第九話 魔法の効果に驚きつつ、勝負の休憩時間を迎えた件
俺はメロディを連れ、すぐさま職員室へと向かった。
メロディは校舎内でも注目の的だったが、ここまできたらもう開き直るしかないっ!
職員室に到着した俺達は、そそくさと担任の先生を訪ねる。
「あら……って、どうしたのっ!?」
担任の先生も、メロディを見て驚いた声を上げた。
そりゃ、そうだよな……。
担任の先生は、確か小寺まゆみ、二十四歳。
茶髪でセミロングの、どこかおっとりとした女教師だ。
さてさて……魔法の効果とやらは……。
「……確かうちのクラスで親戚同士の、高橋良太くんと、高橋メロディさんだったわね?」
マジか。
メロディのことが、小寺先生に認識されているっ!
しかも、クラスメイトとかっ!
魔法、すげぇなっ!
「すみません先生、メロディの制服を紛失しちゃいまして……」
「そうだったの」
「はい。で、今日一日どうしようかと……」
「仕方ないわね。確か、制服一式の替えがあるはず……」
しばらくすると、小寺先生は女子用の制服を持ってきた。
ありがたいことに、靴下や靴まで一緒に。
「はい。高橋メロディさん、あっちの応接室で着替えてきなさい」
「ありがとうございますっ! メロディ、行くぞ」
俺は制服を受け取ったメロディと共に、職員室内にある応接室前まで向かった。
ドアを開け、メロディに制服着用を促す。
「メロディ、この中でそれに着替えるんだ」
「黒じゃない」
「我慢しろ。ここではそれを着ないと、活動できないの」
「……分かった」
メロディは渋々と、応接室へ入った。
やがて出てきた、制服姿のメロディ。
おおっ、制服のサイズとかピッタリじゃねーか。
まさかこれも、魔法の効果なのか……?
俺が再び驚いている中、メロディは指をくわえセクシーなポーズを見せた。
「ウフ。似合う?」
「ノリノリじゃねーかっ!」
こうして俺達は、やっとこさクラスの教室へと向かったのである。
†
クラスの教室に行くと、やはりメロディの席が存在していた。
しかも、俺の席の隣に。
もちろん昨日は違う人が座っていた場所で、上手いこと机と椅子が増えていただけなのだが、感覚でここがメロディの席だとすぐに分かったのである。
俺がそう感じているのだから、きっと他の皆もそうなんだろう。
ほんとすげぇな、魔法ってやつはっ!
「メロディ、ここに座って」
「うん」
「よし、おとなしくしとけよ?」
「分かった」
俺はメロディと共に席へ座り、一息ついた。
しかしその直後、案の定教室内がざわつき始めたのだ。
周りからは、外人? コスプレ? って単語が聞こえてくる。
だよな……教室内に、銀髪の女の子がいるんだから……。
今更だけど、その辺も魔法で何とかしとけばよかったのにっ!
そんなこんなで、高校生活二日目が始まった。
今日の予定は、まだまだオリエンテーション的なもの。
心配していた魔王様も、おとなしいまま時間が過ぎた。
そして待ちに待った、十五分間の休憩時間がやってくる。
よっしゃーーーーーーーっ!! ここだここっ!
一日目はできなかったが、今日こそ友達を作るぞーーーーーーーっ!
――三分後。
教室内には、所々グループができ始めていた。
数人の、ボッチ達を残して。
そして俺は、ボッチ達の一人になっていた……。
うわーーーーーーーっ!! マジかーーーーーーーっ!!
どうしよーーーーーーーっ!? 完全に出遅れたぜーーーーーーーっ!!
頭の中では叫び声を上げている俺に、メロディから声がかかる。
「リョータ、つまんない」
「さいですか……」
異彩を放っているからか、メロディもボッチ組の一人になっていた。
まてよ……?
根暗な俺でも、昨夜メロディには声をかけれたじゃねーかっ!
……いや、違うな。
あれはオタクならではの、テンションがあったからだ。
「どこ中なのっ!? 俺西中っ!」
「マジでっ!? じゃあさ、あいつ知ってるっ!?」
ちくしょうっ! リア充達の会話が聞こえるたびに、体が強張っちまうっ!
頑張るんだ俺っ! 明るく楽しい学生生活を送る為に、ここまで来たんだろっ!?
「ねぇ、LI〇E交換しよー」
「うん、しよー」
……ううっ、体が動かねぇ。
くそぅ……何とか、何とかキッカケさえあれば……。
俺が体を震わせ俯く中、メロディがキョロキョロと周りを見渡す。
「なんか、騒がしいな」
「人気者達にはね……ああやって友達ができるのさ……」
「リョータ、昨日人気者になれるって言った」
「あー……あれは、EOの世界でな……」
すると、その時だった。
俺達と同じくボッチ組だった男が、突然歩み寄ってきたのだ。
男は俺達の前で足を止め、静かに口を開く。
「やぁ」
「やっ……やぁ」
「今、ネット小説なら脇役にピッタリだと思ったでしょ?」
「いきなり何を言ってるのっ!?」
俺はその男に、思わずツッコミを入れた。