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第一話 とある音楽クリエイターの魂の慟哭

体育科という科目を専攻する教師たちの専門雑誌である『体育科教育』という雑誌に、とある音楽クリエイターが寄せた寄稿文が反響を呼んだことがあった。


その寄稿文に曰く (少なからざる部分に変更を加えてあります。現状と異なる部分に於いては、現状を優先致します) 。


『俺は体育という科目が大嫌いだ。お前ら、体育教師という人種も大嫌いだ』

『お前らは、俺をクラスメイトどもの嘲笑の的にして、俺に赤っ恥をかかせて、そんなに楽しいのか?俺に、【自分は劣等種だ】というコンプレックスを植え付けて、そんなに楽しいのか?』


『被害妄想が強い?ふざけるな』

『お前らみたいな、体育が得意な奴らに俺の惨めさが判るってぇのか?衆目監視の中で、醜態を晒させられる俺の屈辱が判るってぇのか?』


『他の教科でも同じ?ふざけるな』

『数学が、英語が、古典が、不得意だからって晒し物にされることが、()してや他の奴の足を引っ張ることがあるってぇのか?』

『体育では、自分が下手だから他の奴の足を引っ張ることが多々あるんだよ』

『団体競技で自分がミスっちまったせいでチームが負けた時の()(たまれ)れなさが、お前らに判るってぇのか?』

『そこにお前らがどんなフォローを入れたって、それはウエメセでの憐憫(れんびん)、自分が優位に立っていると自覚した上での(あわ)れみに過ぎねぇんだよ』


『努力して上達すればいい?笑わせるな』

『やりたくもねぇ努力を続けてきたんだよ。明け方眠い中父親にキャッチボールに付き合って貰ったり、家族総出でバレーボールのフォームの研究したり、夏休みの公園で毎日走ったりしたさ』

『全部、無駄な努力だった』

『どれだけ努力を重ねても、ボールを上手くキャッチすることもできなければフォームが良くなることもなく、また足も遅いまま。俺の拙い運動神経は改善されることもなく、俺の取るに足らぬ運動能力に対する惨めさは募るばかりだった』


『そんなのは努力のうちに入らない?上達するまで死に物狂いの努力を続けろ?…一言言わせてくれ。…心底、ふざけるな。死ねクソが』

『お前ら体育会系の奴らが好んで言いそうなセリフだな。俺は、体育みたいな(いびつ)極まりない教科に、そこまで努力を傾けるだけの価値なんざ全く認めてねぇんだよ』

『お前らは、自分がやりたくってスパルタ部活動に(いそ)しんできたんだろうが?何だって、やりたくもないことにそこまで努力を向けなくちゃならねぇんだ?』


『スポーツは楽しいものだぁ?つくづく、ふざけるな』

『俺に言わせれば、体育もスポーツも同じようなもの、俺に屈辱を味わわせ、俺の人格形成に多大なる悪影響を及ぼした唾棄すべき汚物だ』

『日本でスポーツ熱が薄いとしたら、お前ら体育の授業でイイ目を見てきた奴らが自分たちの都合のいいように体育という教科を、そしてスポーツをカスタマイズし(ゆがめてき)た結果に過ぎねぇんだよ』


『この雑誌では、【運動が苦手な子どもが輝ける授業を造ろう】という趣旨でこの特集を組んだそうだな。…もう一度言わせてくれ。…死ね。この上なく悲惨な死に方で、ピ〇の毒にやられて、血ゲロ()いて血便垂れ流して、全身化膿させた挙句ウジ塗れになっておっ()んじまいやがれ!!』

『つまりお前らが言いたいことは、【運動が苦手な子どもは輝いていない】ってことじゃねぇか!ウエメセの差別意識剥き出しだな、あぁ!?』

『結局、お前らが何をほざこうが、それは【運動が得意な子ども】だったお前らの自己肯定に過ぎねぇじゃねぇか!結局根底にお前らの差別意識がある限り、体育科の醜悪極まりない本質は何も変わりゃしねぇんだよ!結局、どんな綺麗事をほざこうが、お前らはかのチョビ髭の伍長と全く同類なんだよ!!俺たちみたくな、【運動が苦手な子ども】をガス室にでも放り込むつもりでいやがるのか、あぁ!!?』


『お前らに何を言ってもムダなことはよく判ってる。だがな』

『頼むから、俺たちを、運動が苦手な子どもたちを、()っておいてくれ』

『得意な奴ら、やりたい奴らにだけやらせておけばいいだろ?』

『俺たちみたくな、先天的にできない奴らは放っておいてくれ』

『どうせ、お前らには俺たちの気持ちなんか判りゃしねぇんだから』

『ウエメセのしたり顔で、俺たちに屈辱を味わわせるのはもうやめてくれ』

『俺が言いたいことは、それだけだ』


◇◆◇


…この、彼の血を吐くような寄稿は、私の魂を大きく揺さぶった。

私も、彼と同様に体育の授業で人格を歪められるような屈辱を味わわせられ続けてきた人間だから。…彼の言葉は、私の心に痛いほどの響きを(もたら)した。

彼の魂の慟哭(どうこく)が、web上で多くの反響を産み出したのも、確かに納得させられる。何よりも、私自身が彼の寄稿に魂を揺さぶられたのだから。


だが。


彼の寄稿から(かんが)みるに、彼は体育という教科の本質が何であるを、全く理解していないのではないだろうか。


その様な疑問を、私は抱いたのであった。


その疑問の詳細について、以下に述べさせて頂く。

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