第十話 EOと魔王様のおかげで、話が盛り上がった件
俺に思わずツッコミをさせた男は、小田拓男くん。
黒髪でミディアムヘアの、太った男だった。
それぞれの自己紹介が終わった途端、小田くんがムフフと笑う。
「そうそう、さっきEOって言ったよね? ムフ」
「うっ、うん」
「実は俺も、EOやってるんだ。ムフフ」
「マジでっ!?」
なんと小田くんも、EOプレイヤーだったのだ。
しかも俺と同じく、かなりの廃人らしい。
そのまま俺と小田くんは、EOの話で盛り上がった。
もちろんこれを機に、俺はオリハルコンを自慢する。
「ムハッ!? オリハルコン手に入れたのっ!?」
「昨日ね。俺がっていうか、メロディがさ」
「ムホーッ! 凄いねっ! 高橋さんっ!」
「フッ」
小田くんに褒められ、メロディはドヤ顔を見せた。
まるで玉座に座るかのように、腕を広げ、足を組みながら。
いやいやっ! 価値分かってないでしょっ!?
すると、その時だった。
俺達と同じくボッチ組だった女の子が、早足で歩み寄ってきたのだ。
女の子は俺達の前で足を止め、笑顔で口を開く。
「こんにちはっ!」
「こっ……こんにちは」
「今、ネット小説なら準ヒロインにピッタリだと思ったでしょ?」
「だから何を言ってるのっ!?」
俺に再びツッコミをさせた女の子は、中野姫子さん。
黒髪でサイド三つ編みの、眼鏡をかけた巨乳な女の子だった。
これまたそれぞれの自己紹介が終わった途端、中野さんが眼鏡をクイッと上げる。
「ねぇねぇねぇねぇ、さっきオリハルコンって言ったよね?」
「うっ、うん」
「売って売ってっ! いくらでも払うからっ!」
「ええっ!?」
なんと中野さんも、EOプレイヤーだったのだ。
やはり俺達と同じく、かなりの廃人らしい。
そのまま俺達は、さらにEOの話で盛り上がった。
もちろんドヤ顔のままの、メロディも含めて。
「――で、メロディがオリハルコンをドロップしてさ」
「フッ」
「高橋さん、高橋くんや中野さんじゃなく、俺に売ってよ。ムフ」
「ちょっとちょっと小田くんっ! 高橋さん、高橋くんや小田くんじゃなくて、私に――」
「小田くん、中野さん、メロディのキャラは俺のアカウントのキャラだから」
話が盛り上がりのピークを迎えていた、その最中だった。
突然メロディが、俺達を指差したのだ。
「……どうした? メロディ」
「リョータ、タクオ、ヒメコ」
「えっ?」
「友達になったんでしょ? もっと気楽に呼び合えばいい」
俺達はメロディの発言を聞き、顔を見合わせた。
……これはあれか、名前で呼び合えってことか。
ごく普通のことだが、俺にとっては躊躇する展開である。
なにせ中学生時代は、名前で呼び合う友達なんていなかったのだから。
小田くんと中野さんも、どこか恥ずかしそうに俯いていた。
さっきまでボッチ組だったんだ、きっと俺と同じような気持ちなんだろう。
……えぇい! 迷ってる場合じゃねぇ!
俺は勇気を振り絞り、口を開いた。
「そっ、そうだよなっ! メロディ! 拓男っ! 姫子ちゃんっ!」
「だね。よろしく、良太、メロディちゃん、姫子ちゃん。ムフフ」
「うんうんっ! よろしくねっ! 良太くんっ! メロディちゃんっ! 拓男くんっ!」
うおおおおっ……何だこの幸福感は……。
よかった……友達ができた……。
ありがとう、EO。
ありがとう、メロディ!
†
――時刻は、十二時過ぎ。
高校生活二日目が、無事終了する。
俺とメロディは、拓男と姫子ちゃんと挨拶を交わし、帰宅の途に就こうとしていた。
「さてと、帰るかメロディ」
「うん」
「昼食は、何食べたい?」
「みそラーメン」
「またかよっ!? ハハッ、まぁいいぜっ!」
「リョータ、機嫌いいな」
「おうよっ!」
念願であった、友達ができたわけだ。
俺がウッキウキなのは、無理もない。
これで明日からの高校生活、楽しいのは間違いないもんなっ!
そんな中、俺はあることに気がついた。
「やべっ、教室に鞄を忘れた……」
「んっ?」
「メロディ、ここで待っててくれ」
まさか、鞄を忘れるとは……。
……いや、仕方ないか。
だって、ウッキウキすぎるんだもんっ!
こうなっちゃったら、仕方ないよねっ!
俺は正門前にメロディを置いて、クラスの教室へと向かった。
もちろんこんな時でも、EOプレイヤーならではの癖が顔を出す。
ふっふっふっ、もう高校内の地理は把握ずみだぜっ!
確か校舎の側面を通れば、近道だっ!
しかし、その判断が悲劇を呼ぶ――。
なんと校舎の側面には、朝に見かけた不良の三人組がたむろしていたのだ。
「ここは、通行料が必要でぇーす」
どんだけ通行料欲しいんだよーーーーーーーっ!!




