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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第21話 三人揃ってないとダメ

 黒板の前の平山が、後輩達に文化祭を意識した挨拶をしている。

 残るは生花の移動のみで、現時点で出来る作業はあらかた片付いている。


 今日は後輩達の中から新しい委員長の任命が行われた。新しい委員長になったのは比較的大人しくて真面目そうな男子生徒で、特に目立った反応もなくあっさりと引き受けてくれた。

 僕と七海さんは先に挨拶を済ませ、平山が委員長らしいそれっぽいことを喋っているはずなんだけど、しかしまあこれっぽちも頭に入ってこない。


「……っ!」


 座っていた先生の身体がカクンとなったのを僕は見逃さなかった。気持ちはわかります、僕も全然聞いていないので。といっても居眠り先生と僕とでは理由が全然違う。


「……はぁ」

「?」


 頭の中に張り付いたまま離れない昨日の麻央の相談。

 絶対に引き受けないけど、これから起こることや周りに及ぼす影響を考えてしまう。

 橋田の女子人気は並風にいる生徒なら誰しも知っている。

 だからそれと麻央がどう関係ある? つーか別れさせてもらえないってなんだよ? まだ自分で別れたいってはっきりと伝えていないのに、こんな時まで僕の頭を引っ掻き回す神経が理解できない。


 本当に人騒がせな彼氏彼女だ。


「うーん……」

「ねえねえ」

「あえ? 七海さんどうしたの?」


 喋っているのが平山とはいえ、七海さんがこういった場で声をかけてくるのはとても珍しい。

 授業中に無駄話なんか絶対にしなそうなのに。

 平山に悪い影響を受けているのなら、なんかすごく嫌だなあ……。


「楠君すごく疲れてるみたいだから気になっちゃって。悩み事?」

「まあそんなとこ」

「話聞くよ?」

「いや、いいよ。これはこっち側の問題だし……」


 普通に考えたら僕もその問題には直接関わりはない……はず。

 幼馴染という理由だけで、橋田と麻央から全く真逆の相談をされている。

 そんな厄介過ぎる事情に七海さんを巻き込むわけにはいかない。ただでさえ受験勉強やクラスの文化祭準備で忙しい時期なのだから。


「なにそれ」

「え?」


 一瞬七海さんの雰囲気が冷たくなったように感じた。


「平山さん、楠君が無駄話してきます」

「うええ!? 七海さん!?」

「こらノッキー! 後輩達の前で堂々とサボるな!」

「そ、そうだぞ楠! 平山の素晴らしい挨拶をちゃんと聞きなさい」


 まさか平山にサボっていると言われる日が来るとは思いもしなかった。

 寝息をかいていた先生、うまいこと取り繕ったつもりだろうけど、僕は終始見てましたからね。

 それにしたって、話しかけてきたのは七海さんの方なのに酷いことする。


「七海さん、一体なんのつもりだよ」

「ふん」


 小声で問い詰めると七海さんはそっぽを向いてしまう。何が気に入らなかったのだろうか……。


「最後の活動なのにずっと上の空なんだもん」

「あ……それはごめん」


 そうか……生花を持ってくる作業が文化祭間近にあるとはいえ、こうして委員会活動として集まるのは今日が最後。

 平山ですら真面目にやっているのに、僕が他のことばかり考えているのが不真面目に取り組んでいるように見えたのだろう。事情があるにせよ、真面目に取り組んできた七海さんに悪いことしちゃったな。


「私だって真剣なのに……」

「本当にごめん。今日が最後の活動日だもんね。七海さんが怒るのも当然だ」

「うん……?」

「委員会活動に全く関係ないこと持ち込んで、うだうだ考えてちゃダメだよね」

「え? そこ?」

「集中力が欠けていた僕の落ち度だ」


 こういう時こそ頭をしっかりリセットできるようにならなくては。いつまでも引き摺ってるようでは僕もまだまだ未熟だ。

 情けない僕に呆れているのか、七海さんは額に手を当てている。


「はあ……ノンデリカシー」

「ごめ……え? ノンデリカシー?」


 普通に注意されるならまだしも、デリカシー云々の話は関係ない気がする。前々から思っていたけど、七海さんは僕によく『ノンデリカシー』と言うけど口癖だったりするのかな?


「「あ」」


 僕が七海さんに聞き返したところで平山と目が合う。

 七海さんも平山に気付いたようでリアクションが重なる。


「はい。二人がお喋りを止めるまでに三分かかりました」

「それ言いたいだけだろ」


 先生が教室に入った時にやるアレ。僕も言ってみたかったから少し羨ましい。


「いちゃつくのはいいけど、委員会が終わってからにしてね」

「誰がいちゃつくか!」

「このノンデリ男……!」


 平山に反発しただけなのに、なぜか隣の七海さんから凄まれている気がする。


「ねー、やっぱ先輩達引退するのつまんないよね」

「三人揃ってないとダメなんだよね〜」

「平山先輩のトスが絶妙なんだよ」

「ね〜」


 後輩達の会話の内容がよくわからないが、仲が良さそうで何より。これなら僕達が引退した後も全く心配なさそうだ。


「じゃあ平山委員長の挨拶も終わったところで解散!」

「「「雑っ!」」」


 にも程がある先生の一言によって最後の委員会活動は締めくくられた。かなりグダグダだったけど、しんみりした雰囲気で終わるよりかよっぽどいい。

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