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第10話 釣り

 俺はすぐさまロープフック(木製)振り回し海に漂うアイテムを回収して回る。

 海藻は多めに回収する。

 もちろん食料として使えるからだ。そこらへんは抜かりない。


 素材集めは苦にならなかった。

 海に入れと言われれば話は別だが俺はこういった作業ゲームが体質にあっている。

 時間と労力が必要になるがあいにく俺には時間だけは死ぬほどあったし淡々と先の事をあまり考えずに目先の目標に集中できるのはありがたかった。


 こういう世界で一番危険なのは精神的な問題だ。

 大海原とはいえ狭いイカダの上での生活。頭がおかしくならないのが不思議なくらいだ。

 毎日こういった何かイベントが起きてくれているからまだマシだが確かに現実の世界で海で遭難とかリアルに思い浮かべるだけで怖い。


 そいった事もあるから今気力のあるうちにできるだけ生活するための道具や設備は整えたい。

 そういった思いも強いのかもしれない。


 釣り竿を作ったからといって魚が釣れるとは限らない。

 しかし今振り回してるロープフック(木製)だって適当に投げて適当にアイテムに近づけたら引っかかってくれる。

 おそらく釣り竿も同じようなシステムな気がする。


 そうなればもう食料に悩む事も少ないだろう。



 材料集めを始めて30分ほどが経っただろうか。


「そろそろOKかな。かなり素材が余分に集まったな。」


 釣り竿の素材は楽に集まっている。

 ひとまず素材集めはいつでもできる。

 釣り竿を作ってみようと思う。


 素材はたしか......



 木の板 ×1

 ゴム  ×1

 糸   ×1


 以上。


 そして現在の手持ちだが、木の板は海で拾える分が16枚。

 ゴムを作るためにはプラスチックが3個必要で現在12個所有。

 糸を作るために海藻が5枚必要で現在18個所有。


 必要な物を一つづつ作成っと。

 ガチャンとガチャポンをひねった時のような音が聞こえた。


 作成時の音は毎回変わるのか? それとも作る物によって変わるのかな? なんか気になる。

 なぜ海藻で糸が作れるのかは気にならない。

 こういうのがゲーム脳というものなのだろうか?


 あっという間に釣り竿の素材がそろってしまった。


「ほんとロープフック様々だな。これ作ってから素材集めが楽で仕方ない。」


 もちろんこれで取れないだろう素材はたくさんあるのだろう。

 だが今はこれで簡単に集められる素材が増えてきていることが楽しくて仕方ない。


「では作りまーす。」


 誰に声をかけるでもなく、言葉と共に作成を選択する。


 ガチャンという音と共に視界に


 ”素材を使用し釣り竿を作成しました”


 という文字が写る。


「うおーーーー!!!! さっそく!!」


 すぐにアイテムボックスから釣り竿を取り出す。


 何もない所から突如、釣り竿が俺の手に現れる。

 それは昔のアニメなどで登場する釣りキャラクターが持っているような竹に糸がくくってあるようなフォルムだった。


 ”釣り竿レベルがアンロックされました”


 突然俺の視界にそんな言葉が。


「おぉ!! 釣り竿レベル? スキルの”釣り”とはまた違うのか?」


 被っているような能力に疑問が浮かぶ。


「釣りは俺の力で釣り竿は竿の力って事か? 釣りレベルは釣れる魚が増えるって事か? 竿はそれを釣るための竿の強度みたいなもんか?」


 おそらくそんなところだろう。あくまで予想だから外れているッ可能性もあるけどおそらくこんなものなんだろう。


 釣れば釣るほどレベルが上がるのかな?

 マグロとか釣れるようになるのかな?


 期待は無限大だ。


 糸の先にプラスチックを魚の形にくりぬいたルアーのようなものがついていた。針もプラスチックなのだろうか? 頼りない感じがある。


「さすがに鉄は使ってないからな。もしかして強化みたいなことがあるのかな? それこそ釣り竿レベルってあるしな。強化とは考えが抜けてたぜ。ということは【鍛冶】スキルとか怪しすぎる。強化と出て【鍛冶】が一番に思い浮かぶ。」


 もしかすると優先してあげないといけないのは【鍛冶】スキルかもしれないな。


 考えても仕方ない。

 俺は今は魚なら何でもいい。

 なんでもいいから食べたいんだ。


 広くなったイカダの端まで歩いていき釣り竿を振りかぶりプラスチックルアーを遠くに投げる。

 といってもリールもないからルアーを手で投げて竿を垂らすだけだが。


 プラスチックなので海面にプカプカ浮いている。

 これじゃあ、ただのごみと変わらないのではないだろうか?

 証拠と言わんばかりに竿にはうんともすんとも感触が来ない。


「まじか......ゲームなら垂らせば魚が寄ってきてなのに。こんなところは現実主義なのか?」


 世界観のバランスが悪い。

 てかこんなプカプカ浮いてるだけのルアーで魚なんか釣れねーだろ。

 そう思いルアーを手に取ろうと糸を手繰ると、すぐさま何かがルアーに飛びつき ボコン とプラスチックルアーを飲み込むと海底へ引きづり込もうとした。


「あっ!! かかった!!」


 間違いない。魚だ。何か魚がかかった。

 引きは全く強くない。

 垂らした糸を竿にくるくると巻き付けながら手繰り寄せていき。


 ザバァ


 海面から小さいながらも元気のいい魚が顔を出した。


「やった!! 魚だ!! これなんだ? アジかな? たぶんアジだ。めちゃうまそうだ。」


 ピチピチと元気よく暴れまわるアジ。

 大きさは10㎝もないだろうか?

 小さめのアジだ。


 アジから針を外すとすぐに手の平から姿かたちがなくなり視界に”アジを手に入れました”と表示された。


「やっぱりアジだ。針から外すとアイテムボックス行きなのか。」


 とりあえずすぐに食べたい。

 そう思い煮沸機に海水を入れてかまどに火をつける。

 その火の中にアイテムボックスから出したアジを火の手前の方に掘り込む。


 すると数秒もしないうちにアジはボンと黒焦げになり真っ黒な魚となってしまった。


「はっ!!!?? なんで!!!?? 数秒しかたってないじゃん!!」


 アチアチ!! となりながら火の中のアジを取り出す。


「なんだよ。焼き方シビアすぎるよ!! タイミング合わせろって事?」


 文句を言いながら黒焦げのアジを食べてみる。


「うえっ!! ぺっぺっぺ!! 焦げた味しかしない。最悪だ。貴重な魚が。」


 口から焦げを吐き出し苦い顔をする。

 その後、何度やっても魚は丸子げになるか、まったく焼けてないかのどちらかで貴重な魚を何匹か食べれなくしてしまった。


「ふざけ過ぎだ。この世界。でも確かにそうだよな。かまど式コンロ作らないとできないんじゃないかって思ってたんだよ。どっかで。」


 もっと早く気付けよ俺。

 さすがにそのままかぶりつくのは抵抗があった。

 できれば包丁があれば刺身が作れるのだが、試しに手で裂いてみようと思ったがそうすると魚がダメージを受けてすぐに消失してしまう。


「こういう所めんどくさいんだよ。ゲームって。融通の利かない所。」


 怒りをにじませながら愚痴を垂れる。

 誰も聞いてくれる人もいないから言っても仕方ないけど。


「海藻はそのまま食べれるのに魚はダメなんだな。おそらくそういう仕様なんだろうけど......適当だな本当に......。」



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