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第十二話 チートキャラになった後、番長とも相まみえた件

「何イチャイチャと話してやがんだーーーーーーーっ!!」


 美籐先輩が右手を振り上げ、俺に襲いかかる。

 俺は顔面を守ろうと、無我夢中で両手を前に突き出した。

 すると、驚くべきことが起こったのだ。


 なんと俺の両手に触れた美籐先輩が、ギャグ漫画のように吹っ飛んだのである。

 美籐先輩はゴロゴロと十メートルくらい転がった挙句、泡を吹いて気絶した。


「嘘……あの巨体が……?」


「てめーーーーーーーっ!!」


「よくも美籐をーーーーーーーっ!!」


 栄倉先輩と篠塚先輩が、驚いて固まっている俺に襲いかかる。

 しかし俺は、まるでプロボクサーのように二人の攻撃をかわしたのだ。


 ……何だこれ?

 先輩達の動きが、妙に遅く感じるぞ。

 いや、違う……。

 俺自身が、速くなってるのかっ!

 

「野郎っ! ちょこまかとっ!」


「――ここだぁ!」


 さすがは、有名な不良。

 栄倉先輩は俺の動きを読んで、タイミングバッチリの右ストレートを放ったのだ。

 しかし俺は、その右ストレートを片手で止める。

 だって、まるで五歳児がパンチをしているように見えるんだもの。

 この瞬間、俺はあることを確信した。

 メロディのおかげで、チートキャラになってるってことをっ!


「すみません、先輩」


「ぐっ……てめぇ……!」


「実は俺、超強いんすよ」


 俺はそのまま、栄倉先輩をぶん投げた。

 もちろん、篠塚先輩に向けて。


「「ぐわーーーーーーーっ!!」」


 栄倉先輩と篠塚先輩も、美籐先輩のようにゴロゴロと吹っ飛んだ。

 うっひょーーーーーーーっ!! 気持ちいいーーーーーーーっ!!

 先輩達が、まるで発砲スチロールのように軽いぞーーーーーーーっ!!

 魔力すげーーーーーーーっ!! 俺つえーーーーーーーっ!!


 俺が頭の中でガッツポーズを決める中、栄倉先輩はフラフラと立ち上がった。

 さすがはリーダー格、やるじゃないですか。

 しかしそんなフラフラで、俺に勝てると思ってますかっ!?

 俺がフッと笑った、その時だった。

 後ろにいるメロディの背後から、一人の男が現れたのだ。

 

「何してる?」


「でっ、出嶋(でじま)さんっ!」


 栄倉先輩に出嶋さんと呼ばれる男は、スキンヘッドで眉毛なし。

 篠塚先輩よりでかくはないが、長身かつ筋肉ムキムキで格闘家のような男だった。


 そして栄倉先輩のご丁寧な紹介によると、この出嶋さんは三年生で新楽高校の番長らしい。

 しかも喧嘩のたびに返り血を浴びすぎて、ついたあだ名が紅蓮の死神。

 オマケに新楽町で有名な暴走族、“羅愚那露狗(ラグナロク)”のメンバーだという。

 って、新キャラ多すぎだろーーーーーーーっ!!

 あんまり多すぎると、読者様が付いていけなくなっちゃうよーーーーーーーっ!!


「栄倉達を倒すとは、やるじゃねぇか一年坊」


「いっ、いえ……これには訳がありまして……」


「俺が相手だ」


 マジかーーーーーーーっ!! ついに、番長ともですかーーーーーーーっ!?

 しかしこの人、本当に強そうだ……。

 恐怖のABCにはない、独特のオーラがある。

 だが俺は、今やチートキャラだ。

 紅蓮の死神が相手だとしても、やるしかないっ!

 俺が慣れないファイティングポーズをとる中、メロディが口を開く。


「リョータ、三分経った」


「えっ?」


「魔力切れた。だから、弱くなった」


 えーーーーーーーっ!? 何だよその、ウル〇ラマン設定ーーーーーーーっ!!

 この強さ、永遠じゃないのかよーーーーーーーっ!!

 俺が慌てふためいていると、メロディがお腹を押さえる。


「リョータ、お腹減った」


「そんなこと言ってる場合じゃねーだろっ!?」


「どきな、小娘」


 次の瞬間だった。






 メロディが出嶋先輩に、第二話で見せた護身術のような技をかけたのだ。






 出嶋先輩はドスンと地面に叩き付けられ、そのまま泡を吹いて気絶した。

 俺と栄倉先輩は、その状況を見てあんぐりと口を開ける。


「ごめんリョータ、お腹が減りすぎて手を出しちゃった」


「……はは」


「大丈夫、殺してないから」


「あっ、当たり前だーーーーーーーっ!!」


 そのまま俺はメロディの腕を掴み、その場をダッシュで後にした。


     †


 ――翌日。

 俺とメロディが正門前に行くと、恐るべき光景が目の前に広がっていた。

 なんと出嶋先輩と恐怖のABCが、正門をくぐった先に立っていたのだ。


 やべーーーーーーーっ!! これはあれかーーーーーーーっ!?

 不良あるあるの、お礼参りってやつかーーーーーーーっ!?

 くっ……朝一番で職員室に駆け込み、助けを求めようと思っていたのにっ……!

 どうする……? どうする……っ!?

 すると出嶋先輩が俺達に気がつき、口を開く。






「メロディさんっ! 良太さんっ! お疲れ様ですっ!」


「「「お疲れ様ですっ!」」」






 出嶋先輩の掛け声に続き、恐怖のABCも声を上げた。

 

 って、何だ何だーーーーーーーっ!?

 不良達が全員、俺とメロディに頭を下げてるぞーーーーーーーっ!?

 俺がたじろぎ周りがざわつく中、栄倉先輩から声がかかる。


「良太さん、昨日すぐに帰っちゃうんですもん。実はですね――」


 もはや説明役と化した栄倉先輩によると、なんと新楽高校の不良には、喧嘩で負けた相手に対して絶対服従するという掟があるというのだ。


 なので魔王様は、登校二日目で新楽高校の番長になったのであった。 




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