作用した結果、生きるために必要なささやかな欲が満たされる物質となっていた。


 しかし、文明が豊かな本土では、増える欲望や憎しみなどの負の感情――「自分が何かを得るために他者の排除を願う心」が、当たり前のように充満していた。

 島を訪れた者たちが本土に戻り、しばらく経った頃。


 島の物質が本土に持ち込まれ、際限のない欲望にまみれた負の感情に触れ続けた末。

 『黒影病』が観測され、大陸全土に広がるまで、時間はかからなかった。




* * *




 光の差さぬ場所。

 その暗闇をわずかに照らすのは、彼ら自身から溢れ出す、禍々しい魔力の光。燃え広がった炎の残滓に照らされ、飛散した氷の破片の光が乱反射する。


 二人の少年が、服はボロボロに裂け、生傷にまみれ、今にも崩れ落ちそうな体で、肩で息をしている。

 どちらも、片腕はすでに人のものとは思えぬ化け物じみた形に歪んでいた。

 それでもなお、瞳の鮮烈な光が消えぬ限り、互いに射殺すような目で睨み合う。


 一人は、憎悪という尽きぬことのない炎がゆらめき続けるかのような、真紅の光。

 もう一人は、極限の冷気が視界を刺すように煌めく、ライトブルーの光。


 相手が先に動かなくなるまで、決して尽きることのない、殺意に似た執念。たとえお前の身を切り裂いてでも、手足を粉々に砕いてでも、体の中心を貫いてでも。

 俺は止まらない。お前に止められなどしない。



「……アイ……俺にはまだ……」


 ジフはサイケデリックなライトブルーの光を瞳に走らせ、喉の奥から唸るような声を上げる。


「お前に聞きたいことが山ほどあるんだ……!!」



 視線の先にいるアイは、この世の全てを叩き壊さんとする悪魔の如き紅い眼を見開き、空気を掠めてばかりの荒い呼吸を繰り返していた。

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