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まぞくといっしょ  作者: 黒梵天
第二章
23/36

あらすじとテント

 ――緋炎の覇王、アーシラム=ヴァリアは言った。

 侵略とはまさに、恋なのだと。

 ――蒼炎の賢王、リヒカッド=オロヴァルトはこれを真っ向から切り伏せた。

 征服した女などに価値は無い、木偶人形を抱きたいのなら別だがと。

 ――新緑の女帝、ティダリア=フォニアはこの二人に冷たい視線を送る。

 ああ、彼らはやはり絵に描いたような阿呆なのだと。

 ――黄衣の神王、ミシャエル=ヤーシュヤは彼らを見ながら、微笑みを称えている。

 愚者をいかにして信仰の道に引き入れればいいのか思案しているのだ。

 ――白光の賢者、ルゥン=レガストは何食わぬ顔で本を読んでいる。

 彼女はとうにこの会議にはほとほと飽きてしまっているのだから。

 ――黒狼の偽王、ヴァイド=アーテンは遊び呆け、会議に出席もしていない。

 彼は偽王、盗賊身分の成り上がり。

 ――円卓には六人の英雄の子、しかしその中に、我らが同族の姿は無し。

 ああ人間のなんと愚かしき事か、しかして数は我等より勝る。

 風に聞きし楽園は何処へ。


「すっげつまんね」


 アルシラさんから借りた吟遊詩を読んで、俺は正直な感想を漏らしてから、パタンと閉じて伸びをした。

 ここはテントの中。

 俺はカンテラをテント内の頂点に吊るして、そこで読書に耽っていたわけです。

 うう、暇でござる。

 吟遊詩ならちょっとは面白みもあると思ったけどあんまりだったなあ。

 6つの国の6人の王様を、亜族の吟遊詩人が書いた最新の吟遊詩なんだけど、いちいち言い回しとか堅苦しくて、もう頭がいたくなっちまったよ……。

 もうちょっと面白おかしく書けないもんかな。

 例えば俺の異世譚とか――多分面白くない。

 ……俺主人公にしたらただのポルノ小説に……ならない。

 はあ……イケメンに生まれたかったなあ……。

 ――なんつって。


 ……さて、こんばんは。

 萩原律樹25歳(童貞)です。

 現在俺は、別の亜族の村目指してずーっと南下しています。

 こんな事突然言われても意味がわからないよな……。

 ええっと、簡単に説明すると、受け入れ先の村が見つかったので、そこを目指して森の中をキャンプしながら進んでます、んで俺は今まで文字の練習してました。

 ――簡単すぎるな……。

 やっぱあらすじ風に説明したほうがいいんかな……?

 ……よし、そうしよう。

 俺もそろそろ記憶を整理したかったから丁度いいや。


 ――ここまでのあらすじ。


 俺の名前は萩原幸助、家事手伝いさ!

 コンビニにタバコとカップ麺を買いに深夜出かけたら、コードネームがお酒の謎の組織に……といった話ではありませんが、次回もまた見てくださいね! ぐ○ぽよー。

 ――おいィ真面目に語れ。

 ……そんなわけで深夜コンビニに出かけた俺は帰り道にあった、寂れた汚い公園の砂場で謎の次元ゲートを発見し、そこに間違って落っこちて、巻き込まれ系主人公を気取りつつ異世界にやってきちまった。

 そこで運がいいのか悪いのか、悪魔少女のアルシラさんと、デュラハンの少女のエクセリカちゃんに出会ったわけで……。

 そう、なんと俺が落ちた場所は人間の住む村の近くじゃなくて、俺達がRPGとかで敵として戦ってる人型の魔物――つまり魔族が暮らす村の近くだったんだ。

 ……あ、今魔族って言ったけど、この先俺は絶対この人達の事を魔族って呼ばないからね。彼らは自分たちの事を『亜族』って呼んでるし、俺もこれからそう呼ぶよ。

 解りやすく魔族って言ったけど、これってこの世界の人間が勝手に彼らに付けた蔑称みたいなものってだけで、彼らは別に邪悪でもなんでもないし、むしろいい人達が多いぐらいなんだから、俺もあんまり魔族って言葉使いたくない……。

 ――さてさて続きを話そう。

 そいでもってこの世は、人間がそのクッソ汚い欲望で大陸を蹂躙せしめんとしている状態なんだわ。

 亜族が襲われ、酷い仕打ちを受け、迫害されてどんどん大陸の隅っこに追い遣られてんだよね……。酷過ぎる……。

 俺、ニートだし半引きこもりだったけど、他人様に迷惑かけた事なんてないんだぞ。

 ――今嘘吐いた。

 アルシラさんとエクセリカちゃんにいっぱい迷惑かけました。

 ……でも度合いってもんがあるんですよ。

 道徳の時間で――道徳の時間なんてもう小学校にはないんかな……?

 まあ、人が嫌がる事をしちゃいけないんです。

 人が嫌がるような仕事を率先してやるのはいいけど。

 んで『人が嫌がる事をしちゃいけません』っていうような、当たり前の事、そんな最低限の事も守れずに、人間はとうとう俺っちが暮らしてる村にまで侵略行為、戦闘行為を始めたわけっす。

 そこで俺は、生まれてから初めてっていうぐらいの勇気を振り絞って、悪い人間から悪魔少女のアルシラさんを助け出し、デュラハン少女のエクセリカちゃんと合体し、超強い人間の大将倒して見事平和な日常を取り戻した!

 ――といえば、確かに聞こえはいいけど……。

 倒したなんて綺麗には言えない――殺したんだ。

 ……そうしなければならなかった事情ってのも確かに存在していたんだけど、俺はそうしてしまった自分が許せなくて、悩んで、苦しんで、衰弱して、潰れそうになってた。

 だけど、そんな俺に二人は勇気をくれた。

 苦悩しようが、苦しもうが進まなくちゃならない俺に、そうするだけの勇気をくれた。

 アルシラさん、エクセリカちゃん……本当にありがとう。

 俺、頑張るからね!

 ――さて、問題はそれから。

 人間が与えた損害は思ったより酷かった。

 畑の作物は荒らされてるし、家畜も結構やられちまってる。

 そして何より一番酷いのは、人間がこの村の場所をある程度把握しちまってるって事。

 あれから一度も村の中に人間はやってこないけど、付近の森で何度か村の警備の人が、人間の兵士を発見してる。

 再び人間が襲ってくるのも時間の問題だし、今度はこの前よりももっと大人数で、本格的に攻め入ってくるに決まってる。

 だから悔しいけど、俺達は今まで暮らしていた村を捨てて、新しい場所に向かう事になったんだけど、アルシラさん他の亜族の村に送った手紙に対する返事は殆どが『心苦しいですが、こちらも現状を維持するのがやっとです』といったものばかり。

 ……アルシラさんは言わなかったけど、多分『人間を受け入れる事は出来ない』っていうのが一番の理由なんだと思う。

 そんなわけで難儀してたんだけど、その中で一つだけ、とある村が受け入れてくれると言ってくれたんだ。

 アルシラさんのお父さんが治めていた村からずーっと南下して『進めずの森』って場所のそのまた奥にある村の村長さんが、受け入れを快諾してくれたんだそうだ。

 そんなわけで、俺たちは牛や馬、残った家畜何かを引き連れて大移動をしてるんです。

 ……いやあ、圧巻だよ。

 小さめの荷馬車を牛やら馬やらに引かせて大勢の村人が、新たな地を目指して大移動してく様ってのは大迫力だよ。

 馬車や牛舎が一列ないし二列になって長い距離を移動する……。

 ――すごい一体感を感じる……。

 あ、ちなみに俺は馬車になんて乗らないで、馬車を引く方の仕事やってます。

 もちろん馬車にアルシラさんを乗せて引っ張ってる。

 だってアルシラさんを運ぶ仕事を動物ごときに取られたくないんだもの……とはいえすごい筋力だよな。

 ……そうだ、そうなんですよ。

 俺、今すげえ馬鹿力になってんの。

 馬が引くような荷馬車を、まるで買い物カート引くような気安さでスイスイ引っ張っていけるし、息切れも全然しないんだから馬鹿力ってレベルじゃないかもしれないかもしれないけど、俺の体は一体どうしちまったんだろう。

 ……まあ、どうしてこんな状態になってんのか、とりあえず今は気にしなくてもいいような事かもしれん。便利な事には違いないしね。

 ここはファンタジー世界。

 ご都合主義はお手の物……か?


 ――そんなわけであらすじ終わり。


 ……誰が聞いてるんだこのあらすじを。

 俺、最近自分の過去をあらすじ風に振り返る癖ができちゃってるなあ。

 やっぱこの世界がお話の中の世界みたいだからかな……。

 俺にとっちゃ紛れもない現実なんだけど……。


「ただいまリッキ」


 ん? ああエクセリカちゃんだ。

 どうやら今までのあらすじを脳内で語っていたら、エクセリカちゃんが水浴びから帰ってきたようです。

 うむ、水もしたたるいい女って感じだ。

 金髪に碧眼。仏蘭西人形みたいに整った顔立ちと色白の肌。

 あるかないか微妙なちっぱいも可愛らしくて、土手にはもちろん毛なんか生えてない。

 ――まるで二次元美少女。

 ……普通15、16なら毛ぐらい生えるよな。

 いや、きっとこの世界の女の子は陰毛なんて生えないんだ。

 そうだ、生えてたまるか!

 確かに申し訳程度に生えている、やわっこいそれを『なでなで』する事に興味はあるけれども……それがもし、タワシみたくなってしまったら……!

 どんなに可愛くても、遺伝子情報だけはごまかせないんだ……!

 あんな可愛い子や、こんな可愛い子の秘密の花園に、まるで茨のように生えるそれを許せるのか!? 俺は許せない! 全部剃る! むしろ剃りたい!

 ……話を戻そう。

 そんな感じで本来隠さなきゃいけない所も隠せてない状態のエクセリカちゃん。

 ――つまり裸なんだ。

 エクセリカちゃんはいつもテントの中に入ってくると服を『シュンッ』って消して最速ですっぽんぽんになります。

 実はこれにはちょっとした理由がありまして。


「さ、今日も精の交換をするぞ。お前も裸になれ」


 大きな寝袋をテントの中で広げて、もう一枚を掛布団みたいにその上にのっけてから、その上に正座して俺を見上げるエクセリカちゃん。

 その姿はまるで『旦那様、今夜もよろしくお願いします』みたいなとても日本人古来の女性趣向を刺激してくる。

 大移動が始まって数日、毎晩こんな感じでエクセリカちゃんは俺のテントにやってくるし、裸で抱き合って眠るのも日課になってるんだけど、それなんてエロゲ状態。

 しかも精の交換って響きすっごくエロい。


「う、うん……」


 服を脱いでトランクス一丁になって布団に向かう俺。

 一体何が始まるんです?


「さ、明かりを消すぞ、明るいと寝にくいからな」


 ――ただの睡眠だ。

 カンテラの中のロウソクに『ふっ』と息を吹きかけるエクセリカちゃん。

 そうなんだよね……別にエロくて気持ちいい事するわけじゃないんだよね……。

 ……前に魔法の講義を受けた時は習ってなかったんだけど、この世界には魔力、精力、聖力しょうりょくって三種類の力の根源があるらしいです。

 んで、俺が毎晩交換してるのはそん中の精力ってやつ。

 これは生命力だとか寿命だとか、ようするに人が誰しも生まれた時からもっているやつで『気』なんて呼ばれたりするアレ。

 全部『力』で統一されてるけど『精気』つったほうがわかりやすいんじゃねーかな?

 ……んで、それを裸になって肌を合わせて、長時間一緒にいながら、じんわり、じんわりとお互いの体の中に巡らせるんだそうな。

 なんかのエロい作品全般にある『房中術』を思い出してくれればいいや。

 ――つまり本当はエロい事したほうが効率がいい。

 ……確かにキスやらえっちやらで『直接体液を交換』したほうが手っ取り早いって事を、俺は村の人(牛娘ちゃんのお父さん)に聞いたけど、さすがにそういった目的の為にえっちするのが嫌だったんで、エクセリカちゃんには言ってない。

 ――そもそも俺が女の子とえっちできるわけがない……。

 あ、ちょっと鬱んなってきた……。

 ……それはさておき、どうしてこんな風に精を交換してるのかと言えば、それはエクセリカちゃんとの魔融合の相性を高める為だね。

 魔融合――体の半分が魔法で出来てる亜族の人がもっている種族特性。

 エクセリカちゃんの属性は『装着』で、これは自分を鎧化して、他者に装備させる事が出来るっていう一種の魔法みたいなものなんかな。

 俺がエクセリカちゃんを装着していられる限界時間は平均30分程度。

 最初は10分ぐらいが限界だった。

 どうしてずっと着てられないのかって言えば、それはエクセリカちゃんの魔力が尽きたら装着が強制的に解除されちまうからだ。

 んで、相性が悪いと、ちょっと動くだけで膨大な魔力を使っちまうらしい。

 で、その相性を高めるのが精の交換ってわけだ。

 お互いの体に流れる精気が同一に近ければ近い程、最小限の消費で動けるっていうのが理屈らしい。

 なんだか、コン○イルハートやらガ○トあたりで出そうなゲームの設定みたいだな……。

 ――俺はイケメン主人公じゃないけど。

 さて、そんなわけで俺は、毎晩エクセリカちゃんと裸で抱き合って寝てるわけです。

 その副次的効果か何かわからないんだけど、生命力が上がってるのかも。

 最近じゃ傷の治りも早いし、疲労もすぐに回復するし、肌もツルツルだ。

 確か亜族の寿命は180年だった気がするけど、もしかして俺、エクセリカちゃんの寿命とかもらってんのかな……?


「ああ、寿命は確実に伸びてるだろうな。だが別に分け与えてるわけじゃないぞ? 確かに私の精がお前に流れているが、それによってお前の精が活性化しているだけに過ぎないんだからな」


 おうわ!?

 ぼーっとしてたら光の粒子に包まれてるゥ!?

 ちょ、だめ! 俺の心勝手に読むの反則っすよ!


「いいじゃないか。私はもっとお前を知りたいんだ……ダメか?」


 うう……またそんな声だして……。

 そんな声出されたら、断れなくなっちまうよ……。


「断っても関係ないけどな、ふふふ!」


 楽しそうな声だなあ、もう。

 ……そう、魔融合すると俺の心ん中がだだ漏れになるんですな。

 しかも心の声と一緒に――例えば『今日一日何をしてた?』って質問に答える為に思い出した記憶が丸々エクセリカちゃんに伝わっちゃうから、俺がキモい事してたのとか、エロい事してた事とか、もう全部まるっとお見通しになっちまってるわけで……。

 うあああああ!! 恥ずかしぃいいい!!

 嫌われたくねえええ!!


「別にお前が変態だからって嫌いになったりなんかしない。そんな事私にとっては些細な事なんだからな。ただ、ちょっとこれからアルシラのパンツを使うのだけは自重してくれないか? ありえん話だが、万が一妊娠したら事だからな。……ほら、私のパンツならいくらでも使っていいから。それで我慢してくれないか?」


 真っ白いパンツが俺の頭の上に『ポト』って落ちてきた。

 ……どっから出現させたの?

 ――そうじゃない。

 使っていいんすか!? 公認ですか!?

 ……あ、でも、俺のケフィアはそんなに生命力ないと思うよ?

 あん中に入ってる乳酸菌とはわけが違う、洗ったら死ぬわい……。

 それなのに妊娠なんかしたら、俺のアレは生きて腸に届く乳酸菌ならぬ、生きて子宮に届く――よそう、エクセリカちゃんにこれ以上俺の下品な思考を読まれたくない……。


「ふふ、今夜も楽しそうですね。私も混ざってもいいですか?」


 お? アルシラさんがいつの間にかテントの入り口んところから、ひょこって顔を覗かせて微笑んでる。


「はは、もちろんです」


 キリってしながら即答。

 だってこんな可愛い子がやってきて『一緒に寝てもいい?』ってしてきたら断れるわけないじゃないっすか!

 ……というか本当は『抱っこしてぎゅ』ってしていっぱい『ちゅっちゅ』して『ペロペロ』も――いだいー!?


「エグゼリガヂャン!! ヤベデー!!」


 魔粒子状態から人間の状態に戻って、俺を羽交い絞めにしながらティクビを『ギリリ……ギリリリリッッッ!!』って抓らないでくれえぇええ!!!

 あ゛ーいだーい!


「アルシラは自分のテントで寝なきゃダメだ。そういうのは結婚前の男女がする事じゃないんだからな」


「エクセリカちゃん、それ自分を棚に上げて――んほおおぉ!?」


 タマは! タマ三郎だけはやめてくれえええ!?

 背筋が、背筋が凍るッ!


「ふふっ、じゃあクイズしましょうか。まず第一問、エクセリカの仕える主人はだーれだ?」


「アルシラだ」


「じゃあ第二問。一族の家訓第1条、主人の命令は?」


「ぐっ、ぜ、絶対……。卑怯者ぉ……! 好きにしろ……! もう知らん! 孕まされてしまえばいいんだ! リッキの体はスケベなもので出来てるんだぞ! 絶対妊娠するに決まってるんだ!」


 ひ、卑怯者って……そんな騎士子さん凌辱モノのテンプレートみたいなセリフ吐いちゃうんだ……。

 しかもその言いぐさじゃ、俺、触れただけで女の子孕ませちゃうような能力でもあるようじゃないか……。

 俺スケベで変態で性欲魔人かもしれないけど、いくらなんでもそれは無理だよ……。

 ……出来そうな気はするけど。


「ほら、はやくお前も横になれ!」


 うぐお!? 裸のままのエクセリカちゃんが、俺の左足に自分の足を絡ませて身動きがとれないように固めてきながら、寝袋の中に引きずり込んでくる!?


「ふふっ。じゃあわたくしは反対側に――あはっ! リッキさんはあったかぽかぽかですねえ……」


 続いてアルシラさんが同じ寝袋に潜り込んできて、嬉しそうに俺の胸板に顔をうずめて『すりすり』したあと、ゆっくり上目づかいに俺を見た後、にっこり微笑んできました。

 まだ少しだけあどけない顔立ち、その柔らかな微笑み。

 何度この笑顔に癒されたんだろう……。

 ……だけど、その癒しの中に見え隠れする、それとは相反した艶やかさや、悪戯っぽい目の色。

 ……あ、アルシラさん今、悪い事考えてるな。


「わたくしも脱いじゃいましょうか……?」


 耳の傍にアルシラさんは口をもってきて、まるで耳の奥をなぞるように、ねっとりとした小声で囁いてきた……!

 こ、これは何の悪戯なんだ……?

 しかも腕におっぱいがムニムニ当たって……マズいよ、これすごくヤバいよ。

 ――暴発しそうだ。


「……アルシラに手を出すなよ、リッキ。もしも手を出そうものならお前のナニを……いや、切るのは少し困るな……。ああそうだ、入り口に細いものでも刺してやる。お前が泣いても止めてやらん。気絶してもだ」


 一気に縮みました。


「そんな可哀想な事やめてあげてねエクセリカ。もう少し優しくしてあげて? ね? リッキさん。優しい方が嬉しいですもんね? ふふっ」


 頭をヨシヨシと撫でてくれるアルシラさんには最高に癒されます……。

天使です、やっぱりこの子は天使です。

 ――だからおかしい。

 そう……その天使が、エクセリカちゃんにバレないようにゆっくり、空いてる方の手でモゾモゾと俺の体の色々な所をまさぐってるのはおかしいんだ。

 しかもいやらしい所を露骨に避けて、じらすように、くすぐるように撫でるのは何故なんだ。


「ふふ……。どうしたんですか?」


 いつもの微笑み。

 しれっとした声。

 だけどその瞳には、さっきと変わらずに悪戯っぽいものが浮かんでる……!

 ヤバい! 縮んだはずの欲望の猛りが、再び首をもたげてる!

 こ、このままじゃ絶対暴発――。


「ふふっ。もしも出しちゃったりしたら……きっと怒られちゃいますよ?」


 耳たぶにそっと唇を寄せて、吐息と一緒に囁かれる甘い声が、俺の下半身を刺激して止まないッッ!! ぐあー! 暴発する! 本当に暴発する!!

 アルシラさんやべでー!?


「……くっ……」


 声を噛みしめる!

 尿道攻めは嫌でござる! 童貞のクセにそんな未知の感覚を知ったら、俺はもう二度普通の刺激じゃ満足出来なくなっちまう!


「はむ……」


 くああああ耳を甘噛みされたあああ!?

 ど、どうしてアルシラさんはこんな悪戯っ子になっちゃったの!?

 俺がエクセリカちゃんに酷い事されるのを知ってるのに、こういった悪戯を色々な所で仕掛けてくるのはどうしてなの!?

 本当はすごくサディスティックだったの!?

 でも怒れない! 怒れないよこんな気持ちいい――可愛い悪戯!


「ふー……」


 耳に吐息がぁ!?

 ぐ、ぐぐ……収まれ俺の煩悩!

 このままじゃマジで俺の尿道が大変な事になっちまうぞおおお!!


「ふぁ……」


 唐突に、アルシラさんの悪戯が止まった。

 ……エクセリカちゃんの欠伸のおかげかな。

 体感的に、今は夜の11時ぐらいかな……?

 確かに、今日も一日頑張ったもんなぁ。

 エクセリカちゃんも結構疲れてるんだろうね。

 ……うっし、それじゃあそろそろ俺も目を瞑ろう。


「さて、そろそろ寝よう。……それじゃあ二人とも、おやすみね」


「おやすみリッキ」


「おやすみなさいリッキさん」


 二人とも目を瞑る、きっとすぐに寝息を立てるはずだ。

 今日も一日頑張ってたからね。

 ――本当に、頑張り屋だ。

 村を捨てなきゃいけなくて、本当は悲しいはずなのに、明るく元気に振る舞うアルシラさん。

 強くて頼もしくて、いつだってみんなを守る鎧になるエクセリカちゃん。

 ……俺ももっと、しっかりしたいな。

 すぐには変われないけど、徐々に、確実に。

 そうすればきっと、二人の苦しみの半分……いや、三分の一でも背負ってやれるようになれると思うんだ。

 そうしたい理由は山ほどある。

 そんでそう出来るだけの力も、ある程度は手に入った。

 だったら後は、俺が変わるだけだ。


「……はは」


 昔の俺なら逃げ出すような、ものすごいプレッシャー。

 だけど今は全然重くないし、苦しくもない。

 だってさ――。


「二人の事、大好きなんだから……」


 なんつって、さ。


「どうしたリッキ?」


「どうしたんですかリッキさん?」


 ぎゃわあああああ!!

 声に出して言うんじゃなかったああああ!!


一章をお読みいただきありがとうございました。

これからは二章が始まります。

後書きをあまり長く書くのも気が引けるのですが、少しだけ注意を書かせていただきます。

まず、一章よりもかなり『いちゃいちゃ』や『エロ』が多くなります。

しかもそれは変態文章かもしれません。

そして彼もかなり強くなっていきます。

一章の空気とは少し異なっているかもしれません。

面白く読めるように日々考え続けていますが、何卒ご容赦下さい。

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