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能力の可能性です!!

 ダンジョンの魔方陣から出た先には、人、人、人。数えきれないほどの人間がそこには居た。

 そして、その全てが私を見て固まっていた。


 ここは、ダンジョンの入り口。


 帰ってくるとも思われていなかった少女が、ダンジョンから転移してきた......『転移』なんて普通の人間には出来ない魔法によって現れた私は、他の人間から見れば有り得ない存在だ。


 本来ならば英雄の誕生。人間達が歓喜し、拍手喝采を受ける場面。だが、私は『英雄』ではなく『化け物』というレッテルをはられる事になる。


 「メリー。行くよ」

 「......うん」


 だが、私にとってそんな事はどうでもいい。

 化け物と思われてもいい、誰からも見られなくていい。今は、時間が無い。


 後2日(・・・)。それが残されたタイムリミット。


 「メリー。少し我慢して」


 私は、メリーをお姫様抱っこで持ち上げ、風魔法を発動させる。体は宙に浮き止まる。


 「ねぇ、マナちゃ―――」


 そこで私は空中を蹴った。弾丸のように加速し、あっという間にダンジョンが見えなくなる。

 私は更に強く空中を蹴る。景色は嘘のように切り替わっていき、3分もしないうちに私は『始まりの街』へとたどり着いた。


 向かう場所はもちろん、冒険者ギルド。時間が無い焦りからか、ギルドの扉を開くのに力を入れすぎてしまったようで、扉がギルドの中へと吹っ飛んでいき......


 「プゲラッ」


 聞き覚えのある奇声をあげた人物にクリーンヒットした。


 「ゲホッ......おいおい、マナちゃん。いくら僕がMだからってこれは無いんじゃ」

 「お願い。時間が無いの、私に力を貸して」


 ギルドマスターの顔は、一瞬で真剣なものに変わった。


 「......どうしたんだい? 相当焦っているようだけど......まぁ、いいや。アイラ、一つ部屋を開けてくれ」

 「はい、分かりました」


 アイラさんが、いそいそとギルドの奥へと消えていった。そして、いつもより真剣な様子でギルドマスターが近付いてくる。

 メリーは、この変態(ギルドマスター)を初めて見たからか、私の後ろにしがみついている。なぜか少し怯えているようにも見えた。


 「マナちゃん!! こいつわたしの『魅了』が効かない」

 

 ......え? この変態に、『魅了』が効かない!?


 「どうも、初めましてお嬢さん。僕はここのギルドマスターをやっている。マナちゃんの友達かな?」

 「ギルドマスター。一つ聞いていい?」

 「あぁ、何でもいいよ」


 私は、後ろに隠れているメリーをギルドマスターの前に出す。


 「この子を、どう思―――」

 「天使」

 「......かわいいとは思うの?」

 「マナちゃん。何を言ってるんだい? 『かわいい』なんて通り越して遥か後ろにあるぐらいじゃないか......あ、もちろんマナちゃんもね」


 また「デュフフ」と気持ち悪い笑いをあげるギルドマスターに寒気を覚えつつ、メリーの『魅了』の意外な回避方法に驚く。


 『魅了』は対象をかわいいと思ったものを少しの間、固まらせる能力だ。

 しかし、ギルドマスターのように一番最初にメリーを見たときにかわいい以上の事を思えば能力の対象外になる。


 意外と能力(・・)には、まだ知らないことが隠されていそうだ。もしかしたら、私の能力にも何かが隠されているかも知れない。


 そんなやり取りをしていると、いつの間にかギルドマスターの後ろにアイラさんが、笑顔で立っていた。


 「おやおや、ギルドマスター。楽しそうですね。私が居ない間に可愛い女の子とイチャイチャして......」


 アイラさんの顔は笑顔なのだが、溢れんばかりの殺気がギルドマスターに向けられている。

 そして、ギルドマスターはホラー映画のように、ギギギッと首を後ろに回していく。


 「えっと......これは、その......すみませんでしたーー!!!」


 綺麗な土下座である。


 だが、そんなギルドマスターを無視し、アイラさんは私達に普通の笑顔を向ける。


 「マナさん。準備ができましたので案内します」

 「アイラさんありがと」

 「ねぇ、アイラ!? 今度は無視!?」

 「じゃあ、二人は(・・・)ついてきて下さい」

 「アイラさん。ここにもう一人いるんだけど......泣くよ!? 本気で泣くよ!?」


 それでもスタスタ歩いていくアイラさん。その後を私達はついていき、ギルドマスターはそのまま置いていった。

 後ろから誰かがみっともなく泣いている声は聞こえたが、誰のものかは分かりたくなかった。

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