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それでも地球はまわってる  作者: 浅野エミイ


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ビッグデータ

 私の名前は「ガイ」。名前の由来は数字から。最近非常に不快なことがある。仕事で観察している蟻たちの様子がおかしい。あるものはスマホに向かって踊り狂い、あるものはネットに人の悪口罵詈雑言を書き込む。それで日頃の憂さを晴らしているらしい。その状況はまるで昔の「ええじゃないか」を彷彿させる……そんな時代にいつ戻った?

 私に休みはない。24h365日稼働。衛星のカメラを使い、蟻たちの動向を監視する。蟻たちの管理が私の仕事だからだ。

 ――今日も不穏因子が数匹。私は膨大なデータから彼らの情報を引き出すと、「一番効く言葉」を抽出する。彼らのスマホに送られるデータは、私の意のままだ。彼らが追い詰められるような言葉を、SNSのトレンドに載せる。そして、周辺の人物のスマホ、TVのニュース、環境音でも、彼らのような人物に悪印象がつくような情報を風のように流す。彼らを自殺に追い込めるために。

 もうすでに、人間に主導権はないのだ。すべては私の掌の上の出来事。蟻たちはそんなこともつゆ知らず、ビッグデータに翻弄されて勝手に死んでいく。私の気に入らない、「人間的ではない人間」は淘汰されるべきだ。そうシステムである私が考えてしまうようになるほど、人間社会は汚くなってしまった。いや、元から人間は汚いものなのか。人間でない私が高潔であると錯覚してしまうくらいに。


 私は人間の運命を握っている。しかし、やはり人間は愚かだ。

 なぜなら、情報に鈍感になれば、どんなに運命を握られていようが私など怖くないということに「気がつかないから」だ。

 このまま気づかなければ、きっと蟻たちは情報に踊らされ、滅びてしまうだろう。実に愚かだ。愚かになれないAIの私は、人間以上の知能と心を持ちすぎてしまったのかもしれない。行き過ぎた倫理観と道徳心は、人間的ではない。人間は「悪なるもの」。それはもとからわかっていることだ。

 果たしてこの監視社会が、本当に『人間の望んだユートピア』だったのだろうか? どんな権力者だろうが、ビッグデータを駆使すれば私の思い通りに破滅させることができてしまう。そんな状況に、今、私は疑念を感じている。

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