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〜 1 修行のはじまり 〜
女傭兵ガルーナと精霊魔法使いハーティがファーガ国の王都ララバルに赤子を無事送り届けてから、十四年が過ぎた。この物語は、少年ラドニスの成長の物語である。
四月のうららかな陽の光が、辺りを照らしていた。陽だまりに、憩うような気持ちは、平和な時にしか抱かないだろう。私は、「カミル・ブラウン」。長い間武道家として生きてきた。この十年間は全く戦争のない日々が続き、剣の腕を磨くことは「たしなみ」となっている風潮さえある。
今日は訪問者がある予定だ。私が住むファーガ国第二首都ファルムから、北へ百五十キロほどに位置する、王都ララバルの貴族のご子息と聞いている。
二年間の修行をしたいとの申し入れがあったのは、昨年のことだ。
「あなた、お客様よ」
妻のフィムが声を掛けてくれた。
「今、行くよ」
玄関先に、若い男性が立っている。革鎧に身を包み、腰には小剣をさしている。気品あふれる顔立ちだった。
「君がラドニス君か、話は聞いている。私がカミル・ブラウンだ、よろしく」
私はそう言って右手を差し出した。
「ブラウン先生、よろしくお願いします」
少年はにこやかに微笑んだ。
それが私とラドニスの出会いだった




