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第一話 新国王の決断

 春先の国民は憂いていた。

 誰もが涙を流し、くしゃみをし、ゴホンゴホンと咳をする。

 恐るべき魔族、大杉大魔王がこの国を席巻してから、既に数十年の時が経過していた。

 毎年春一番と共に大魔王の必殺技、花 粉 大 飛 散グレイト・ポーレン・タイフーンが発動する。国の全土に撒き散らされた魔力を帯びた花粉に、多くの国民は苦しめられ続けていた。

 これほどの苦難に晒されているにもかかわらず、国王イッシー・ハーラは、無用な戦いは国益に反するとして魔族との戦いを放棄、国民にはひたすら耐えることのみを強いていた。

 国民は花粉除けゴーグル、三層鼻マスク(使い捨て)、スッカリのど飴、などの対抗策で魔族の攻撃を凌いできたが、その我慢もすでに限界であった。


 そんなある日、唐突にイッシー・ハーラは国王を辞めてしまった。

 理由は不明であるが、彼の飽きっぽい性格から推察するに、恐らく国王に飽きてしまったのだろう。

 あとを継いだ新国王イノッセは、これまでの忍耐政策を放棄。高らかに魔族との戦いを宣言した。

 国民は歓喜した。毎年味わうこの苦しみにも遂に終焉が訪れるのだ。

 新国王万歳! イノッセ万歳! 健康のため吸い過ぎ注意! などなどの歓声が国のあちこちから上がった。


 新国王イノッセは直ちに大杉大魔王討伐対策本部を立ち上げた。だが長年穏健政策を取り続けていたため、国には軍隊というものが存在しない。

 いや、あるにはあったのだが、それはあくまでも専守防衛の軍隊。つまり攻め込まれなければ、こちらか攻め込むことは出来ない軍隊なのだ。

 大杉大魔王は、花粉大飛散は人間へ戦いを仕向けているのではなく、あくまでも子孫繁栄のための行為に過ぎないと主張。

 見え見えの言い逃れであることは明白ながら反論もできぬ。反論できない以上、専守防衛の軍隊も手出しはできぬ。

 先代の国王が何もしなかったのは、つまりはそーゆー事だったのである。


 対策本部を立ち上げて、いきなり大きな壁にぶち当たった新国王イノッセは頭を抱えてしまった。

 その時、ひとりの知恵者がイノッセに進言した。


「ラノベが全盛を極める前から、『魔王を倒すのは勇者である』はお約束事となっております。ここはひとつ国民の中から勇者を選んで、そいつに全てを任せちゃいましょう」


 これは名案じゃ! とイノッセが言ったかどうかは定かではないが、とにかくその案は採用され、大杉大魔王討伐は勇者の手に託されることになった。


 全国民の命運は、いまや、そのひとりの勇者の手に握られる事となったのである。



 つづく!


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