小話
ドロシー編
「――でさ、それで魔王様が魔女を説得したらしいよ。簡単にひれ伏させるんだから凄いよねー」
「……あぁ」
「……? 聞いてる、リヒト?」
「ん? あぁ、ごめん」
食事中。
アリアが魔女を支配下に加えたというニュースを、まるで自分が成し遂げたかのように機嫌良く語るドロシー。
それに対してリヒトは、特にこれといった反応もなくボーッと座っていた。
食事に手をつける様子もなく、いつもより顔が少し赤い。
流石にドロシーも異変に気付いたようだ。
「ちょっと、本当に大丈夫なの? 何か変な物でも食べた?」
「多分大丈夫だと思うけど……少しだけ体が重いくらいで」
「いやいやいやいや。絶対大丈夫じゃないって。ほら、おでこ出して――熱っ!?」
ドロシーがリヒトのおでこに手を当てると、到底大丈夫とは思えないほどの熱が伝わってくる。
明らかに平熱と呼べるものではない。
それは手が触れた瞬間に理解することができた。
「凄い熱だよ……リヒト。ただの風邪じゃなさそうだし、休んだ方がいいかも」
「でも、この後フェイリスに呼ばれてるし……アリアに頼まれた仕事も残ってるしなぁ」
「それなら代わりにボクがやっとくからさ。魔王様もそれで怒るようなことはないと思うよ」
ドロシーはリヒトの手を取って立ち上がらせる。
かなり強引な方法だが、こうでもしなければリヒトの身が持たない。
リヒトも多少抵抗しようとしていたが、思うように力が入らず、最終的にはドロシーに支えられる形で運ばれることになった。
◇◆◇◆◇◆◇
「リヒト、とりあえず氷持ってきたよ。これで頭冷やして」
「……ありがとう。助かるよ」
ドロシーによって、リヒトの頭に大きな氷が乗せられる。
何重にも重ねられた毛布に、首に巻かれたネギ。
思いつく限りの対処が施されていた。
「ボクなりに調べてみたんだけど、結局何の病気なのか分からなかった……ただの風邪じゃないってことは確かだと思う」
「そうか」
「魔王様が、リヒトを殺した後に蘇生させて強引に治そうとしてたから止めておいたけど……これで良かったよね?」
「……それは本当にありがとう」
リヒトは複雑そうな表情でドロシーに感謝を伝える。
もしここに来ていたのがドロシーではなくアリアだったなら、リヒトは殺されていたかもしれない。
誰だって死ぬのは嫌だ。
ドロシーもリヒトの気持ちを察してくれたらしい。
「あ、またフェイリスさんたちがお見舞いに来るって言ってたから、その時は会ってあげてね。心配してるみたいだから」
「う……分かった」
リヒトは嫌な予感を全身で感じながら目を閉じる。
こういう事態の時のフェイリスは少しだけ厄介だ。
その期待に応えるように、数十分後にはドンドンと扉を叩く音で起こされることになった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
こちらでの告知が遅くなりましたが、『死者蘇生』がコミカライズされることになりました。
月刊comicREXでの連載になりますので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。




